QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。ようやく最終回です。25枚目となる最後のタイトルは、QUEENのBBC出演時の音源のコンピレーション「On Air」です。
QUEENのオリジナルアルバムとしての15タイトルと、コンサートの実況録音による諸作の中間に当たるような位置にある録音で、いかにもコレクターズ向けの作品と言えます。しかし、過去に数多くのアーティストがBBCでのセッションをソフト化してリリースしてきましたが、いずれもそのような「全作品を聴いた人が、最後に買うタイトル」ではなかったでしょうか。
スタジオワークの緻密さはオリジナル作品で味わえばいいし、ライブの凄さはライブアルバムで堪能すべきです。本作には、ラジオ出演という歴史的背景、当時の空気感を振り返る程度の意味合いしかないかもしれません。
しかし、初期セッションの、スタジオ録音のマスターテープにオーバーダビングした(音のバランスも演奏も)いびつなセッションを別にすると、当時の彼らの演奏技術や成長過程が生々しく感じられ、「Live at the Rainbow」とはまた違ったリアリティを味わうことができます。
一回のセッションでの演奏曲目が少ないのも、アナログ盤だと片面に収まる上に、ラジオで聴いた時の「あー、もっと聴いていたいのにもう終わりか……」という気分まで追体験できて、意外にバランスが良いです。
そして本作の目玉と言えるのは、ライブでお馴染み”We Will Rock You (Fast)”が、スタジオ録音で聴けるという点。過度な作り込みもなく、ライブ録音のラフさも控えめな、端正かつソリッドな、これ以上ないくらいにむき出しのハード・ロック・バージョンは、他では聴くことができないので、大変貴重です。
とは言え、やはりマニアックな聴き方(他にも”Liar”のイントロのおとがヨレてない、とか)が中心になる作品ですので、特にアナログ3枚組という豪華仕様なものを大枚叩いて買うのは、QUEENの他の作品も聴き倒し、ライブ作品もビデオ含めてほとんど見てしまったけどまだ足りない、というところまで追い詰められてから買っても決して遅くない一作であることは疑いようがありません。でも、そこまで至ったファン、もしくは過去にリリースされていた「At the Beeb」などを愛聴していた人にとっては嬉しいボーナスと言えるでしょう。
デアゴスティーニ盤は、マットなジャケットに、他の3枚組のような箱に収納される形態ではなく、方観音開き(中央に2枚目が入って、横からスライドする時にジャケットが裂けそうで怖いあれ)になっていて、大きく印刷されたオープンリールの写真含め、非常に存在感があります。音質も、(初期のセッション以外は)スタジオ盤での、加工しすぎて痩せた感じがなく、ライブ盤の多くで聴けるリヴァーブの効きすぎた感もないので、非常に生々しい上に分離も良く、ハイファイとは言えませんが、とても良好なサウンドが楽しめます。よくもまあ、こんなごく初期、アルバムもまだリリースされていない頃からの録音テープが残っていたものですね。CDだと、6枚組ボックス・セットにもう一枚ライブ盤(とインタビューCD)がついているので、買うならそちらがいいと思いますが、僕のように「CDはもういらない、アナログなら欲しい」という方はこちらを。
というわけで、25回にわたって書いてきました、デアゴスティーニによるQUEENのLPシリーズはこれにて終了となります。今はレコードブームと言われていますが、海外アーティストの作品が国内向けにリリースされることは稀です。各タイトルに日本語解説がつき、国外では手に入りづらいようなライブ作品もハーフスピード・マスタリング・バージョンで入手できる本シリーズは、QUEENファンにとっては大変ありがたい企画でした(値段も、輸入盤で入手するよりも安い場合すらありました)。記事を読んで気になるタイトルがあれば、在庫のあるうちにぜひ入手しておいていただければと思います。