【デアゴスティーニ盤で聴くQUEEN】11枚目:後期入門編だけど実はマニア向け「Greatest Hits II」

デアゴスティーニ盤「Greatest Hits II」
QUEENのデアゴスティーニ盤のリリース順に、各作品の内容、そしてデアゴスティーニ盤の評価について書くシリーズ。11枚目は、後期ベスト盤「Greatest Hits II」です。

「Greatest Hits」リリース以降の作品からの楽曲を収録したベストアルバム。”Under Pressure”が収録されていますが、厳密には「Greatest Hits」の直前にシングルリリースされているので前期の扱いになるべきですが(実際過去の日本盤や米国盤「Greatest Hits」には”Under Pressure”が収録されていたみたい)、本作に収録されています。

「Greatest Hits」が才気走ったQUEENの良いところを凝縮したアルバムだったことを考えると、元になる作品数から見ても(前期9枚、後期5枚)、若かりし頃の勢いと比べてみても、見劣りすると言わざるを得ないですが、それは初期QUEENが桁外れに凄すぎたというだけの話で、じゃあ本作が食い足りない内容かと言えば、なんのなんの、聴き応えたっぷりの名曲揃いなのです。

1曲目”A Kind of Magic”からして、前期のサウンドに漲る緊張感はありません。しかし、この力みのない開放感と多幸感は格別です。80年代のサウンド・プロダクションの傾向とも言えますが、本作が湛える風通しの良さと肩肘張りすぎない心地よさは、ベテランバンドとして円熟したQUEENの大きな魅力であり、そういう意味でも「Greatest Hits」と本作は対となる存在で、逆に言えば、QUEENが好きな人でも「初期が好きな人」と「後期が好きな人」に分かれることがあるのは、「The Works」のツアー、「A Kind of Magic」のツアーが、それ以前と比べて演奏の質に違いが生まれていて、その時の映像こそがQUEENへのイメージを確立している、という人が多いからでしょう(だからこそ、昔からQUEENが好きな人ほどLIVE AIDの演奏(つまり例の映画のクライマックス)にクエスチョンマークを浮かべたりもするわけです)。

どちらが良い悪いということではありません。先に書いたように、前期と後期は音楽的な方向性が著しく異なっており、「The Game」あたりはその中間に位置しますが、その後の「Hot Space」まで漲っていたやる気は、売り上げという現実によって水をかけられ、「The Works」からは明らかに音に隙間のある、レイドバックした姿勢から作品を生み出すようになっています。この、QUEENの熟れた味わいをひとまとめに楽しむには、本作はうってつけですし、この2作を比べて聴くことで、QUEENの一括りには語れない魅力が、二括りにしてみると意外に見えてくるものがある、ということにも気づかされます。

いずれにしても、マニアックにQUEENの作品を掘り下げたい、ということではなく、例の映画が良かったのでとりあえず聴いてみたい、という人には、LIVE AIDの(例の映画での)セットリストが全て埋まるこの2作で十分でしょう。

一方で本作は、「Greatest Hits」と違い、オリジナルアルバムさえ揃えておけば聴く必要のないものかと言えば、そうとも言い切れません。あまり表立って書かれていませんが、本作収録曲は、何曲かがしれっとシングル・エディットになっています。普通、クレジットの曲名の後に「Single Edition」とか書いていそうなものなのに、全く書かれておらず、僕も今回初めて聴いてびっくりしました。「あ、”I Want It All”がコーラスから入ってる」「あ、”I Want to Break Free”がミュージック・ビデオのテイクだ」などなど。

他にも短めのシングル・エディションが何曲も入ってるんですが、じゃあ全曲そうかと思いきや、”Imvisible Man”はミュージック・ビデオでのシンセのフニャフニャした音から始まるバージョンじゃなかったりして、一体何がしたかったのかよくわかりません。しかし、これはこれで、単なるベスト盤として聴くよりも楽しめる要素であり、「Greatest Hits」と比べて「アルバムだけ聴けばいいや」と思わせる選曲なだけに、なかなか良いアクセントになっています(とは言えあまり知られてないというか、あまり言及されてないので多くの人が気づかず、僕も気づかなかったので今まで買おうとも思わなかったんですが。まあぶっちゃけオリジナル盤のボーナス・トラックとかでどれも聴けると思いますがね)。

さてデアゴスティーニ盤についてですが、まずジャケットはこれまで同様しっかりとした作りです。ロゴや文字が箔押しされていて、非常に高級感があります。このあたり、物欲をそそるという意味で結構大事。

音質も、「Greatest Hits」のようにマスターの音質にバラつきがないせいか、ヒスノイズが気になることもなく、レベルも揃ってサウンドも滑らか。「アルバムだけ聴けばいいや」と思わせる選曲、と書きましたが、それでもこちらのバージョンで聴きたくなるぐらいの魅力はあります。

マストアイテム、とまでは言いませんが、2枚組で割高ですけど持っていて損はないと思いますので、「後期QUEENは認めない」という人ほど、「ちょっとこれ聴いてみ」とおすすめしたい作品です。

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