今日は、大阪ブルーノートに菊地成孔クインテット・ライブ・ダブを観に行きました。
一時期、頻繁に行っていたブルーノートですが、ジャズを殆ど聴かなくなってから足を運ぶこともなくなり、しばらく振りに来てみれば場所も内装も変わっていました。
以前はフロア内に図太い柱がどかんとそそり立っていて、慎重にテーブルを選ばないとステージが嫌な隠れ方をしそうな感じでしたが、現在は柱も無く(じゃあ、あの柱は何だったんだ。僕はてっきり、ブルーノートの音が良いのは、あの柱が絶妙な反射をしているのかと思っていたのに。いやだって、クアトロとかも柱あるけど音が良いから)、最後方のソファの席からも非常に見晴らしが良かったので、ソファ席で鑑賞。これ、正解でしたね。カウンター席だと前のめりの姿勢が必然ですし、テーブル席だと狭いスペースで横に向いて観ないといけないんですが、ソファ席はステージと向かい合わせで、背中はクッション付きなので、テーブルに肘を付くのも、ふんぞり返って観るのも自由。しかもソファだから座り心地も良く疲れない。もうすっかりVIP気分でした。
演奏の方は、「Concert Degustation a Jazz」と銘打ってはいますが、特に「Degustation a Jazz」になぞらえているわけではなく、ゲスト・ボーカルとして3曲参加したカヒミ・カリィも、ポエトリー・リーディングが1曲あった以外は「The Look of Love」、「Crazy He Calls Me」と、「南米のエリザベス・テーラー」収録曲でしたし、全体の雰囲気も、「You Don’t Know What Love Is」、「Isfahan」、「ラス・メイヤー、聞いてくれ」という流れよりも、「Over The Rainbow」から始まるクインテット・ライブ・ダブのセットの流れの印象の方が強く、個人的には去年のインストアが時間的に物足りなかった分、凄く楽しめました。
去年はUAとの共演がメインで、歌もの中心のセットだったので、必然的にダブが弱めで、「クインテット・ライブ・ダブ」としての魅力は堪能しきれなかったという感じだったんですが、今回はディレイかけまくりなうえ、演奏も残響音を効果的に響かせていました。この官能的なダブ.サウンドが、ブルーノートのリッチなサウンドに見事にハマっていて、「You Don’t Know What Love Is」では(適度に回った酒も手伝って)、思わずため息がこぼれてしまいました。あまりに気持ち良くて、ソファに横になりながら聴きたい、という衝動を抑えるのが大変でしたが(いやだって、あんなエロいサックス、寝ながら聴いたら、そりゃ贅沢でしょ)。
ストリングス・カルテットは、ちょっとオマケっぽかったかな。どうせだったら「ルペ・ベレスの葬儀」とか演ってほしかったです(無理かな。なんか綿密なミーティングをしていたようにも見えなかったし)。カヒミさんの声はやっぱり、スタジオ盤での「卑猥なほど高解像度で捉えられた声」で聴くのが一番気持ち良いです。ライブ・ダブにしたって、ディレイやリバーブばかりじゃなくて、局地的にデッドな音で鳴らしたりとか……無理かな。
何はともあれ、とても贅沢で充実したステージでした。90分はさすがに短いですが、デートコースペンタゴンじゃないんだから、3時間やる、なんてのはエレガントじゃありませんものね。
アンコールからは、いつもの菊地成孔に戻って喋りまくっていた(しかも若干スベり気味)のも、嬉しいオマケでした。
う〜ん、また観たいなぁ。デートコースペンタゴンもいいけど、もっとライブ・ダブでも頻繁に関西に来てほしいぞ(本ばっか書いてないで)。
Degustation a Jazz 菊地成孔 イーストワークスエンタテインメント 2004-04-07 |