この日はNamba BEARSで行われた「新春猫アレルギー祭」に行ってきました。
受付の貼り紙に、「会場のあちこちに猫がいるので、静かに、トイレもなるべく使わないように」との注意事項が。中に入ると、なるほどステージ上のギターアンプの真横で本物の猫がくつろいでいます。紐に繋がれてもいないので、ステージに転がる楽器をにおったりフロアに降りたりアンプの裏に入っていったりと自由気まま。「丸くなる」ためなのか、ステージにはコタツも置かれていました。
開演直前には、ぴかちゅうの飼い猫も投入。
演目は二部構成で、第一部は、数種類の楽器が並べられた中央に山本が座り、周囲に猫の餌を撒いて、ギターを抱えたまま、じっと気配を消して二匹の猫の様子を伺う、というもの。開場時からかかりっぱなしの雅楽のBGMの中、一切何も演奏せず、お客さんも全員静かに猫の動きを見て目を細めるだけ。
第二部では、山本も楽器を演奏。音を絞って、ギターや民族楽器、ノイズのサンプリング音などを演奏していました。主に猫の気を引くための演奏でしたが、静かに奏でられるギターの音色、メロディの美しいこと美しいこと。
猫も、さらにもう一匹増えましたが、こちらは終演までアンプの裏に隠れたままでした。
そしてコタツは、実は梅田哲也のインスタレーションの装置で、しかも梅田が中に入って操作するというもの。終演後も含めて最後まで姿を現さないまま、天井からぶら下がった餌の皿を上下させたり、離れた所にあるダンボール箱の上のモーターを回転させたり、コタツの中から魚の開きを突き出したり、果てはコタツから氏のインスタレーションでお馴染みの、スピーカーの回転する装置が登場するなど、あの手この手で猫の気を引いていました。
しかし二人が猫の気を引こうにも、ほとんど相手にせずに様子を伺う二匹。山本が猫じゃらしを振ると、猫らしいリアクションを見せたものの、餌に食いついた猫を撫でようと手を出すと、「しゅーっ」と歯を向いて威嚇されてしまっていました。
最後は二匹が睨み合いになり、ピリピリした雰囲気のまま、恐る恐る終了。
「猫をステージに上げてみるという、一種の実験だったんですけど、完全に翻弄されてしまいました」
「梅田くんのインスタレーションに救われました。これ、僕一人でやってたら意味不明ですから」
「実験って、そんな大層なもんじゃないですよ。まあ正月の朗らかな遊びですよ。東京の方の人はそういうのがわかんないんですよね。馬鹿ですから」
「今日のことは……そっとしておいてください。失敗だったかも知れない(笑)」
と、いつもの山本節で締められ(しかも猫アレルギーは他でもない山本本人だったというオチもついて)、この日のイベントは終了。
失敗か成功か、という判断以前というか、人前で金取って披露するクオリティに達していないんじゃないかと思えるような、これまたいつもながらのローファイぶりで、しかも、スケジュールでタイトルと「本物の猫」という文字を見た段階でその事には半ば気づいているにも関わらず、やはり「(良くも悪くも)他では絶対見られないような何かがある」という興味に抗えずに足を運んでしまっている自分がいるわけです。これが許されるベアーズという空間、山本精一という存在の面白さは、やはり今年も見逃せないなあ、と一人ごちるのでした。
プレイグラウンド~アコースティック | |
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山本精一
Pヴァイン・レコード 2011-01-19 |