この日は旧グッゲンハイム邸で行われた「とんとこ Vol.2」に行ってきました。
JON(犬)、倉地久美夫+稲田誠+山路知恵子のツーマンで、スタート時間も14時から、という大変ヘルシーなイベント。
JON(犬)はこの日、旧グにある105年前に製造されたヤマハ(当時「山葉」)の足踏みオルガンでの演奏。独特のまとわりつくような震える音が昼下がりのほっこりした空気の中で、ぺたっとした歌声を乗せながら心地良く漂います。西川文章によるクリアでタイトな音響の中で、抜けていくのではなく、オルガンの周囲に溜まりながら渦巻いている音を聴きながら身体をゆらゆら揺すっていると、だんだんまどろんできて……いやはや、気持ち良過ぎました。
倉地久美夫+稲田誠+山路知恵子の演奏は、JONとうって変わって緊迫感みなぎる演奏。倉地久美夫は初見でしたが、出だしから「ラブストーリーは突然に」の超絶なカバーで息を飲みます。太く厚い声で浪々と歌う声は力強くそれだけで魅力が溢れていますが、その歌うリズムは異様な間合いと抑揚で奏でられ、重なるギターの音も即興のように断片的に折り重ねられます。このひとつひとつが人を食ったような作為的な嫌らしさを一切感じさせない迫真の音なものだから、聴いていてぐいぐい引き込まれ、身じろぎするのも惜しいとばかりに手足をこわばらせて見入ってしまいました。
バックを固める稲田・山路の演奏も攻撃的で、かつ押しと引きで互いに牽制し合いながら次の手を構えて睨みを利かせているような緊張感みなぎるものでした。フリージャズ的にリズムを重ね、時に沈黙を恐れず大胆に「間」を作り、しかし曲として瓦解すること無く絶妙なバランスを保ちながら鮮やかに疾走するその演奏は痛快無比。今まで観た二人の演奏の中でも最も素晴らしかったように思います。
演奏中の緊張感は曲終わりに食い気味に入る倉地の締めの言葉と少し長めの楽しいMCで一旦切れますが、神妙ではない、どちらかと言うとスポーティな緊張感のため、まるで聴いているこちらも運動の後の休憩で、緊張による疲労の心地良い余韻を味わいながら椅子に座り直し、ゆっくりと空気を吸い込む時間のようでした。
旧グでのイベントは16時前に終わり、この後電車で一路京都は木屋町UrBANGUILDへ。
I heard the ground sing | |
倉地久美夫
インディーズ・メーカー 2003-09-30 |