11月18日・19日は、Namba BEARSで行われた、関西最強ドラマーたちの競演「DRUMANDARA2009」に行ってきました。
昨年に引き続き、今年も2日間の開催。昨年は土日開催だったのが両日とも平日になりましたが、僕はなんとか両日参戦。
初日のメンバーは、青野忠彦(ex.suspiria)、WATCHMAN(ex.MELT-BANANA)、砂十島NANI(BOGULTA)、雀吉(似非浪漫/COMPLETED EXPOSITION)、楯川陽二郎(boredoms/ゑでぃまあこん)、西原ジジ(ジジのほっぺたろまん)、ぴかちゅう(あふりらんぽ)、迎祐輔(オシリペンペンズ/ぼろんじ)、山田厭世観(ダダリズム)、和田シンジ(DMBQ/巨人ゆえにデカイ)。
開演時間ちょっと前に会場に行くと、まだリハーサル中。「19時半ぐらいまでかかりそう」とのことだったので、ゆさんと時間をつぶしてから再入場。
昨年も一日目は山本精一が指揮をとっていたそうですが、同じ形式でしょうか。ステージをはみ出して、円形にレイアウトされたドラムセットは昨年通り。昨年ゆさんが連続バンドの時に持って帰った指揮棒はリニューアルされ、先端に発泡のヘッドマネキンが付いたものに。昨年、中央に置かれていた和太鼓は、フロアタムに変わっていました。
赤いパーカーのフードを被り、ゴーグルのような眼鏡をした山本氏、そして10人のドラマーたちが、ステージ脇やら客席からゾロゾロと登場。山本氏が、スポットライトを浴びながら各自準備が整うのを待つと、たっぷりと間をあけて「じゃ、始めます」と異常に力の抜けたMC。思わず笑ってしまいました。
これも昨年同様、山本氏の指示に合わせて全員が一斉にシンバルを叩き始め、次のきっかけで一気呵成のブレイクビーツ。PA無しの生爆音が会場狭しと豪快に鳴り響きます。
山本氏はセンターからチラシの裏に書いた「右」「左」「ALL」などと書かれた紙を出し、「右」の時は右半分のドラマー5人が叩き、「左」の時は左半分のドラマー5人が叩く、そして「ALL」で全員参加、という指示を送ります。
他にも「Free」と書かれた紙を見せると数名のドラマーが挙手し、山本氏のきっかけに合わせて挙手したドラマーが叩き始めたり、矢印が円形に書かれた紙を出すと、時計回りに全員がシンバルを一発ずつ叩いてリレーしたり(山本氏の指示に合わせて途中で逆回転したり)と色々指示があったんですが、「A」「O」「AB」と血液型の書かれたもの、よく分からない記号が書かれたものもあり、いまいちルールの読み取れないところも。
指示棒をセンターから対角線上に示し、向かい合わせの二人だけに叩かせたり、一人だけ指名しソロを叩かせたり、そこにランダムに他のドラマーを足していったり、山本氏のアドリブでステージの構成はコントロールされていましたが、しかし、指示は基本的にON/OFFのみ。きっかけに合わせて、それぞれ思い思いにリズムを叩きます。ソロリレーの時も、流れを汲み取って叩くこともあれば、真逆のリズムで崩すときもある。全員が同じ方向に向かって叩き始めたかと思うと、わざと小さな音で叩いてみたり、全然違うリズムで波風起こしてみたりと、各自即興で判断していきます。山本氏の指示も、やや強引にスイッチの切り替えを行い、指示も少し大雑把なので、転調する際にもたついたりこぼれたりする人が出ながらも、数の力で前進せざるを得ないという躍動の中で「ゆらぎ」を起こしていて、まるで一つの生命体のような膨張/伸縮を起こしていました。
砂十島NANIがロボットダンスのような動きで叩いたり股間にカウベル仕込んだり、和田シンジが鬼の形相でゆっくりと振りかぶってゆっくりとドラムスティックを振り下ろす、という以外は、皆演芸的な横道に逸れることなく緊迫した即興に集中していました。
ラストは10台のドラムセットが全力で打ち鳴らされ、爆発しそうな轟音が渦巻く中、中央で山本氏は楽しそうに指揮棒を如意棒のように振り回しながらぐるぐる回り、勢いよく指揮棒を振り下ろすと全てのドラムが一斉に鳴り止み、約1時間のセッションは終了。恐らく最も良いポジションで一番楽しんでいたと思われる山本氏が孫悟空ゴッコのせいで一番息が上がっていたのがなんだか面白かったです。
続いて二日目。メンバーは、前日の雀吉、迎祐輔に代わり、岡本陽典(neco眠る/ダダリズム)、千住宗臣(ウリチパン郡/PARA)が登場。
前日と違い、開演時間までには開いていましたが、結局30分以上押しての開演。まあ、ベアーズの場合はお客さんの集まりも遅いしね。
指揮棒を立てていたフロアドラムは段ボール箱に変更されていました。
この日はまず、全員がドラムスティックを叩くカチカチという音だけでリズムを取りながらスタート。やがて、山本氏がマイクで「どらまんだらー」とおどろおどろしい声で開幕宣言。
指揮の紙は前日よりバリエーションが増え、シンバルのイラストを書いた紙で全員がシンバルワークに集中し、「SILENT」と書かれた指示で全員が静かなドラミングに、「8」「5」など、数字の指示の時は一斉にその数字の拍子での演奏……と、より制限がかかり、山本氏がコントロールする感じに。
しかし、「Free」の指示が、前日の挙手ではなく、全員の制限を解除した完全即興の指示となっており、前半は他の指示と半々ぐらいだったのが、徐々に「Free」のタイミングが増え、時間も伸びていき、後半は山本氏もほぼ中央にうずくまったまま下を向いて動かず「Free」状態が続きます。
WATCHMANとぴかちゅうが壁や柱を叩いてみたりするものの、意外に破綻せずに8ビートが続く中、揺さぶりをかけようとぴかちゅうがアイコンタクトで数名に指示を送り、激しいドラムロールを突っ込むと、そこから一旦大きな波が起こり、やがてまた8ビートに戻っていくという、まるで水面に広がる波紋のような展開が起こりました。ドラムセットも10台並べば、一つの有機的な「面」が出来上がるんですね。
ぴかちゅう、千住の掛け合いドラムソロで全体が大きく揺れ、この日最大のピークタイムが訪れると、山本氏から「8」の指示。すると、勢いに乗ったまま超高速BPMで全員一丸となって8ビートを叩き始め、最後、S字の書かれた紙の指示のもと指揮棒が力強く振り下ろされ、ステージは一瞬にして静寂へ戻り、あっさりと終演。この日も約1時間程度でした。
山本氏がメンバー紹介の後、「誰かいりませんか」と指揮棒を客席に向かって差し出すも、受け取り手はおらず。さすがにあれ持って電車乗るのはキツいです……。
これで2年目のDRUMANDARAは終了。昨年と比べると、ピークタイムが短く、全体的にムラもあり、やや物足りなさを感じないではなかったですが、それでもやはり、巨大なバケツで頭から勢いよくぶっかけられるような音の激流で理屈をねじ伏せるそのパワーは圧倒的でした。「すごいドラマーをたくさん集めたら、めっちゃすごい」というシンプルさが痛快きわまりない。
山本氏は「来年もやります」と言っていましたが、これだけ破壊力のある、贅沢かつ荒唐無稽なイベントは他になかなかないので、「大阪名物」として音楽ファンに定着するまで続けてほしいですね。もしくは、夏フェスに呼ばれるまで……かな。