LIVE! LAUGH! at BIG APPLE (Hyogo)

この日はBIG APPLEに、再結成LIVE! LAUGH!を観に行きました。

LIVE! LAUGH! at BIG APPLE

BIG APPLEは初めて来ました。ジャズ喫茶的な小さなハコに、総勢17名のメンバーがぎっしりと並び、そこに開演後も続々とお客さんが入ってきて、恐らく40〜50人ぐらいが隙間を埋めるようにぎっしりと座っていました。年齢層はご年配の方、子連れの方、普段ライブハウスでよく見かける方など様々。

BIG APPLEは今年25周年ということで、大原裕10周忌と併せて企画された一度きりの再結成ということらしく、管打団は小田さんに突っ込まれるぐらい観ていますが、LIVE! LAUGH!は観たことがなく、アルバム「風ヲキッテ進メ!」も大原氏の死後、「中川敬が参加してるから」という理由で購入、しかも三田村管打団?の試聴会の際にアリさんが「あのアルバムは大原さんが当時のジプシーブームの影響で作った作品で、本当のリブラフはあんなもんじゃない」というようなことをしきりに言っていたので、どうにかしてLIVE! LAUGH!の音を聴けないものかと悔しい思いをしていました。

ということで期待値も高まりに高まったままこの日を迎えましたが、演奏はその期待を上回る凄さ。なにせプレーヤーは(sax:水谷康久、登敬三、井上智士、岩田江、樋野展子、三宅伸一 tb:三原智行、廣田智子 tp:江崎将史、山本信記 tuba:吉野竜城、塩田遥 ds:井崎能和、光田臣 perc:池田安友子、横沢道治)そうそうたる顔ぶれで、しかも全員が容赦なくフルスイングしてくる手加減の無さ。近距離でダイレクトに音が飛んでくるタイトな音響が、脳と身体をガンガン揺さぶります。次から次へと強烈なフレーズを叩き出す濃度と密度の高さと圧倒的なグルーヴ感に、嬉しさのあまり思わず笑いがこみ上げてくるほど。江崎氏も普段はあまりお目にかかれないジャジーなハードブロウを見せ、弱音から一気にフォルテした瞬間は思わずクラッとしました。渋さ知らズを彷彿とさせるところもありましたが、そう言えば管打団の試聴会の際、小田さんが「東京の渋さ知らズへの関西からのカウンターという意味もあったかも」というようなことを言ってましたね。大原氏はじめ、渋さに参加したメンバーもいますし。

今はそれぞれのフィールドで活躍する人たちでもあり、一堂に会する機会などこんなこともなければ無いこともあってどことなく同窓会的な雰囲気も醸し出していて、MCでは昔話に花が咲き、当時を知らない者としては実に興味深く聞かせてもらいました。特に「昔はデモをやるとお金が貰えた。共産党からお金を貰ってた」という登氏の話は衝撃的でした(その登氏が今しゃぼん玉パレードに関わっているということが、胸にずっしりと来ます)。井崎氏と吉野氏は同い歳の旧知の仲という感じで、吉野氏が「(井崎氏に)今日はちゃんとしてるな」と言うと「(譜面を見失ったり漫然としていた吉野氏に)おまえがそんなんやからじゃ」とすかさず言い返す息の合ったやりとりも(そう言えば吉野氏がチューバを吹いてるのは関フィル以外で初めて観たかも)。

レパートリーは大原氏のオリジナルの他、日本の民謡や様々なワールドミュージックを取り上げていて、選曲の妙やバランスは今の管打団に受け継がれているという感じ。管打団のレパートリーともなっている“スチール・ビート”、“オオハラ2”、“旅行”、そして“ハイライフ・ヒム”と共にフローズン・ブラスからのレパートリーだった“ハイライフ・ソング”、その他の曲もブラジルやアフリカ、さらにヨーデルまで飛び出すところは強い継承感を覚えますが、演奏自体は真逆と言っていいほどのテンションの高さ。MCでは脱力した喋りで水谷氏がメンバーにやんやと突っ込みを入れられたり、リハーサルが不十分だった曲では軽くフラついたり段取りが甘かったり本番中に曲順の打ち合わせが始まったりと適当な雰囲気もあるんですが、楽器を鳴らせばたちまち熱波が漲るようなサウンドに。全メンバー中6人が現管打団ですが、廣田氏も塩田氏も振り絞るように猛然とソロを吹き、廣田氏は吹き終わった後に息切れして塩田氏から水を貰うほど。

アリさんは、管打団はLIVE! LAUGH!からリズム隊をそのまま引き継いでいた分、打楽器が全員揃ってしまうとリズムだけハード過ぎて、管が1曲目で力尽きてしまう、と(前述の試聴会で)言ってましたが、正にそのリズム隊が怒濤のビートを生み出していて、バンドを猛烈にプッシュしていました。リズム隊4人だけの演奏になった時は、まるで打楽器だけのオーケストラのようなスケール感。管打団ではまったりと大太鼓だけ叩いている姿がお馴染みの光田氏も、ドラムセットに座って強烈なスネアの音を響かせ、時にポリリズムも垣間見せていました。

「LIVE! LAUGH!はエゴのぶつかり合い、管打団は支え合い」とは、これもアリさんの弁ですが、実際に聴いてみると、LIVE! LAUGH!は完成されたアンサンブルで、印刷におけるCMYK四版が完全に揃った濃密なサウンド。管打団は、そのうちK版が抜けてしまっていて彩りだけを残し、現場ごとにその場の色を乗せることで完成させるサウンドという印象。今の管打団が当初から計画的に今のような状態にしていったわけではないでしょうが、LIVE! LAUGH!と同じ方向ではなく、アリさんらしいスタイルで稼働していることは、クオリティという意味でも持続性という意味でも必然だったように思えてきます。

ともあれ、理屈抜きに本当に素晴らしいライブでした。LIVE! LAUGH!を生で観られるなんて思ってもみなかったので、演奏の凄さも相俟って感激もひとしお。一夜限りの再結成ということでしたが、1年に1回ぐらいこんな演奏が聴けたら、関西の音楽ファンは本当に幸せだと思うんですけど、どうでしょうかね。

LIVE! LAUGH!集合写真

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