【デアゴスティーニ盤で聴くQUEEN】19枚目:スタジアム感が半端ない「Live at Wembley Stadium」

デアゴスティーニ盤「Live at Wembley Stadium」
QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。今回はライブの名盤「Live at Wembley Stadium」です。

1985年、メンバー間の亀裂が深くなり、解散の2文字がちらつくバンドがLIVE AIDで再び結束……という話は、某映画でも多少の歴史改変とともに描かれており、後にブライアンの口からも「あれがなかったら解散してたかも」という発言があったりもするので、なるほど非常にドラマティックな話だなと思わされますが、ブライアンってどうもリップサービスが過剰なところがあって、ファンの望むQUEEN像、感動的でドラマティックなQUEEN像に引き寄せがちな気がするので(だから彼とロジャーが関わった某映画に眉をひそめてしまうのだけど(じゃあ最初から見るなよということですが))、あまり真に受けるのもどうかな、とは思います。しかし結果的に「A Kind of Magic」は名作ですし、その名作を伴うコンサートが、このような形で後世に残されたことはファンにとってとても幸福なことだと思います(リリースはフレディ死後の1992年)。

実のところ、演奏がとりわけ見事ということはありません。80年代以降、徐々にレイドバックしていった演奏スタイルはここにピークを迎え、どの曲もまったりと、しかしスケール感だけはやたらあるパフォーマンスで、妙に説得力だけはある、という感じです。その説得力は、LIVE AIDでの手応え(つまりオーディエンスからの反応と世間の評価)に基づいて、同じウェンブリー・スタジアムで演奏しているということが奏功しているのでしょう。

DVD版の映像を見ていて残念に思うのは、画質が良くないことです。テレビ放送用だったのでしょう。この点はブダペスト公演が優っていますが、こちらは途中、現地でのドキュメンタリーが挿入されていたり、パフォーマンス自体も悪くないものの、明るいうちから始まり陽が落ちていくウェンブリーのドラマティックさには敵わないというところもあって、これまた残念なところです。

また、本作リリース以前、「Live Magic」という同ツアー(主にネブワースでの最終公演の模様)を収録したライブアルバムもありますが、演奏はいいものの、あちこちにハサミが入ってしまっているため、コンサートを丸ごと追体験できる本作が出てしまってからはあまり省みられなくなりました。QUEENが公演ごとにセットリストを変えるバンドだったら良かったかもしれませんが、前述のブダペスト同様、結局最後までちゃんと聴けるのはウェンブリーしかないというのは、むしろ必然と言えるかもしれません。

QUEENの不思議なところは、「初期の曲をメドレー形式で駆け足で演奏する」わりに「古いスタンダード曲のカバーをやる」点です。初期から”March of the Black Queen”は途中からしかやらないし、「全アルバムからやる」と宣言したWorksツアーでも「Jazz」から取り上げたのは”Mustapha “のイントロをチラッと口ずさんだだけ、そのくせ”Jailhouse Rock”やってるし。本作でも、前半で初期の曲をまとめてサクッとやりつつ、後半のオールディーズメドレーの方が盛り上がってるというおかしなことになっています。”Bohemian Rhapsody”は平気でテープで流してるし、この人たち、ライブにおいてファンが何求めてるのかとか、考えたことなかったんじゃないかという気がします。

さてデアゴスティーニ盤ですが、3枚組なので「On Fire: Live at the Bowl」と同じ箱状のジャケット。しかしあのフレディの上体反らしポーズを12インチサイズで見ると、やっぱり迫力あります。音質は、DVDの時から「あー、スタジアムっぽい音の回り方してるなあ」と思ってましたが、レコードで聴くとその印象はさらに強く、映像がない分、脳内でより鮮明な彼らの姿が再生されるので、より没入感があります。馬鹿デカいPAシステムから馬鹿デカい会場に向けて馬鹿デカい音を出して、大いに盛り上がっているスタジアムの臨場感が、存分に刻まれています。これ聴くと、ハイファイ云々とかどうでも良くなります。DVDもいいですが、これはアナログ盤でも持っておくべきではないか、と。

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