この日は神戸聖愛教会で行われたザ・ロイヤル・コンソートによるバッハ「フーガの技法」演奏会を観に行きました。
会場は敬虔な雰囲気漂う教会。座席は映画館のような折りたたみで、背が垂直で硬めの、姿勢の崩れにくい快適な座り心地。座席の前は聖書を置くためなのか少し出っ張りがあり、その上には普段説教を聴くためのものらしいスピーカーが。足下には新幹線の座席のような網製の物入れもあり、実に快適です。
祭壇に当たる場所がステージになり、その上手側にプロジェクターで映写されたスクリーンがかけられていて、演奏に併せて各曲目の解説を映写するという親切な試み。
客層は、平均年齢かなり高めで、女性が多い様子でした。
この日の演奏プログラムは以下のとおり。
Contrapunctus 1
Contrapunctus 2
Contrapunctus 3
Contrapunctus 4
Contrapunctus 5
Contrapunctus 6
Contrapunctus 7
〜休憩〜
Contrapunctus 8
Contrapunctus 9
Contrapunctus 10
Contrapunctus 11
Contrapunctus 12
Contrapunctus 13
Canon alla Ottava
Canon alla Decima Contrapunto alla Terza
Canon alla Duodecima Contrapunto alla Quinta
Canan per Augmentationem in Contrario Motu
Fuga a 3 Soggetti
〜アンコール〜
Vor deinen Thron tret ich
ザ・ロイヤル・コンソートはヴィオラ・ダ・ガンバを用いた演奏をする楽団ということで、2人のバス、そして一人が高域のトレブル、アルトを使い分ける形で演奏。6弦のバイオリン属のような楽器ですが、音色の違いはあまり分かりませんでした。
演奏に先駆けて、この日のゲストメンバーであるバイオリンの寺神戸亮による解説がありました(プログラムの解説も氏によるものでしたが、音楽がその昔、天文学と関連する学問として存在していて、星の奇跡と対位法とが結びつけて考えられていたということが書かれていて成る程と思ったり)。マイクからの音が小さく、なかなか聴き取りづらい音響でしたが、途中で軽く弾いてみせてくれた基本主題の音が明瞭に響いていたのでちょっと安心。
実際、演奏が始まると、ヴィオラ・ダ・ガンバとバイオリンによる四重奏の音は教会と溶け合うようにして自然な一体感を見せ、まるで教会が音楽を奏でているよう。それでいて覆い被さるような息苦しさは全くなく、静かに、優しく、しかし確実に耳に届くような力強さを持って鳴り響いていました。
もとより難解で複雑、しかしその緊張感が霧散するほどに美しく官能的な音の応酬に、気を許せばあまりの心地良さに夢の世界へと誘われ、神経を尖らせれば音の迷宮に翻弄されて迷子になりそう。今で言う「リミックス集」のような、同じモチーフをあの手この手で変奏し続けている、およそ生演奏のために用意されたとは思えない作品の集まりでありながら、いつまでも聴き続けていたくなるような中毒性を持っているのは、そのシンプルな構造によるものなのかメロディの秀逸さによるものなのか。いずれにしても、構造だけ聞けばシンプルながら、それが何故成立してしまっているのかが不思議でならない対位法の奥義の数々に完全に思考停止させられてしまったまま、ただただ代わる代わる追いかけてくるフレーズをその場その場で追い続けるしかありませんでした。
本編最後の未完成のフーガは、自筆譜通りのバッサリと途中で終わるような演奏ではなく、寺神戸氏のアレンジにより、最後に第一主題が現れて綺麗に完結する形で演奏されました。突如事切れるようなあの終わり方を期待していたので若干肩すかしを食らったような気分になりましたが、悪くはなかったです。
アンコールでは出版譜に付け足されていたコラール前奏曲を演奏。アンコールらしい雰囲気の違いと、教会にマッチしたメロディが心地良かったです。
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