ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」 at 大阪ステーションシティシネマ (Osaka)

この日は大阪ステーションシティシネマロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」を観に行きました。

劇場入り口

イギリスのロイヤル・オペラ・ハウスで行われたオペラ、バレエのパブリックビューイングを劇場で行うというプログラムのシリーズで、チケット代は3,600円と通常の映画の2倍。でも先週生で観たばかりだったのと、これなら娘(6歳7ヶ月)を連れて行ってもいいな(通常の映画の2倍とは言え、生の観劇の半分以下なので・中学生以下は2,500円)、ということで娘と行ってきました。

上映回数が一日一回、しかも朝9:10からということで、朝起きてすぐ出かけ、梅田のパン屋さんで朝食。朝だとパンも焼きたてでとてもいい気分。

その後ルクアまで来るも、映画館以外はオープン前で、エレベーターかエスカレーターで上まで行かないといけないようだったので、エスカレーターを使ってみました。外の吹きさらしの中、3フロア一気に上がっていくエスカレーターの怖さに足がすくみましたが、娘は余裕で後ろ振り向いたりしてました。

映画館のある11階に到着すると、朝早くから他にも上映作品があったようで、ロビーは結構な数のお客さんがいました。チケットを発券し、ポップコーンを食べながら、開場時間までロビーのスクリーンに映し出される映画の予告編を鑑賞。スティーブ・ジョブズの映画が意外に面白そうでした。

開場時間になり、館内に入ると、ロームシアターで観た時と同じか、それよりも更に女性客が多い印象。座席も6割程度は埋まっていそうでした。

上映が始まると、司会進行の男性と女性によるオペラ・ハウスのロビーでのお喋りから始まります。どうやらこのパブリックビューイング、海外ではライブ配信で観るのがメインのようで、実際に上演されたクリスマスシーズンであることをアピールしつつ、本番までの時間を舞台裏の映像やインタビューなどでつないでいました。この間、劇場の客電もついたまま。

いよいよ開幕、となり、オーケストラピットに指揮者の姿が現れ、序曲が始まると、スクリーンの向こうで証明が落ちていくのと併せて、劇場内の客電も絞られていき、やがて真っ暗になりました。音響的には、生のなめらかさには到底敵わないですが、その分間近で鳴っているような鮮明で力強いサウンドは聴き手に過度の緊張感を与えず、リラックスして楽しませてくれます。

冒頭からドロッセルマイヤーの家が登場し、クリスマスパーティで始まるものと思っていたので意表をつかれます。その後、部屋の中で壁にかけられた人物画に向かって嘆くような動きをしたり、くるみ割り人形が彼の甥であることを示唆するようなシーンもあり、その後の展開の伏線がこれ見よがしに引かれています。

クララは1幕も2幕も同じ人でしたが、前半では彼女の兄を務める子供の役者との身長差が違和感。彫りの深い健康的な美女(しかも独り汗が光って目立っていた)だったので余計浮いて見えました。まあ綺麗し群衆の中でも目が行きやすいので良かったんですけど。

ネズミたちとの戦いの後、クララは眠る時のナイトウェアのような肌着のような姿のままくるみ割り人形と共にお菓子の国へ向かい、様々な踊りを二人で楽しく眺めたり一緒に踊ったりします。この、夜から現実の世界に戻るまでのシーンが、ドロッセルマイヤーによって見せられているような演出になっているのも、冒頭からのつながりです。

ラストシーン、表に出たクララに青年が道を尋ね、建ち去り際に青年は胸の勲章に目をやり、クララは胸元のペンダントを握ります。いずれもお菓子の世界で二人が貰ったもの。ここで溜息が聞こえてくるようなうっとりした表情を浮かべるクララが色っぽくて美しくて本当に素晴らしかったです。

そして最後はドロッセルマイヤーの家にその青年、くるみ割り人形に変えられていたドロッセルマイヤーの甥が帰ってきて二人で抱き合うシーンで幕を閉じます。

というわけで、バレエでスタンダードとなっている筋書きを、より原作に寄せて、具体的に分かりやすく演出した舞台になっていたんですが、巧みなカメラワークで表情や動きを追う映像として劇場で観るにはうってつけの内容と言えるかもしれません。やや説明的に過ぎる感じも無くはありませんが、抽象的過ぎて陳腐になってしまうよりは遥かに良く、各人物の存在感、説得力が非常に厚みを持っていたように思います。

その存在感、説得力を支えている要素として、セットや衣装も大きく貢献していました。舞台裏のレポートでも、同じ衣装やセットを何十年も大事に使い続けているという説明がありましたが、外への持ち運びを想定していない作り込んだセットは、いくらカメラが寄っても手抜きや誤摩化しを感じさせませんし、衣装も華やかながら落ち着きのある上品さが伝わってきます。

振付も少し抑制された雰囲気で、派手さよりも全体の完成度に拘ったのかな、という印象。だとすればそれは功を奏していたように思います。

幕間の休憩時間は客電が点き、オペラ・ハウスのお客さんが休憩のために席を立つ様子を俯瞰で映しながら映画館の方でも皆が休憩に入るというのがとても新鮮で、実際にバレエを観に来たという雰囲気とまではいきませんが、同時間にライブ中継を観ているような感覚はありました。その間、画面にはハッシュタグが表示され、ライブ中継時にリアルタイムで投稿されたものであろうツイートが画面に次々と表示されていたのは面白かったです。

デジタル・プログラムが無料で見られるという案内が出てたので、ロイヤル・オペラ・ハウスの公式サイトに行って観てみましたが、なかなか見応えのあるコンテンツが満載でした。読み物にフォトギャラリー、360度ビューできるものも含む様々な映像コンテンツ……とかなりのボリューム。映像を通じてドネーションを募ったり、こうやって色んな国で上映したり、積極的に新しいテクノロジーやアイデアを取り込んで精力的に活動しており、バレエ団においては後継者育成も抜かりが無いようで、この辺りは伝統ある劇場だからこそ可能なことかもしれませんが、日本でも学ぶべきこと、導入できることは色々あるんじゃないかな、と思わずにいられません。バレエ団もドネーションを募っているし、Amazonのオリジナルコンテンツ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」でも“NYフィルは今経営難だ”とオーナーが嘆くシーンがあるくらいなので、クラシック音楽の世界が抱えてる問題はどこの国でも近しいんじゃないかという気がしました。

ともあれ、途中休憩を含めると上映時間は2時間半強。さすがに6歳児には長過ぎたようで、最後の方は少しダレてしまいました。でも後で、以前観たYouTubeの動画と演出が違っていた点を話したりメロディーを口ずさんだりしてたので、彼女なりに楽しんでもらえたかな。僕はもう大満足なので、今度はオペラも観たいなと思うんですが、こちらはまだ6歳児には難しそうです。

ワーナーミュージック・ジャパン¥ 1,851

(2016年02月09日現在)

5つ星のうち4.5
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