【デアゴスティーニ盤で聴くQUEEN】13枚目:半端な2枚組「Live at the Rainbow」

デアゴスティーニ盤「Live at the Rainbow」
QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。13枚目は、初期QUEENのパフォーマンスを収録したライブアルバム「Live at the Rainbow」です。

QUEENが公式にリリースしたライブアルバムは、「Live Killers」が最初で、ライブビデオとしてリリースされたのも、80年代以降のものばかりなので(フレディが「短髪・髭」の期間が8年ほどしかないのに浸透しているのは、映像作品の影響ではないかと思います)、70年代の、特に初期の彼らのライブ音源というのは公式にはあまりありませんでした。

VHS時代に「RARE LIVE」というビデオで、初期QUEENによる”Now I’m Here”のライブ映像があり、真っ暗な中でイントロが流れ、ドラムのアタックに合わせてフレディに照明が当たり、白い衣装をはためかす姿がチラッと見え、「I’m just a」の声とともに全容が現れる、という演出は、普段見慣れたQUEENとのギャップに唖然とせざるを得ませんでしたが、当時、このレインボー・シアターでのライブビデオがあって、それはもうすごいパフォーマンスなのだ、という伝説がありました。

そのレインボー・シアターでのライブビデオを、僕は持っていました。20年ほど前、タワレコで見つけたボックスセットに、Tシャツやワッペンなどのグッズと一緒に入っていたんですが、PAL形式だったので観ることはできませんでした。伝説の映像が手元にあるのに観ることができないという歯痒さは、なかなか耐え難いものがありました。

それが今から5年前、ついに公式リリースされました。まだ熟れていない演奏、”Ogre Battle”などでの意外に再現性の高いコーラス(つまりこの頃までは、ライブで再現できないほどの多重録音はしてなかったんですね)、フレディの初々しい(つまり若手バンドらしい)MCなど、実に新鮮でした。正直「これが伝説のライブか」と思うと、ちょっと拍子抜けするというか、もっと凄まじい、火を吹くような熱く激しい演奏を期待すると肩透かしを食らう、意外に詰めの甘いヨレたパフォーマンスだったりして、後にどんどん磨き上げられて、80年代前後にピークを迎えるハードさと比べると見劣りしなくもありません。しかし選曲といい、「Live Killers」とは比較にならない音質といい(実際、本作は元々ライブアルバムとして企画されていて、映像はダイジェストのものが劇場で何度かかけられていたのに、なぜかすっかりお蔵入りしてしまってたのですから、すぐビデオソフト化したり、数年前のライブ音源も気後れなくリリースする今のような状況とはマーケットも考え方もまるで違ったのでしょうね)、貴重かつ十分に聴き応えのある作品ではあります。

さて、本作は1974年3月の「QUEEN II Tour」、そして同年11月の「Sheer Heart Attack Tour」の2回の公演で構成されており、ビデオソフトは「Sheer Heart Attack Tour」をメインに「QUEEN II Tour」の映像を3曲ボーナス・トラックとして収録された、いわゆる過去にPAL形式でリリースされたビデオのデラックス版としてリリース、CDは両日の演奏をそれぞれ丸ごと収録したもの、「Sheer Heart Attack Tour」のみのもの、ビデオとCDをパッケージしたものと、様々なフォーマットが出ており、非常にややこしいことになっていますが、さらにややこしいのが、アナログ盤は2枚組で両日のダイジェストになっているもの、4枚組完全版があり、演奏的にも選曲的(「QUEEN II Tour」では、”Seven Seas of Rhye”のB面にして、QUEENキャリア中でも相当レアな3コードのブルースナンバー”See What a Fool I’ve Been”がアンコールで締めくくられており、曲のつまらなさもあって狐につままれたような終わり方をします)にも勝っている「Sheer Heart Attack Tour」だけをフルで聴けるフォーマットがないということです。

そしてデアゴ盤は、両日のダイジェストが収録された2枚組。やはりこれは中途半端と言わざるをえないでしょう。「QUEEN II Tour」からは”The Fairy Feller’s Master-Stroke”が漏れてるわりにギターソロとドラムソロが入ってるし(少し擁護すると、この時のギターソロは、後年の惰性ソロと比べると聴けるレベルの内容です)、「Sheer Heart Attack Tour」では、既に最後が”God Save the Queen”で締められているところ(しかも初めて聴いたであろうオーディエンスがシンガロングせずとても大人しい)が良いのに入ってなかったり、選曲も微妙です。4枚組は高すぎますし、CDプレーヤーもないし、どうしてもアナログで聴きたい、という人以外は、デアゴ盤で2枚組を買うよりも、CDで完全版を聴いた方が良いかと思います。

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