アメコミ初心者目線の「マーベル グラフィックノベル・コレクション」寸評(第11〜20号)

さて、第1号で勢いよく書店に登場した本シリーズ、巻を重ねるごとに書店側も仕入れる冊数が減り、11巻が出るころには、公式通販に申し込まないと手に入れづらい状況になってしまいました。それでも公式だとジュンク堂でのポイントも貯まらないし、1か月ごとの配達だとブランクも空いてしまい積読してしまいそうなので、意地でも書店を使いながら読んでいますが、そんなこんなで今回まずは11号目です。

【第11号】ファンタスティック・フォー:アンシンカブル

ヴィランであるドクター・ドゥームが悪魔と契約して強大な魔術の力を得て、リードとスーザンの息子を地獄に落とし、娘を奪い去り、ファンタスティック・フォーを窮地に陥れる。圧倒的な力を持つドゥームに4人はいかに立ち向かうのか……というお話。

経緯がややこしくてよくわからないまま話が始まるものの、ほぼ家族とドゥームの中だけの話で完結しているので意外にわかりづらさはありません。そんな中でも、宇宙をワープしたりタイムスリップしたり、ドクター・ストレンジが仲間入りしたり、と、楽しませる出来事は満載です。

「なんでそうなったのか」かわからないまま話が展開していくので、「そんなもんだ」と思いながら読まないと、いちいち気になってキリがありません。とは言え、さすがに穴だらけなので、なんだかよくわからない、無理やり納得させられたような後味は残ることでしょう。

そもそも、60年以上前に生まれた設定が明らかに古く、現代的に解釈するには相当無理があります。今時、怪力岩男にゴム人間、魔法使いと火だるま男では、怪物くんみたいな「マンガ」にしかならないので、この「ファンタスティック」な特殊能力が「オマケ」程度の意味しか成さないのも残念な所です。

ダイナミックな筆致は非常に魅力的ですが、作画を担当したマイク・ウィリアンゴは前半クライマックスまでで、後半は絵が変わっています。どうやら若くして他界されたようです。続巻で本作の続編も出るようですが、楽しみなようなそうでもないような……。

【第12号】アベンジャーズ:フォーエバー

「アベンジャーズ エンドゲーム」的に、アベンジャーズが複数チームに分かれて各時代にタイムスリップして、「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」的に「別次元のアベンジャーズ」と鉢合わせて、しかもアベンジャーズ自体がいろんな時代から寄せ集められていて意思疎通が不完全、という大変ややこしい事態で、読んでいて訳がわからないという状態が結構長く続くんですが、これが結構面白い。

過去の作品をそこそこ読んでないと、各キャラが今なぜそうなっているのか、がよくわからないんですが、「こういう理由です」と説明はされているので、まあまあわかった気がします。逆に言えば、このややこしい状況の説明が必要なため、文字による補足がわりと多くなっていますが、それも「読み応え」と思えるぐらいには、絵とストーリーに引き込まれます。

多分、他の作品にありがちな「身から出たサビじゃねえか」があまりなく、非常にストレートな「ヒーローが勝ち目のなさそうなスーパーヴィランに果敢に挑む」話なのが心地よいのかもしれません。

早く続きが読みたい、と思ったのは、本シリーズ中では初めてかも。

【第13号】アメイジング・スパイダーマン:クレイブンズ・ラスト・ハント

なんと第1話でクレイヴン・ザ・ハンターによってスパイダーマンが殺され、彼自身の手で埋葬されるという衝撃的な始まり方をするこのエピソードシリーズ。クレイヴンはスパイダーマンに勝った後、自身がスパイダーマンに扮して活躍してみたり、スパイダーマンが勝てなかったヴィラン・バーミンを倒してみたりと、情緒不安な行動を繰り返します。

もちろんスパイダーマンは本当に死んだわけではなく、わざわざ仮死状態にしておいて、目の前でバーミンと戦わせ、自分がスパイダーマンを「力において」超えたことを誇示しますが、「力」以外には何も持っていないことを自覚させられることにもなった彼は最後に……という、クレイヴンのスパイダーマンに対する愛憎半ばするところが見所な作品です。

なので、逆にクレイヴンというキャラクターにピンと来ないと最後までよくわからないまま終わってしまう恐れもあり、さて日本の読者に響くのかどうか。ちなみに僕は第5号「ヴェノム」で登場した時が初見だったので、唐突に登場して唐突に襲いかかって来る、動物の皮を纏った巨漢に「何こいつ」と呆気に取られるしかなかったですが、それを踏まえて読んでも「あ、あのときのあいつ」ぐらいの補間にしかなりませんでした。

【第14号】キャプテン・アメリカ:ニューディール

2001年9月11日の同時多発テロに着想を得た、というより、アメリカにおいて傷跡も生々しかった時期の作品で、中東と思しき地域のテロリストと戦うキャプテン・アメリカの姿が描かれます。

しかし、「アメリカが悪のテロリストを正義の名の下に倒す」というような、通り一辺倒な展開とは一線を画すストーリーとなっており、当時のアメリカが実際に行っていた愛国的な戦争に対する疑問を、キャプテンが持つ疑念や彼に銃口を向ける少年テロリスト、そして「アメリカの犠牲者」を描くことで、アメリカ賛美や善悪を明確にするような語り口にはなっていないところが重要です。

今となっては時代を感じるモチーフとも思えますが、当時の空気感と、その中で普遍的なテーマ、「平和を守る」ということをいかに語ることができるか、そして語るべきか、葛藤の足跡は、一読の価値があります。絵のクオリティも、凄まじく高いです。

【第15号】マーベルズ

従来の「ヒーローを中心に、ヴィランとの戦いを描く」コミックシリーズとは違い、主役は市井の民。第二次対戦中よりフォトジャーナリストとして活動していたある人物の目線から、ニューヨークの日々の暮らしの中で、スーパーヒーローはどのように映っていたのか、時に彼らを見上げ、時に見下す様子を、リアリスティックに描いています。

マーベル作品の中で起こった様々な事件を、その時街に暮らしていた人々はどのように眺めていたのか。ヒーローたちを撮り続けてきたカメラマンの望遠レンズを通すように、ダイナミックなアングルと効果的な見開き描写を交えながら、徹底的に「地に足のついた描写」にこだわって描かれていきます。

「スーパーヒーローが壊したものは誰が責任を取るのか」といったテーマは長年語られており、「The BOYS」はその極端にデフォルメした例だと思いますが、それをカメラマンの半生として描いたところが、本作の唯一無二の作家性と言えるでしょう。今のところ、本シリーズで読み飛ばせない作品と断言できるのは、本作ぐらいかもしれません。一方で、本作だけ読んでも、マーベル作品を読んだことにはならないとも思います。

ビジュアルはとにかく見事なクオリティで、絵画のような筆致は実に美しく、このハイレベルな描写を180ページ維持して、たった1年で描き切るとは恐れ入ります。巻末にイラストレーターによるメイキング(見本にした写真やモデル、下描きなどがたっぷり)も掲載されていて、大変見応えがあります。

【第16号】アベンジャーズ: ディスアセンブルド

物語冒頭からアベンジャーズメンバーが命を落とし、不祥事を起こし、揉めて、荒れて、最終的には解散するところまでたどり着いて終了……という、これだけ読んでいても、なんでそうなるの、としか言いようのないお話ですが、要するに当時「アベンジャーズ」は40年の歴史を積み重ねており、ここらで一発大幅リニューアルをしないと読者が離れていくばかりという状況だったらしく、そのための荒療治もしくは焼畑農業としてアベンジャーズを崩壊させたということのようです。

こういった「大人の事情」がありきのお話なので、最初から最後まで、ひたすら終わりに向かってつきすすんでおり、経緯を知らずに読んでいると、気まずさと消化不良感でいっぱいになります。これだけの話数・ページ数を使って、アベンジャーズが順調に崩壊していくのを眺めているだけなのですから。

しかし歴史的には、本作をきっかけにマーベル作品は好調に発展して、後のMCUへとつながっていくそうですから、大変重要な作品ではあるようです。そのような意義以外にも、本作におけるスカーレット・ウィッチは「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」の元ネタの一つでもあり、そのような視点から読むのもなかなか乙なものかと思います。また、途中でグラフィックの担当がコロコロ変わり、絵が安定しないのが難点とも言えますが、途中でスティーヴ・ディッコまで遡ったりするので、そこまでいくと逆に楽しかったりもしました。

【第17号】ニューX-MEN:E・イズ・フォー・エクステンクション

プロフェッサーXの脳にハッキングを仕掛けた謎の存在。それは、ミュータントを絶滅させようとするある人物だった……ということで、X-MENはその「謎」に翻弄されながら戦いを挑むわけですが、画風が絶妙にグロテスクで(後半で絵が変わりますが)、怪奇なヴィランのムードとマッチしています。

壮大なお話のような、こぢんまりとしたお話のような、どっちとも取れる感じは、ダーク・フェニックス・サーガに通じるところがある気がしますが、これはX-MEN独特の世界観によるものなのでしょうか。

今作は続編も本シリーズで読めるようなので、最後の意外な事態がどのように収束するのか、続きが気になります。

【第18号】シークレット・ウォー

なぜか命を狙われることになるアベンジャーズたち。そこには、ニック・フューリーが、そしてラトベリアのある人物の存在が関わっているのですが、その経緯は判然としません。しかし次第にその実態が見えてくると、そこには渦巻く陰謀に巻き込まれたアベンジャーズの姿が浮かび上がってきます。

各話の間に、S.H.I.E.L.D.内のコンピュータに記録された登場人物たちのやりとりがテキストベースで挿入される、という演出が、ミステリー仕立てのストーリーを引き立てており、筆のタッチが鮮やかな劇画的イラストも、そのダークで陰鬱なムードに拍車をかけています。

ニック・フューリーを中心に、デアデビルやスパイダーマンらの活躍も堪能できる、見応えも読み応えもある一作になっています。

【第19号】アベンジャーズ:フォーエバー Part2

第12号の続き。後半はさらに話が複雑になり、イモータスとカーン、さまざまな次元のアベンジャーズ、現実と虚構、過去と未来がひたすら入り混じっていき、さらに怒涛の伏線回収も文字量が多い上にややこしすぎて、読むのに非常に骨が折れます。

最後はアッセンブルしまくりの途方もない大バトルに雪崩れ込みますが、楽しさよりも、もう勘弁してくれという疲労感の方が上回ったりして。

非常に読み応えはありますが、首を傾げるようなところも多々あるので、面白いのかどうか判然としないというのが正直なところです。しかしPart1にも増して征服者カーンが大暴れする後半は、やはり盛り上がります。また、各登場人物にしっかり見せ場があるのも、なかなか見事な構成。大変複雑な一方で、ヒーローコミックとしてのバランスはしっかり保っているということですね。

【第20号】ブラックパンサー: フー・イズ・ブラックパンサー

アフリカ大陸で、他国と交流せずに独自の超文明を築き上げた国・ワカンダ。その存在に脅威を覚え、自らの統治下に置こうと企むアメリカと、ワカンダ国王・ブラックパンサーの命を狙う謎の存在。二者の陰謀を前に、ワカンダの運命やいかに。

物語は太古のワカンダが他国に比していかに先進的な軍事国家だったか、その圧倒的な技術力で独立国家として孤高の地位を守り続けてきた事実を語るところから始まりますが、ティ・チャラことブラックパンサーを主役に据えながらも、ワカンダが主役とも言える語り口になっています。

前段が長く、話が盛り上がってきたところで思わせぶりな匂わせを残したところで終了、本シリーズでは続きが読めないこともあり、読後感はなんとも言えないものがあります。

というわけで、今回は11号から20号までの10巻を読んだわけですが、おすすめは「キャプテン・アメリカ:ニューディール」、「マーベルズ」。余裕と体力のある方は「アベンジャーズ:フォーエバー」2冊を読むのもいいかもしれません。

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