NO NUKES 2012 at 幕張メッセ (Chiba)

7月7日と8日は、幕張メッセで行われた「NO NUKES 2012」に行って来ました。

【7月7日】

nonukes.jpg

開演30分ほど前に入場。まずは入口近くにある「さようなら原発1000万人アクション」のブースで署名。会場内は他にもグリーンピース他原発問題に関わるブースが立ち並び、さながら市民運動系のイベント。違うのは、運営が企業で、お客さんがものすごく多いところ。

会場はフードコートやブースと椅子・テーブルが並んだ休憩スペースと、ひとつのステージに二分されていて、ステージは演奏が終わるごとにセットチェンジが入るという流れ。バンドの演奏が始まる前に、小出教授や飯田哲也による原発問題についての話が毎回1分ほど流れます。

オープニングはASIAN KUNG-FU GENERATION。うちに嫁が持っていた彼らのCDが一枚だけあって聴いたことはあるものの、特に興味をそそられず、どれも同じ曲に聴こえてしまう程度の認識でしたが、ライブで観てもその感想はあまり変わらず。いいバンドだと思いましたが、好きではありませんでした。

またこれはPAの問題ですが、ボーカルが相当引っ込んだバランスだったので、声を張り上げるスタイルのボーカルでないと非常に聴こえづらかったのが音響的には最大の難点で、この後もYMO、Kraftwerkはかなり厳しかったです。

この後@takeshixさんとお会いし、しばらくいろんな話をしてました。クラブミュージックのこと、原発のこと、風営法のことなどなど。

今日の最初の目当て・SOUL FLOWER UNIONは、フェス仕様の代表曲縛りセットでしたが、中でもポリティカルなナンバーで固め、歌詞に原発や福島を織り交ぜる、言わば「怒りのソウルフラワー」モード。他のバンドがMCで原発について話しているのとは違い、MCはほとんど無しというのもいつものフェス仕様通りですが、出だしで「人生は祭りだ」と言いつつ「戦火のかなた」のラストでは「No Base!」と沖縄の基地問題に触れることも忘れず、それでも最後は「風の市」「海行かば、山行かば、踊るかばね」で目一杯踊らせ、しかしラストのリプライズするパートではシュプレヒコールをしてしまうという(しかも最初は「再稼働反対」なのに最後は「おっぱい、おっぱい」)……何十年もブレることなく音楽ともに社会にもコミットし続けてきたバンドだからこそのパフォーマンス。圧巻でした。

この後元ちとせの後(僕は喋ってばかりで観てませんでした)@nonomuraxさんにお会いし、少しお話しした後はHIFANAのライブへ。途中ラッパーのゲストも迎えての最高にエンタテインメントなステージにガンガン踊らされました。

この後もほぼずっと喋ってばかりで、このイベントの運営のこと、東京と大阪の抗議行動のこと、オーディオのことなど、色んなお話を聞かせてもらったり話したりしながらYMOまで待機、という感じ。

そしてこの日の二つ目の目当て・YMOは、オープニングでKraftwerk「Radioactivity」のカバーを披露。キーボードのフレーズやベースラインに「Trans-Euro Express」や「Showroom Dummies」のエッセンスが込められたような敬意あふれるアレンジにニヤリ。

この後は最近の曲へ……と思いきや、ここで「Fire Cracker」。生で聴くのは初めてだったんで嬉しい、と思いつつ、このサービスタイムはこれで終わりかな……などと考えていたら、次には聞き覚えのあるイントロから「Solid State Survivor」。興奮しつつもまだ自体が飲み込め切れずにいるお客さんに追い討ちをかける「中国女」を放つYMO。

まさかの「初期2枚縛り」の選曲に狂喜乱舞しながらも、さすがに最後まで初期2枚の曲しかやらないなんてことはしないんじゃないかと勘繰っていましたが、その後も「千のナイフ」(曲中、キーボードでメロディを奏でながら“YMO”、“NO NUKES MORE TREE”と表裏に刷られた旗を振る姿に胸が熱くなりました)、「Cosmic Surfin〜Absolute Ego Dance」、「東風」と初期ライブのアレンジにかなり忠実に演奏され、そして最後はイントロの電子音以外はアレンジもテンポもオリジナルに戻された「ライディーン」で締めくくり。この日のYMOは、遂に80年代に突入することなく終了しました。

LIVE EARTHでの「Yellow Magic Orchestra」宣言以来、期待しながらも叶うことはないと思っていた、夢にまで見た「初期のYMO」の復活。僕は観られなかった翌日のセットでは、「Fire Cracker」が「Lotus Love」「The City Of Light」「Ongaku」になり、「千のナイフ」「Cosmic Surfin〜Absolute Ego Dance」が「Riot In Lagos」「東風」になっていました(アンコールに「Solid State Survivor」)ので、完全な「オールドスクールの“Yellow Magic Orchestra”」はこの日限りだったわけです。

“テクノ”と言いながらもクリックをモニターしている以外はほとんど生演奏で、しかし楽曲はロックのようなフュージョンのような……というより、各曲のアイデンティティが強烈過ぎてジャンルに縛りようが無い上に、再結成以来少しずつ変化しながら固めていったバンドサウンドが個性的過ぎて、最早「得体の知れないかっこいいバンド」と化してしまった感がありますが、とりもなおさずそれはデビュー当時の彼らを見る周囲の目と同じものなのかも知れません。

年齢を感じさせないマッシブなサウンドとクラシックスだけで固めたセットリスト。トリのKraftwerkを食わんとするかのような「攻め」のスタイルに、79年のグリークシアターの伝説を重ね合わせた人は多かったのではないでしょうか。

生きる伝説の本気。寸止めしないフルコンタクトYMOの凄さ。正に感無量でした。

そしてトリはKraftwerk。2004年のZEPP TOKYOに観に行って以来なので8年ぶり(このライブレポート始める数ヶ月前なので当ブログには記録なし)でしたが、すでにYMOで満足し切ってしまっていて、やや落ち着いた気分で鑑賞。

しかしそんなのんびりした気分を打ち砕くように、1曲目「Radioactivity」で会場中を歓喜と興奮と悲哀の渦に。

スクリーンに映される日本語での「放射能」の文字、「チェルノブイリ」「ヘルスバーグ」「セラフィールド」「ヒロシマ」、そして二回目には「ヒロシマ」を「フクシマ」と歌うロボットボイス。歓声が上がった後、画面に映されるのは、歌詞の日本語訳。そして日本語で歌うラルフ・ヒュッター。そして「今すぐやめろ」と、あの優しく柔らかな声で歌われた瞬間のしかかってくる、処理し切れないほど大きく重い哀しみ。

この日のイベントはUSTREAMでも中継されてましたが、Kraftwerkだけ権利上の問題か中継されていませんでした。しかしこれこそ、世界の全ての人に同時視聴して欲しかったと思わずにいられない、音楽を使った強烈なグローバルメッセージでした。

2曲目は、前回の来日ではレパートリーに無かった「Metropolis」。しかしここでトラブルが発生し、ベース音だけ音がズレてしまい、ウラで弾いてるようなおかしな演奏に。結局最後まで修復できず、ライブ自体もこの後しばらくはやや精彩を欠いたものになってしまっていたように思います。

しかし後半では、こちらも前回の来日時に無かった「Computer Love」の四つ打ちキックのダンサンブルなアレンジ、お約束の「電卓」でテンションを高め、アンコールの「Musique Non-Stop」で大盛り上がりのうちに終了しました。

この日初めて生でKraftwerkを見た人も結構いたでしょうし、持ち時間が1時間程度で各曲も少し短めに纏められていたので、「Metropolis」のリベンジも含め、近いうちに改めてジャパンツアーを企画して欲しいものです。

【7月8日】

nonukes2.jpg

二日目は、「一日目を最後まで観ようと思ったら泊まらないと無理だし、だったら二日目も観たいな」ぐらいの感じだったので、わりとのんびりと過ごしました。

会場入りし、まずはcommmonsブースで風営法の署名。そして眼前を横切るもんじゅ君。

初見だったオープニングのBRAHMANはいわゆるミクスチャーという感じで、ハードコアの合間に純邦楽的なテイストが垣間みられますが、これ見よがしなものではなく、様々な要素がグツグツに込んで溶けてハードコアと混ざり合った感じ。断片的には聴き覚えのあるような部分も多いですが、演奏技術の高さ、説得力のある歌唱力、そして一本調子に陥らないコンポージング力が結束して揺るぎないバンドサウンドを生み出していました。

MCではこのイベント参加の際に渋谷陽一にさんざん振り回されたというエピソードで笑わせつつ、原発を取り巻く状況への怒りに満ちた熱いメッセージでオーディエンスを奮い立たせていました。

続いてのKen Yokoyamaは下ネタを織り交ぜながら、シリアスになり過ぎない程度のトークで場を和ませつつ、みんなが出来る範囲でこの問題にコミットすることを促していました。

彼らの音楽については、あんまり好きじゃない感じだったので特筆すべきことは無し。

9mm Parabellum Bulletは4年ぶりに観ました。演奏の完璧さも暴れながら弾いてるようなスタイルもやはり凄かったですが、作曲のセンスが若干古い気も。彼らってこんな80年代のアニメソングみたいな感じでしたっけ。

セットチェンジのタイミングでイベントの公式ガイドブックを購入し、座って読んでいたら、その購入していたブースがいつの間にか人だかりになっていましたが、もんじゅ君が来て自著のPRをしていたようです。

そしてこのイベント中最もオルタナティブなセッション・七尾旅人+大友良英+坂本龍一+ユザーン。

始めに七尾+坂本のデュオで「圏内の歌」を披露。祈るような歌詞に乗る、七尾旅人でしかあり得ない声と、坂本龍一でしかあり得ないピアノの音。黙祷するような、静謐とした瞬間でした。

メンバーが出揃い、「アブラカダブラ」という曲を演奏。しかし白眉はこの後、「Rollin’ Rollin’」の前に繰り広げられたインプロヴィゼーションでした。

旅人氏がMCをしている中、メンバーそれぞれが自由に音を重ね始めると、お客さんに向けて発声を求めます。会場を左右に二分し、ハーモニーを生み出すと、それは不思議なほどステージの音と美しく混ざり合い、会場中が優美な音の波に覆われます。

神秘的な空間となったお客さんを見渡し、「みんな今教授と共演してるよ」と嬉しそうに語りかけて自らも歌声を重ねるこの時の旅人氏はまるでシャーマン。彼の天才たる所以はきっと、この未知なる音楽との「交信力」なのでしょう。ある意味の超常現象が起きていました。

そして後になって気付き、改めて感動したのが、この日の彼が“群衆に”ではなく、会場の一人一人に寄り添うようにして語りかけているようであったこと、そしてそれは、彼が4年前に僕の嫁をいじっていた時の、ごく近距離のパーソナルなコミュニケーションとしてのオーディエンスとの関わり合いと、幕張の巨大な会場においても何ら変わりがなかったことでした。

この後のACIDMANで耐え切れずに眠り(つまらなかったわけではなく、ホテルのベッドだと早起きしてしまう体質なので睡眠不足でした)、僕にとってのこの日のメインアクト・忌野清志郎スペシャルセッションへ。演奏が始まる前に、原発問題についての話ではなく、RCサクセションの88年の映像から「ラブ・ミー・テンダー」が1曲丸々流されましたが、まるで事故とその後の国の対応を予言していたかのような(予見していたわけですが)歌詞にハッとさせられます。

バンドが登場し、バンドは「よォーこそ」でスタート。

教授を迎えての「い・け・な・い ルージュマジック」がこのセッションの目玉となっていましたが(ちなみに清志郎自身は最後のツアーでも演奏しています)なんと言ってもやはりトータス松本が素晴らしかったです。仲井戸麗市BANDに坂本龍一に、というメンツで、忌野清志郎のポジションに立つプレッシャーは計り知れませんが、決して忌野清志郎の物真似にならず、かと言って自身のスタイルでまとめ切ってしまわず、彼自身の持ち味を活かしながら楽曲に通底する「魂」の部分を捉えて放さなかった誠実さと熱意にオーディエンスはすっかり引き込まれ、彼が清志郎でないことを気にかける人は恐らくほとんどいなかっただろうと思います。終演後、周囲から「トータス良かったなぁ」「俺、泣いちゃったよー」という声をいくつも耳にしました。

ステージの進行が30分ほど押していたこと、観たいアクトは観られたこと、そして疲れていたことも手伝って、残りの山崎まさよし、斉藤和義は観ずに帰路へ。帰り際にまたもんじゅ君がブースにいました。

nonukes3.jpg

音楽のジャンルや世代ではなくイデオロギー縛りのブッキングだったこともあり、かなり客層もばらけていて(実体はかなりロッキング・オン寄りですが)、内容については好みも分かれたところがあるでしょうが、「脱原発」という旗印の下にこれだけの人が集まった(両日ともなかなかの集客だったと思います。チケット代が一日6,800円と、このクラスのイベントにしては安かったからというのもあるでしょうね)、という事実それだけでも大成功だと思いますが、お客さんの様子を見ていても、ただ音楽だけを聴きに来ているという人はすごく少なかったんじゃないかという感じがしました。原発のことについて議論を交わしている人も何度となく目にしました。それは首相官邸前に10万人規模の抗議活動が行われていること、そういったことにミュージシャンが率先して参加していることがバックグラウンドにあるんだろうと思います。関西で同じことをやったとしても、かなり辛い現実が待ち受けていたのではないでしょうか。

首相官邸前や関電前に集まって何になるのか。音楽に何かできることなんてあるのか。

それでもやること。思いを少しずつでも積み重ねていくこと。その先には散らばった細かな積み重ねがひとつになり、大きな波が起きるんじゃないのか……そんな希望を感じさせるフェスでした。

興味を失い、風化してしまうことが無いための、ひとつの楔が打たれた重要な日だったと思います。

YMONHK [DVD]
YMONHK [DVD] Yellow Magic Orchestra

commmons 2012-07-18
売り上げランキング : 629

Amazonで詳しく見る by G-Tools

Leave a Reply

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>