この日は大阪ニット会館2階・軽音楽室で行われた「アフタヌーンショウ#2」を観に行きました。
ニット会館というビルの一室を「軽音室」と称してのイベントでしたが、入り口ドアに吸音材らしきものが貼ってある以外は特に「軽音」向けに音響的に手を加えた感じはありません。しかし音響的には、生音の残響を吸収しながらも音を殺すほどに吸い過ぎない適度なバランスで、この日のアクトは環境にぴったりマッチしていました。
始めはPOPOの登場。トランペットを吹く寸前に息を吸う音、鍵盤を叩くカチャカチャという音も聞こえるニット会館の音響でのPOPOの音は、心地よいまどろみ感をたたえたふくよかな音の感触と、音の揺らぎや引っかかりをど真ん中にごろんと投げるストロングさがより鮮明に伝わってきます。
まったりと音に乗せて体を揺すりながらも、江崎將史のトランペットソロが微妙に後乗りだったりするところにドキッとさせられたり、ふと気づけば山本信記と江崎氏の手が止まっていて喜多村朋太のソロ演奏になっていたりと、端々に聴き所があり、カバー曲でもPOPOとしか聴こえないそのオリジナルなアレンジや音色のすごさ含めて、昼下がりの穏やかな時間にも関わらず、瞼が重くなることは全くありませんでした。
続いてはエマーソン北村の演奏。氏のソロ演奏を聴くのは初めてでした。2台のキーボードを小型のリズムマシンに合わせて演奏するというスタイルでしたが、音色がオルガンだったからというだけではなく、その穏やかな風貌が反映されたようなまろやかな演奏はPOPOと相通じるものがあり、まるでこの日が初の対バンだとはにわかに信じがたいほど。しかし「似ている」というのとはまた違っていて、北村氏の演奏も、カバーとオリジナルを、ジャンルも時代も超越してごった煮にしながらも、決して「○○っぽい」という偏りやブレは起こさず、どんなスタイルのどんな曲をどんな双方で演奏しても「エマーソン北村の曲」になっているという個性の強さなど、方法論や目線は違えど、根源的には共通するメンタリティなのかな、と思わせる繋がりを感じさせるものがありました。
そんな曲の中で1曲、猛烈にMUTE BEATの音を出していたカバー曲でのダブ・レゲエスタイルの演奏があったんですが、この時ばかりは、とうとう生で観られなかったMUTE BEATの、紛う方なきあのキーボードの音がそのまま鳴っていたことに心底興奮してしまいました。
最後は、POPOと北村氏によるセッション。2曲演奏していましたが、冒頭から、POPOにしては珍しく江崎氏がトランペットの管をバラして音響的アプローチをしたり、即興でフレーズを重ねて行く場面があったりと、普段目にすることのないスポンテニアスな側面が全面に出ていてかなりスリリングでした。
2曲目では、演奏中に北村氏が喜多村氏(おなじキタムラだということにこの日初めて気づきました)のところまで行って一緒にオルガンを弾き、すると喜多村氏は席を立って北村氏のキーボードに移って弾き始め、最後まで二人が入れ替わったまま演奏していました。北村氏のアドリブだったようですが、喜多村氏が演奏中に動いているところも、立って演奏しているところも初めて観ました。
あっという間の3時間弱。穏やかながらもパワフルでエモーショナルな午後のひとときを過ごさせてもらいました。
カルフォルニアソウル | |
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エマーソン北村
コロムビアミュージックエンタテインメント 2009-11-24 |