ははの気まぐれ at 拾得 (Kyoto)

この日は拾得ははの気まぐれを観に行きました。

ははの気まぐれ@拾得

拾得に来たのは、ははきまが「母の日のみライブをする」体制になった最初のライブ以来なので5年ぶり(ははきま自体は、同年10月にRainbow Hillで観て以来)。5年前と同じように軽く道に迷いつつ、開演20分前に到着。

会場内の座席は全て埋まっており、空きスペースは座敷の隙間に腰掛けられる程度。チケットは完売していたらしく、開演後も続々入ってくるお客さんで会場内はかなりの高密度。この日のゲスト、ムッシュかまやつの力なのかバンドの自力なのか、久々過ぎて全く分かりません。

フードやドリンクをスタッフがせわしなく運ぶ中、照明が落ち、“イントロダクション”をBGMにメンバーが登場し、1曲目からブギー調のリフがザクザク切り込むハードな新曲でスタート。拾得の良好とは言い難い音響と、足踏むわぶつかってくるわの給仕に残念な気分がもたげてきましたが、曲が進むごとにほぐれてきたバンドのアンサンブルがガンガン熱量を上げてくると、そんな憂鬱な気分も吹っ飛び、ははきまの名曲の数々と強烈なグルーヴに身も心も踊らされました。

MIDI移籍後の2作を中心にした選曲は、どちらも駄曲無しの名作なので悪いはずも無いんですが、演奏の頻度が少ないのに……というかむしろ、演奏の頻度が少ないからか、新曲に負けず劣らずパワフルかつフレッシュで、バンドとしてのモチベーションが今もなお強固に保たれていることにほっとするやら感動するやら。特に「そろそろ時間ですよ」からの曲が多めでしたが、アルバム発売時には既に活動ペースが落ちることの決まっていた「ベースボール・サンセット」も名曲揃いの傑作なので、こちらからももっと聴かせて欲しかったです。

MCは相変わらずのユルさで、1年ぶりというのに特に近況報告や1年を振り返るようなこともせずに、お互いに他愛も無い話でボケあったりツッコミあったり。内輪話や客席にいる親族との会話すら楽しく聞けてしまうのは、メンバーの人柄によるものなのでしょうか。

永遠の名曲“あのこをちょうだい!!”で1時間強の前半セットを締めると一旦休憩が入り、後半はムッシュかまやつを迎えて、氏の昔のナンバーをははきまと共に演奏するというセットへ。

ムッシュの演奏力はボロフェスタで観た時に既になかなかの老いぼれぶりでしたが、それから8年以上が経過し、齢70を超えた御大、冒頭の“ゴロワーズを吸ったことがあるかい”からピッチも狂いまくって見事なヨレヨレぶり。それに反してははきまの演奏は驚くほどムッシュのナンバーを情緒たっぷりにこなす技術の高さ。まるでオリジナル曲かと思えるほどのハマり具合にもびっくり。ははきまの音楽からはオールドスタイルのロックンロールからの影響が強く感じられますが、ムッシュもルーツを共有しているのと同時に、彼ら自身ムッシュからの影響を受けているということなんでしょう。言葉のリズムや歌詞のテイストも、どことなく共通するものを感じました。

1曲ごとに「次何やる?」「どの時代のアレンジでやる?」などと、親子以上に年齢の離れたははきまと、笑顔を絶やさず無邪気に喋ってる姿は、数十年のキャリアを誇る大ベテランの風情は一切無く、ははきまの持つほっこりしたオーラと調和したような、柔らかくピースフルなムードを終始発していました。

時にボーカルも取りながら溌剌とした演奏を繰り広げるははきまに引っ張られるように、ムッシュも徐々に声量を増してゆき、後半ではかなりエネルギッシュな歌唱を響かせていました。

ラストは、曰く「ムッシュが連れてきた友達」、ヒューマンビートボクサーのLynを迎えての“バン・バン・バン”。おそらく打ち合わせを殆どしていない上に、ははきまのボキャブラリーにボイスパーカッションも打ち込み系のビートも無かったためか、やや噛み合ないままの演奏になってしまっていました。

アンコールでムッシュを呼ぶも、すっかりエネルギーを使い果たしたようでステージに戻っては来ず、結局ははきまのみで“オーライ・オーライ”をプレイして終了。音止めの21時より10分ほど早い終演にアンコールの拍手が鳴り止みませんでしたが、結局ダブルアンコールは無し。後半はややグダグダ感もありましたが、それも含めて魅力的に思える楽しい一夜でした。

それにしても、これだけのバンドでありながら、年に一度、京都の小さなライブハウスで演奏するためだけに活動し続けているというのは、本人たちの意思とは言え、勿体ないという気がしてしまいます。このバンドについて今まで正当に評価されたことが無いんじゃないかという不満もあって(なんで「ヘンテコ・ロック・バンド」なんて適当な言い方で終わってしまってたんだろう)のことなんですが、本人たちは今のペースが一番居心地が良く、今のペースだからこそ今のモチベーションが保てているんだとしたら、それも仕方のないことなんでしょうね。評価とか、あんまり気にしてなさそうですし(冒頭の新曲は「自信作です」と言ってたり、ライブ中何度も「いい感じやね」と確認するように繰り返していたので、全く気にしてないことはないでしょうけど)。

それならそれで、このままのペースで、ぜひ何十年と活動を続けて行ってもらいたいものです。そして、ゆくゆくはニュー・アルバムを。

あのこをちょうだい!!
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