今日は大阪ブルーノートに菊地成孔クインテット・ライブ・ダブを観に行きました。
去年の5月にも同じブルーノートで観ましたが、カヒミ・カリィやストリングスといったゲスト参加の無い純然たる「クインテット・ライブ・ダブ」は、難波タワーのインストア(この時はジャージで演奏してましたね)以来ですから、本当に久しぶりになります。
演奏は、しかしこれまで以上に「静謐」という言葉が似合う、ゆっくりと、ひとつひとつの音を丁寧に空間に描写し、それをパードン木村が鮮やかに、間違いのないタイミングでフロア中を跳躍させる、優雅で官能的、そして一部の人たちには強烈に眠気を誘うステージ(テーブルの前で船をこいでいらっしゃる方を何名かお見受けしました)でした。
お馴染みの「Over The Rainbow」、そして何度聴いても全身に電気が走るほど痺れるテーマでのアドリブ「You Don’t Know What Love Is」、この日初めて生で聴いた「Parla」。暗めにセッティングされた照明の中で恍惚とするような演奏が繰り広げられる中、インパクト大だったのが、変則ギアを搭載したウェイン・ショーター「pinocchio」。他の曲のムードに調和したスローテンポから始まって、スピードを自在に変えて疾走する様は、素材が名曲であること、そしてそれまでのミニマルな展開とのコントラストとも相俟って非常にスリリングで胸の空くような演奏でした。
アンコールでは、長大で馬鹿馬鹿しくて聴き応えのあるMCから、菊地氏歌唱による「Sweet memories」。彼は、あまり歌が上手い方ではないので、歌い出しの時にいつも変な不安がよぎるんですが、今回もやはり「大丈夫かな」という気持ちになりながらイントロのピアノを聴いていましたが、やはり声はとても魅力的なので、この松田聖子のヒット曲も魅力的に仕上げていました。
1年半ぶりのクインテット・ライブ・ダブでしたが、やはりブルーノートの音響との相性も素晴らしく、時間の短さによる飢餓感も含めて本当に贅沢で素晴らしいショウだったと思います。
これだけいい音で素晴らしい演奏を聴いてしまうと、やはりペペ・トルメントのようにアルバムのリリースも期待したくなってしまうんですが、同時に、これはひと時の逢瀬こそが一番官能的なのだから、レコーディングされたもので代用したり消耗したりしない方がいいのかもな、とも思った次第です。
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Degustation a Jazz 菊地成孔 イーストワークスエンタテインメント 2004-04-07 |