【デアゴスティーニ盤で聴くQUEEN】4枚目:擁護しかねる作品「Made In Heaven」

デアゴスティーニ盤「Made In Heaven」
QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。「A Night at the Opera」「QUEEN」「QUEEN II」と書いてきましたが、第四弾は、フレディ死後のアルバム「Made In Heaven」です。

僕は親がQUEENのビデオ(テレビで放送されていたコンザート映像を録画したもの)でよく観ていたので、少年時代からその音楽は耳にしていましたが、自分でアルバムを買って聴くようになったのは1993〜4年頃からなので、ほぼ全てフレディの没後から後追いしています。リアルタイムで購入したのは、本作のみです。

当時、初めて聴いたときの感想は「正直つまらない」でした。しかし、フレディが死の間際まで最後の力を振り絞って吹き込んだ声が入っているということがあるため、がんばって「これは良い作品なんだ」と自分に言い聞かせて感動しようとしていました。

それから20年以上経過して、改めて聴いてみると……やっぱりつまらない。つまらないのもそのはずで、収録曲12曲中、このアルバムのために作られた・録られた曲は2、3曲で、あとは昔のマテリアルの焼き直し、メンバーのソロ曲のトラック差し替え版で埋められた、継ぎ接ぎだらけの作品なので、そもそもオリジナルアルバムとして扱う時点で無理があります。

それでも、天国に旅立ったフレディに想いを馳せるようなコンセプチュアルな構成には一定の評価ができなくもないですが、やはりフレディがボーカル・トラック以外はほぼノー・タッチだったことが災いしている感があります。とにかく、どの曲もアレンジがしょうもない。凡庸なシンセパッドの音、凡庸なスケール感、凡庸な透明感。フレディが歌っていながら、このアルバムにはQUEENらしさが全くありません。

中でも最もひどいのは、最後に収録されたシークレット・トラック。90年代はじめ、CDは「アルバムの最後にしばらく無音が入って、そのあとクレジットされてない曲が始まる」という仕掛けを多用していて、今となってはとてもアホくさく、当時も聴きづらい上に我慢した挙句に大した曲も入ってないものばかりで、MP3/リッピング文化を通過してすっかり過去の遺物になってしまいましたが、本作にはこれが、しかも20分以上の曲として収録されていて、本作のつまらなさに拍車をかけています。なんで何年も苦労してまでこんなアルバム作っちゃったんだろう。こんなことなら、「Queen Forever」での”Let Me In Your Heart Again”のように、ベスト盤で未発表曲として小出しにしてくれた方がよっぽどマシだったんじゃないかと思うほどです。

僕らが普段テレビ・ラジオなどで耳にする”I Was Born to Love You”は、本作収録の、バックをQUEENの3人が演奏しているバージョンだと思いますが、それも別にどっちでも良いという程度のアレンジで、わざわざ本作で聴く価値もありません。

それでも晩年のフレディのパフォーマンスが素晴らしいのは疑う余地もなく、楽曲自体が駄目なわけではないので、全否定するのも辛いところ。そして、ジョン・ディーコンのベースは、本作でも実にQUEENらしく、流麗なフレーズを奏でています。

そのジョンは(アルバムとしては)本作を最後に音楽界から身を引きますが、ベーシストとしての素晴らしい才能を持っていながらの幕引きは、潔いとも言えますし、致し方ないとも言えます。ソロでもそれなりの結果を出してきたブライアン、70年代からソロ活動を行うほど、ミュージシャンとしてのモチベーションの高いロジャーと比べると、彼はソロでは目立った結果が出せず、またQUEENでもフレディとの共作が最も多く、彼のベースもフレディの曲で最も活き活きとプレイされていたことを考えると、元々ショービジネスの世界に執着のない彼がフレディ亡き後に音楽を続ける情熱を失うのは当然かもしれません。

デアゴスティーニ盤ですが、発売当時のポスターなども封入されているし、2枚組ゲートフォールドで豪華装丁ですが、何しろ録音が悪いので、フォーマットが擁護しきれていません。中低域が軽い、地に足のついていないバランスな上に、高音がキンキンしていて、聴いていて気持ちが落ち着きません。天国のようなイメージを描きたかったのかもしれませんが、こんな解像度が低くて耳障りな音で天国はないでしょ。せっかく前作「Innuendo」で、80年代的な軽薄な音から脱して、リアルでマッシブなサウンドを取り戻したかと思ったら、これですよ。

よほどのマニアが聴くための作品です。一生聴かなくても後悔しません。

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