【デアゴスティーニ盤で聴くQUEEN】23枚目:UKで頂点を極めた瞬間を追体験できる「A Night at the Odeon」

デアゴスティーニ盤「A Night at the Odeon」
QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。今回は1975年12月24日の公演を収録した「A Night at the Odeon」です。

1975年11月に「A Night at the Opera」がリリース。同月からツアーが始まり、翌年、二度目の来日公演を挟みながら4月まで続きます。

75年内はUKでのツアーとなっており、最終日が本作の収録されたハマースミス・オデオンです。

前年のレインボーシアターでの公演と比べると、演奏も熟れてきており、”Bohemian Rhapsody”によって自信をつけた感じが伝わってくるようです。

しかし残念なのは、選曲です。

A Night at the Opera Tourは、22〜4曲ほど演奏していて、ツアー最後の日本公演では26曲演奏している日もあります。その中でハマースミス公演のみ、18曲と極端に少ないです。本作は元々テレビで生中継するために録画・録音されていたので、その尺に合わせるために曲数を絞ったのだと思いますが(それでも生放送ではアンコールが収まっていなかったらしく、2度目のアンコールにいたっては、カメラすら回っていなかったようです)、色々残念な点が気になります。

まず新婦からのレパートリーが減らされていること。同じUKツアーの別公演では”Sweet Lady”、”The Prophet’s Song”が取り上げられ、ツアー後半では”Lazing on a Sunday Afternoon”まで加わっています。本公演では”Bohemian Rhapsody”のみです。当然オペラパートと呼ばれる中間部分はやりません(とは言え、メドレー形式での”Killer Queen”への流れはカッコ良いですが)。

そのわりに、”Big Spender”、”Jailhouse Rock”といったカバー曲はちゃっかりやってます。新曲よりもカバー曲を優先して、当時のファンは喜んでいたのでしょうか。

そしてセカンドアンコール、最後の演奏曲が”See What a Fool I’ve Been”というガッカリ感。QUEENのB面曲にはろくなものがありませんが、その筆頭とも言えるブルース調のかったるい凡曲。こんな曲で締めくくられて、当時の観客は「金返せ」と思わなかったのでしょうか(実は日本公演でもラストはこの曲でしたが、前述の新曲も含めて20曲以上演ってくれた上でのこれですから、まあなんとか許せたでしょう)。

さてデアゴスティーニ盤ですが、元がテレビ放送用なので、やはりハイファイというわけにはいきません。それでも、丁寧にリマスタリングされ、ハーフスピードでカッティングした効果を感じるホール感、実在感は溢れていますし、「Live at the Rainbow」と比べると1ステージ上がったような成長も生々しく伝わってきます。ポータブル・プレーヤーではなく、スピーカーで、そしてアナログレコードで、じっくり味わいたい仕上がりになっていると思います。先にネガティブな意見を書いていますが、正直、レコードで聴いて評価を改めました。すみません、素晴らしいコンサートでした。すごくいいです。

UKシングルチャートで”Bohemian Rhapsody”が9週連続1位となり、アルバム・チャートでも「A Night at the Opera」も1位獲得を間近にした、クリスマスイブのこれ以上ない夜、地元でQUEENが頂点を極めようとするまさにその瞬間を、40余年を超えて自宅で追体験する悦び……これは愛聴盤になりそうです。

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