運河の音楽 at 神戸ドック〜兵庫運河 (Hyogo)

この日は兵庫運河周辺で行われたイベント「運河の音楽」に行ってきました。

少し早めに現場に着くと、イベントの気配すら無かったので、コンビニよったり散歩したりしながら時間を潰して、10分前ぐらいに神戸ドック前に行くと、小さな人垣が。

やがて、工場のノイズとうっすら漂う鉄っぽい臭いの中、この日のイベントの要所で吹き鳴らされる法螺貝の音でスタート。

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その後、浜山ハンドベルグループの、ややアブストラクトでチャーミングな演奏。

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続いて、工場入り口に並んだ神戸大学アカペラグループの生声でのライブ。すぐ後ろは現場、そして、黙々と仕事をしている人もいる中で歌いづらかったんじゃないかと思いますが、しっかりしたパフォーマンスで、音とシチュエーションのミクスチャ具合がなかなか面白かったです。

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アカペラグループが歌い終わると、森本アリたち管楽器のグループが楽器を吹きながら、お客さんたちに背中を向けて歩き始めたかと思うと、そのままドックの中まで入っていき、ドック内を歩き回りながら演奏。一緒にドック内を歩き回れたらもっと楽しかっただろうな、と思ったんですが、演奏の許可を取るのも大変なぐらい厳しかったようです(とか言いながら休みの日にはここで釣りをしてるオヤジさんがいたりするらしいですが)。

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神戸ドックでのパフォーマンスはこれで終了し、新川運河のキャナルプロムナードに向かって移動。

途中、船着き場でハーモニカを吹く男性がいたり、橋から紐でぶら下げた石を投下するパフォーマンスがあったりと、道すがら仕掛けがいっぱい(途中、工場の奥からデカい音でラジオが鳴っていたのが聞こえてきたんですが、これがまた音楽的に面白かったりして)。

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アカペラグループが歌う中をすり抜けていくと、プロムナード中央には輪田鼓の立派な和太鼓のセットが。

ほどなくして演奏が始まります。太鼓の音が川の向こうの建物に反響しているのか、奇妙なディレイがあって非常に面白かったです。

1曲終わると、ダンサーの関典子が登場。このコラボレーションが素晴らしく、とにかくコンテンポラリーダンスと和太鼓の相性の良さにびっくりしました。勇壮なリズムとしなやかなダンスの絡み合いがとても魅力的。こういうセッションはまた観てみたいですね。

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輪田鼓の演奏が終わり、どこからかマンドリンの音が聞こえるかと思うと、ブルーグラスサークルの学生が演奏中。なかなか格好良かったです。

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プロムナードを抜け、さらに歩を進めると、立派な魚の壁画のある上野紙料の前へ。やがて3名のダンサーによるパフォーマンスがスタート。水辺で静かに踊る様は適度なスリルと緊張感に包まれていました。

最後は上野紙料の中に駆け入って終了(スタッフの方が「入っていいの」「あかんけど」という苦笑いに見送られて)。

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さらに順路に従い進んでいくと、川沿いで、石を投下するパフォーマンスをしていたつなぎ姿の女子たちが、今度は地べたに布を広げてライブペインティング。コンセプト的にも内容的にもやや企画倒れな感じで、時間もなくなり、完成を見ずにそのまま日清製粉前へ。

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この時、日清製粉前のビルが解体工事中で、巨大なクレーンがゆったりと動きながらビルを引っ掻く中、工事現場前の細い道に風船が並べられており、そこに森本アリグループ+さらに数名で登場。しかし、大きな川を挟んで遠くから眺めるしかできないので、どれが誰だか余り分からない感じ。

演奏は、パーカッシブな解体作業の機械音と管楽器の生音が混ざり合い、不思議な、「音楽的な都市ノイズ」のようなものに。

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その間、縁に沢山並べられた風船は、風に乗って川へと滑り落ちたり、縁をゆったりと飛び跳ねたり、まるで小さな生き物たちのように自由気ままに動き回っていました(後で聞いた話によると、風船に重しを付けて、「から傘おばけ」のようにピョンピョン跳ねる、というコンセプトだったそうです)。そのうち、いくつかの風船が絡み合ったり、重りから解放された風船が解体現場も飛び越えて、天高く舞い上がっていったりと、なかなかドラマティックな動きを見せてくれました。

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↓絡まった風船と格闘するアリさん

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↓風船との格闘に半分以上時間を取られてしょんぼりするアリさん

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さらに先に進むと、製材工場での木村文彦 田中大介 藤井まどかのトリオによる即興演奏。川向こうからの反響で、天然のダブ処理された絶妙なスポットでのピアニカやスチール・パン、パーカッションの音が響いていました。

やがて、材木引き上げ用のクレーンも動き出し、機械とのセッションへと発展。いつまででも観たい気もしましたが、時間も無くなってきたので、最後の兵庫運河まで移動。

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兵庫運河に着くと、どこからか、パーカッションや管楽器の音が、運河を挟んで大きく反響し、長いインターバルを取りながら聞こえてきます。四方に散らばった奏者がそれぞれ呼応するように短い音を鳴らし合い、それが運河の上を回るようにディレイするという、運河全体を使った究極の天然ダブ。これは、最高に気持ち良かったです。

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しばらくして、吉田中学ブラスバンドの演奏。この日、数少ない、しっかりとした構成でタイトな演奏をしていたグループでした。

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続いて、子供たちが丸い紙に描いたイメージに合わせて楽器を演奏……ということのようでしたが、子供は思ったほど楽器に食いつかず。

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ここでプロムナードでのブルーグラスグループが再登場。

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最後は、音遊びの会でグランドフィナーレ。以前観たONJOとのセッションと比べると、非常にまとまっていて、良い意味でポップ、即興ながらも緩急がしっかり付いていて、素晴らしいパフォーマンスでした。

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音遊びの会が終わると、沼田里衣が鐘を打ち鳴らしながら大漁旗をはためかせた船で乗りつけ、最後には締めの法螺貝。

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以上、もう、追いかけるだけで精一杯、と言うぐらい盛りだくさんだったんですが、他にも細かな仕掛けがあちこちにあって(並べられた目覚まし時計がランダムにアラームを鳴らし、それをお客さんがモグラ叩き感覚で止めていくとか)、見逃したものもあります。

学生主導、と言っても、いわゆる学祭のように人気ミュージシャンを集めて学生は運営に終始する、というものではなく、学生たちがアーティストとして参加しているので、クオリティに差が出たり、つたなさが目立ったりするところはありましたが、そういうブレやムラを隠すこと無く、町中に放り出してしまったところがよかったですね。

単純な「都市ノイズと音楽の融合」みたいなことではなく、町中に溢れている音楽のポジションを「入れ替えてみる」ことで、「神戸」という土地で鳴っている「音」が、白日の下にさらけ出され、壁で仕切られていた「外」と「音」が繋がった、というダイナミズムは非常に感動的で、昔オルケスタ・デ・ラ・ルスのNORAが「キューバは街中あちこちで音楽が鳴っている」という話をしていたんですが、日本の町がもしこの「運河の音楽」みたいな町になれば……とつい妄想してしまいます。それぐらい、町中に、静かに寄り添うように鳴る、という音楽のあり方はとても魅力的でした。

告知も頼りなく、行くのも帰るのも少し苦労しましたが、結果的には丁度良いくらいのお客さんの数でしたし、絶妙にいいバランスで見事に完成したイベントだったのではないでしょうか。また観たい……と思いながら、一度きりだからいいのかも……と思ったり……次は誰か、大阪か京都で。

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