六月の涅槃 at epok(Osaka)

この日はepokで行われた、AURORA/ヘスペシャンカ/埋火の対バンイベント「六月の涅槃」に行って来ました。

uzumibi

トップバッターは埋火前回観たのが二人体制だったので、三人揃ってのライブを観るのは久々でした。

曲の魅力を生かしながら、随所にスポンテニアスな即興的展開も垣間見え、より一層バンドとしてのグルーヴ感を増しながら、ライブアクトとしての柔軟な筋肉をしっかりと付けてきた感じでした。メンバー三人それぞれ離れた町で暮らしていることが信じられないような見事な一体感。音響的にもバッチリなepokで、しかもステージの境目の無い至近距離でこの演奏が観られるというのは本当に贅沢ですね。

続いてのヘスペシャンカは初見。埋火と比べるとメンバーも音数も多く、同じ至近距離だと音が散らばって聴こえてしまったので、もうちょっと後ろで聴けば良かったなと若干後悔しましたが、演奏は素晴らしかったです。

いわゆるフォーキーな歌ものロックのテイストを醸し出しながら、各メンバーの高度な演奏技術と安定感は器楽パートでも聴き所満載。白い汽笛でも確かなリズム感と歌心溢れるフレージングでバンドの魅力を際立たせている松原哲也のベースプレイはここでも冴え渡り、石谷拓人のプログレバンドかフュージョンバンドを彷彿とさせるテクニカルで力強いドラミングとの組み合わせは、リズムだけ聴かせるパワーを持っていましたが、更にそこへ重なる野仲幸一郎のトランペットもスキルとエモーションを兼ね備えた見事なブロウを聴かせてくれるという、どこを切っても聴き逃せない充実度でした。

そしてトリは、川端稔/青野忠彦/稲田誠によるAURORA。こちらも初見。
川端稔は絵画作品でしか触れたことがなかったのですが、この日耳にした氏のソプラノ・サックスの熱く激しい演奏は、絵画作品に勝るとも劣らない強力なエネルギーに満ち満ちていて、圧倒的でありながら人懐っこくもあり、息を飲むほどの巧みさとリリカルなメロディが同居していて、聴いていて不思議な高揚感に包まれました。

カラテカ・矢部を老け込ませたような氏の柔らかく飄々とした風貌に親和性があるのは、朴訥としたその歌声ぐらいですが、まるでとぼけたような調子と独特の言葉のチョイスの随所に辛辣さを込めているところが、やはり一筋縄では行かないところ。

楽曲は時にアーリージャズや古い歌謡曲を彷彿とさせるポップさとコンパクトさを備えながら、川端氏が強烈なブロウを決めると、稲田誠はエレクトリック・ベースでアンプが飛ぶほどの爆音ソロを奏で(後半で本当にベースアンプが飛びました)、青野忠彦はドラムセットがバラバラになりそうな壮絶なドラミングで対抗と、互いに一歩も引かない丁々発止のインタープレイで終始聴き手を圧倒するパフォーマンスを繰り広げていました。そこには生半可な懐古趣味や借り物感は皆無。演奏力に裏付けられた強烈なオリジナリティの塊が、客席に向かって鮮烈な音を発し続けていました。

曲中でソロリレーをやる曲もあり、彼らの演奏力からすれば、即興だけで10分でも20分でも音を紡ぎ続けることが出来そうにも思えますが、あえて各曲をコンパクトなサイズに収めているところに、分かりやすさ、伝わりやすさを意識した「ポップスとしての覚悟」が感じられるようで、それは、川端氏の歌詞にある言葉の分かりやすさ、通りやすさにも通じているように思いました。

こんなすごい音楽があった/音楽家がいたということを知った喜びと、そんな音楽を今まで知らずにいたことの悔しさがない交ぜになって、完全に言葉を失ったまま帰路へ。もっと広く、もっと沢山の人に聴いてほしい、そう思わざるを得ない素晴らしい演奏でした。

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