ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー「くるみ割り人形」 at ロームシアター京都 (Kyoto)

この日はロームシアター京都に、ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー、京都市交響楽団による「くるみ割り人形」を観に行きました。

ロームシアター京都メインホールのエントランス

今年一月に、京都会館が改修に伴ってロームに命名権を売り、新たな劇場として再オープン。そのオープニングイベントの一環として行われた公演ということで、ロームシアターも初めてならば、生で本格的なバレエを鑑賞するのも初めて。色んなワクワクを抱えながら会場へ。

……と、京都会館時代からのネックですが、立地的にバスじゃないと行き辛い場所で、烏丸から市バスを利用したんですが、到着までに10分遅れ、四条通も激混みで30分近く遅れて到着。本当は新しく出来た蔦屋書店もゆっくり見たかったんですが、中にも入らずそそくさと会場入り。

建物以外の敷地の雰囲気は以前のままで、ロームシアターも木を基調にした落ち着いた雰囲気だからか、すっかり景色が変わって……という印象よりも、懐かしさの方が強く感じられる場所になっていました。忌野清志郎の完全復活祭以来だから本当に久し振り。

ロビーは、ガラス張りで周囲の景色がよく見え、京都らしいのどかさにほっこりします。

客層は、年配の人でびっしり……という感じではなく、子連れの奥さんも多く見かけ、恐らくバレエを習っているのであろうひっつめ頭の少女もいました。全体的に女性が多く、着物姿の方も見かけ、舞台に負けじと客席も華やかでした。

ホ―ル内に入ると、オーケストラピットからひっきりなしに練習している楽団の音が聴こえてきますが、思った以上にピットが深くて、最前列じゃなければハープの先っちょしか見えません。

序曲が始まるも、舞台はまだ幕が降りたまま、演奏する姿は全く見えず、暗い中で、少し籠ったような演奏を聴いているのはなんとなくすっきりしない気分。とは言え、音楽の素晴らしさ、十分に響いていないとは言え、左右のナチュラルな距離を鮮明に感じる音場感など、やはり気分は高まってきます。

幕が開くと、招待客が続々とシュタールバウム家に集まるシーンから始まり、やがて豪奢な室内へ。ドロッセルマイヤーの奇天烈な動きや子供たちの踊りが展開されますが、茶番じみた展開はあまり見ていて面白味がなく少々退屈。子供たちの踊りは音楽と噛み合っているようないないような感じがしましたが、それは普段聴き慣れている音楽では聴こえない“足音”が結構な大きさで聴こえていたのもそう感じた要因かもしれません。聴き慣れているで言えば、全体的にテンポも少し遅かったのですが、しかし何しろ音楽は終始素晴らしいので、気になるのは一瞬だけ。ピットから聴こえる違和感も、じきに慣れました。

クリスマスパーティが終わって第1幕が終了。休憩を挟み、くるみ割り人形とはつかねずみの王様の戦いへ。緊迫したシーン。しかしライフルの音が何とも間抜けな音でちょっと残念。

そしてくるみ割り人形とマーシャが大人の姿になり、いよいよ美しい踊りが展開され、京都市少年合唱団が活躍する“雪片のワルツ”へ。可愛い衣装と美しい踊り、透明なコーラスにすっかりとろけてしまい、思わず涙が出てきそうになりました。

2度目の休憩後の第3幕からは、夢の世界のマーシャ共々、こちらも夢の世界に入るような気分。何せ、幕が開いて華やかな舞台とダンサーたちの桃色の衣装が目に入った途端、客席からうっとりとした溜息とも歓声ともつかないような声が上がるほど。これって、マーシャが様々な踊りで歓迎されるという体で、来乗客がお菓子の国で歓迎さてれるんだな、ということが、字面だけでは当たり前のようなことなんですが、実感として、まるでリアルにお菓子の国に来たような気分で、身も心も夢の世界に来たような気分で感じました。一つの踊りが終わる度にため息をついて拍手して、うっとりと見入ってまた溜息……。客観的に舞台を見ている、という感覚が殆ど無くなっていましたが、この没入感は、ピットでの演奏の様子が見えてしまったらかなり薄れていたかもしれません。

エピローグで夢から覚めたマーシャが人形を抱えて舞い踊る姿も夢見心地で眺め、何度も繰り返されるカーテンコールも現実離れした気分で味わい、終演後もどこかふわふわした気分のまま会場前のバス停の列に並びました。振り返ると、蔦屋の前で余韻醒めやらぬ少女が踊っていて、いやはや何とも良い気分でした。

チャイコフスキーによる音楽は、音楽だけで聴いていてもとても素晴らしいし、正直音楽だけで聴く方が良い、と感じるシーンもありましたが、特に後半にかけて夢の世界に連れて行かれる感覚は、生のバレエの舞台でなければ味わえない特別な体験でした。こうなると、他のバレエも生で体験したくなりますね。あとロームシアターは、舞台上で演奏した場合の音響も、近いうちに体験しに来たいです。

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