この日はCONPASSで行われたgoatの2ndアルバム「RHYTHM & SOUND」レコ発パーティに行ってきました。
前作のレコ発から約1年半。この間、goatは精力的に活動を続け、それにより話題が話題を呼ぶ形でその名が広まり、バンドの司令塔である日野浩志郎をはじめ、昨年は正に飛躍の年を迎えていたと思います。その勢いは、2ndのリリースによって更に拍車をかけているようですが、それから1ヶ月、彼らのホ―ムグラウンドであるCONPASSでのこの日のリリースパーティは、前回に勝るとも劣らない濃密な一夜となりました。
開演間近に会場入りすると、行松陽介が静謐なピアノにうっすらとホワイトノイズが染み渡るようなチルアウトなDJを、ガッチリとした体躯を揺らし、小刻みにミキサーのツマミをいじりながらプレイしていました。
DJの流れを引き継ぐように登場した、トップバッターのゑでぃまぁこんを観るのは久し振りな気がしましたが、実に4年ぶりでした。MCも無く、曲間も最低限に抑え、粛々と演奏が進められるステージは、それぞれのメンバーが、楽曲にとって最も必要な音を一片の無駄も無く丁寧に折り重ねて行くようで、敬虔な気分にさえなるその研ぎ澄まされた演奏は、その集中力と楽曲に身を捧げるような印象が、goatとつながっているように感じました。
転換に入ると、行松氏のDJはおもむろにビート感を強めていき、ミニマルな四つ打でフロアをガンガン揺らします。そのダンスビートにシームレスにつながり、STEVEN PORTERの演奏がスタート。ラップトップを使ったエレクトロ・ダンス・ミュージックのデュオですが、重く鋭いキックが気の底から轟くようなビートの上に、微細なテクスチャーが折り重なりながら時々刻々と変遷し、広大なアンビエンスを描くそのサウンドの感触は、まるで和太鼓。リズムにも、単純な四つ打ちによらない、複数の大太鼓が連なって打ち鳴らされるようなトライバルなムードがあり、聴きようによっては電子音が屋外に響き渡る残響音や吹きすさぶ強風を模しているようにも聴こえ、禍々しくも肉体的な強靭さを感じました。
そしてこの日のトリは勿論goat。前回観た時に逆転していたギターとサックスの位置は元に戻っていました。
新作リリース後も途切れないオファー、バンドの熟練度の高さ、お客さんの熱い期待、ホームの安定感、どれもが功を奏したのか、研ぎ澄まされつつもガチガチにならず、弾力性のある筋肉が演奏に合わせて伸縮するのを感じるような、終始グルーヴィな演奏でした。元々、録音ソースでは表現し切れないフィジカルさがライブでの持ち味でしたが、特にこの日はバンド全体が隆起する筋肉のようで、繰り出すパンチの鋭さ、スピード感、そして、これまでメンバー自身も意識的にしてきたはずの内に向かうストイックなエネルギーが、既に内側に収まり切らずに外へと盛大に溢れ出していることによるギラギラしたオーラが、容赦なくフロアへと放出されていました。1stアルバムを始めて聴いた時の衝撃とはまた違う意味で、筆舌に尽くし難い一種異様な、そして凄まじく格好良い音楽が、新たに生み出されたかのような強烈なパフォーマンスを見せてくれました。
goatの規格外の演奏もさることながら、そこに至るまでに一直線に並んだこの日の出演者とそれらを繋いだDJの、極めて興味深く、イージーさのかけらもない密度の濃さが、ひとつの作品のように見事にこの日のレコ発を作り上げていたように思います。隅から隅まで新鮮な音しかないのも、彼らのイベントの面白さ。そんな彼らの名を冠して、6月にまた同じ場所でイベントがあるそうで、こちらも気になりますね。