アフタヌーンショウ#4 at 喫茶コマヤ (Hyogo)

この日は喫茶コマヤで行われた「アフタヌーンショウ#4」に行ってきました。

komaya.jpg

喫茶コマヤは初めて行きましたが、心地よい雑然さがいかにも「茶店」らしい良い雰囲気。楽器の鳴りも悪くなかったですが、その雑然とした小物が大きい音を鳴らした時にビビっていて、小物の並ぶ壁際の席にいたので若干気になりました。あと、ステージが中二階のようなところになるんですが、広くない上に正面ど真ん中が階段になっているので、近い場所で観ようと思うと必然的に左右どちらかに寄ってしまい、音響的なベストポジションが取りにくかったのも、構造的な問題とは言え少し残念だったところ。

この日の出演者はNRQ、水谷康久トリオ、井上智恵カルテットで、トップバッターは水谷康久トリオ。サックス、コントラバス、エレクトリック・ギターという特殊な編成での、その編成に違わぬ一筋縄ではいかない演奏。

水谷氏のサックスの抽象的なメロディに挑むように絡みつく稲田誠のベース、そしてそこへスケールもコードも外したところから音を投げてくる半野田拓のギター。しかしそのギターの音がなぜかぴったりと合う時があり、時には演奏を引っ張る瞬間すらあります。ギターで音を奏でながらも、まるでそれはアドリブを繰り出しながらわざとリズムをずらしたり曲全体の進行方向を決定づけるドラマーのようでした。ギターのサステインがシンバルの残響音のように聴こえるほど。僕の席が半野田氏のそばだったこともあり、その予測不能なプレイ(突然稲田氏のベースに頭突きをした時にはびびりました)に終始釘付けでした。

続いては井上智恵カルテット。オルガン(井上氏)、コントラバス(稲田氏)、ドラムス(加納佐和子)にチェロ(黒田誠二郎)を加えた編成で、3月に観た泊との共演の時とはメンバーの数も内容も違っていました。

井上氏のオルガンは、跳ねたり走ったりシンコペーションしたりすることなく、拍の表で丁寧にメロディを奏でるようなプレイで、絶妙なブレイクで空気をピリッとさせながらも、ミドルテンポで響く音は土曜日の昼下がりにぴったりのまどろんだ印象。プログレのようにも聴こえ、ジャムバンドっぽくも感じ、エキゾチックサウンドのようなトロピカルな雰囲気もありつつ、そのどれとも言い切れない、力強いリズムと常温の味わい深いメロディが実にクールな演奏でした。

最後はNRQ。こちらも3月のイベント以来でした。あの時は吉田悠樹の二胡が最も印象的でしたが、この日は僕の席からは二胡が遠く、中尾勘二が近かったので、こちらの印象がより強かったです。

中尾氏はドラムセットに座りながらも、クラリネットも吹くしサックスも吹く。そしてその管の響きが、心揺さぶる圧倒的な素晴らしさ。この日の新曲として演奏された中に、クラリネットのソロと二胡のソロがリレーされる曲があり、間近で生音で聴いたこの時のクラリネットのソロには目頭が熱くなりました。そして後半、井上氏と加納氏をゲストに迎えての大原裕のカバーで吹いたサックスのあまりの郷愁感に、胸からこみ上げてくるものがありました。

NRQ、そして同じく中尾氏を擁するNewdayもそうですが、彼らが素晴らしいのは、中尾氏のバックグラウンドを継承しながら、それに比肩する演奏力と独創性溢れるオリジナル曲を持ち、しっかりと現代に鳴らす必然性のある「新しい音楽」を生み出していることでしょう。この日のNRQも、過去への敬意と貪欲な探究心・創作意欲が音の端々から溢れ出ていて、改めてそのオリジナリティとバンドとしての強度に圧倒されました。

これは片想いなどにも言えることだと思いますが、やはり首都圏にはこういった温故知新の文化を有しながらも模倣に終わらない、創造力に長けた若いバンドが多いなぁ、という印象があります。この辺りは、根無し草の象徴でもある「関西ゼロ世代」というクラスタが存在した関西との大きな違いなのかも知れません。

まあ関西じゃなくても、昔の有名曲のカバーばっかりやってるような人や誰かの二番煎じみたいな曲でご機嫌伺ってるようなミュージシャンたちには見習ってほしいなぁと思います。

のーまんずらんど
のーまんずらんど NRQ

マイヘ゛スト!レコート゛ 2012-01-25
売り上げランキング : 87791

Amazonで詳しく見る by G-Tools

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください