音遊びの会 at 京都芸術センター (Kyoto)

この日は京都芸術センター音遊びの会を観に行きました。

早い時間での開演・終演だったので、家族での観覧。しかし早いと早いで娘(楽ちゃん。2歳10ヶ月の女子)は開演中に昼寝の時間が重なる可能性もあり、雨の中でしたが早めに出発し、COCON烏丸で雑貨を見ながら寝かしつけ。

なるべく開演ギリギリまで寝てもらったのが良かったか、会場入りするとすぐに起床。ただ、寝起きでぼーっとした状態。

ステージにドラムセットが組まれ、その前にDJブース。客席はコの字型に組まれ、ステージ前のフロアはステージから続くメンバーの活動スペースに。コの字の上辺にメンバーが座っていました。

照明が落ち、開演。冒頭はなんとヒップホップでスタート。大友良英と永井くんのDJに合わせてラップ(というか絶叫)する音遊びのメンバー。

「さいしょはぐー、じゃんけんぽんっ」と着地点の無いじゃんけん大会が延々繰り返されたり、打ち込みのドラえもんのオープニング曲が突然始まったりと、無秩序さが音楽を飲み込む壮絶さに、娘も僕に抱かれながら唖然。

続いては、2、3人で数分間行うセッションを数セット。こちらは、無秩序にひたすら迷走するようなハチャメチャなことにはならず、一人一人が自分の音を大事に、セッションメンバーと一定の距離感を保ちながらも上手く共生したような、実に美しい演奏が続きました。ハプニングが起こるスリルではない、音そのものが煌めいて迫ってくるスリル。

途中、チンドン屋のようにメンバーが思い思いの楽器(や箒のような非楽器)を持って踊り回りながら合奏(大友氏は手の上に箒を垂直に立ててうろうろするだけ)していましたが、娘を抱いてステージ隅に立っていた嫁が、何故か合奏の渦の中に引っ張り込まれるというハプニングが。しかし、後のことを思えば、この程度のことは序の口だったわけですが。

意識が冴えてきて、手元で遊び始めた娘。飽き始めたかな、と思ったら、テニスコーツの登場に目を奪われます。

「ぶきゃーん(ギタ―のコードを鳴らした音のこと)、っていう、ブヤイアンメイ(ブライアン・メイのこと。最近、QUEENのライブビデオがお気に入りで、メンバー全員の名前を覚えてる)のギターと、おんなじ」と、植野隆司の持つアコギに釘付けに。「近くで見る?」という嫁の勧めに「うん」と言って前の方へ。

すると、そのままギタ―を弾く植野氏のそばまで歩み寄り、しばらく立ったまま眺めていましたが、植野氏と目が合うと、嫁の元へすごすごと退散。

途中休憩が入り、フロアに並べられる畳。そして、すっかり元気になった娘は会場中を駆け回り、僕らは夫婦で戦々恐々。

後半のオープニングでは、音遊びのメンバーのお母さん方(多分)が、ボウルの周囲をすりこぎで円を描くようにゆっくりとこすりながら、輪になってドローン合奏。その足下をちょろちょろ歩き回る娘。

その後、神妙な場の雰囲気は一転し、畳を使った相撲大会がスタ―ト。司会進行は細馬宏通、解説は大友良英。土俵上の進行は植野隆司、行事は貝つぶ。

音遊びメンバーとミュージシャンによる試合が続く中、梅田哲也によるロボット掃除機(ルンバ的なもの。でもケーブルが繋がっていて自由度が低い。でもカメラ搭載)も登場し、手に汗握る一番もあればどっちらけの脱臼試合もありつつ、何故か音楽本編よりもやたら盛り上がる会場。相撲というフォーマットって、誰でも知ってるし誰にでも出来るし、すぐに終わるわりに瞬間的にすごく白熱するから、結構ずっと楽しんで観れてしまうんですね。

そんな会場の雰囲気とは全く関係なく、娘は土俵のそばで踊ったりほたえたり。時折土俵に近づいて様子を見ていましたが、後半ではついに土俵に上がってしまい、一身に注目を浴びることに。そもそも気が小さいので、勿論すごすごと退散。

そして行事の貝つぶ氏が相撲を取り、負けてしまって倒れ込んでいる所に、土俵の上へと客席から大量に投げ込まれる座布団。

座布団は倒れる貝つぶ氏の上に降り注ぎ、座布団の山にすっかり覆い隠されました。

本物の大相撲のような座布団飛び交う景色に不思議な満足感を覚えていると、不意に娘がまたも土俵に上がり、何をするのかと思えば、貝つぶ氏に被さる座布団を一枚一枚めくり始めました。

助けようとしたのか、座布団の山を解きたかったのか、真意はよく分からないんですが、会場は「一人の少女が埋もれた行事を助けようとしている」ということで盛り上がり、当事者の僕ら夫婦は大爆笑。

相撲も終わり、ラストはメンバー全員での合奏で大団円。

前半のセッションでも感じましたが、音遊びのメンバーは、ただ自分の音をストレートに表現するのではなく、周りの音を敏感に察知し、寄り添い、支え合うようにして自分の音を出しているんですね。特に今回は、以前バラバラに鳴っていたものが、手を取り合って一点に向かって駆けて行くような結束力を強く感じました。勿論、最後の合奏も、永井くんのタクトに合わせたタイトなエンディングを迎えることが出来ました。

「音楽」とは何か。文字通りに言えば、相撲は音楽ではないですが、無音の音楽というものが存在するならば、音楽家がいれば、もしくは「音楽だ」と宣言すれば、それは音楽なのかも知れません。そもそも、音遊びの会を「音楽である」と定義する必要は無いのかも知れません。それは、言葉で実体化できない「何か」なのか。

少なくとも、その「何か」には、二歳児が入り込み、関わり、ハプニングを起こす余地があるようです。

まだまだよく分からないことが頭の中を渦巻いていますが、ひとまず、このような空間で、子どもと共にこれ以上無く楽しい時間を過ごさせてくれた「何か」と会場の全ての人に深く感謝し、この日のことを生涯最高の思い出のひとつとして胸に刻み込みました。

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5 comments on “音遊びの会 at 京都芸術センター (Kyoto)

  1. 音遊びの会の森です。

    公演にお越し下さりありがとうごさいました。
    素敵な日記にうるうるきてます。
    あぁ、終わってしまって寂しい…。
    当日の写真を音遊びの会のホームページに何枚か掲載するんですが、お嬢さんが写ってる写真も載せてもいいでしょうか?
    あまりに可愛い写真がたくさんあるんで、そのうち2枚ほど掲載したいんです。
    いきなり不躾なお願いですみません。
    いかがでしょうか?

    Reply
  2. 石黒亮

    こちらこそありがとうございました。大変貴重な経験をさせていただきました。
    当日の写真、もちろん使っていただいて結構です。
    あと、逆にこちらからもお願いが……。
    僕もあの日の娘の写真が欲しいのですが、現場は撮影禁止でしたから、当然ながら一枚も手元にありません。
    娘の写った写真のデータをメールかなにかで送っていただくわけにはいかないでしょうか。

    Reply
  3. 音遊びの会の森です。

    掲載の許可ありがとうござます。
    写真、たくさんありますよ〜。
    えーっと…
    メアドはどういう方法でお聞きしたらいいでしょうか?

    Reply
  4. とこさん

    ライブでの娘さんの存在・・・女神のようだった・・と音遊びの会メンバーはあちこちでつぶいています。わたしも、となりのトトロのメイちゃんが登場したのか・・と思いました。会場中の目が座布団を一枚一枚はがそうとするあの場面の娘さんに集中していたと思います。いまだに私の脳内映像にしっかりと録画されています(笑)素適な感想日記に感激です。

    Reply
  5. 石黒亮

    コメントありがとうございます。
    先日ネットで中継を観ていた知人に聞いたら、娘が座布団をめくっているところもしっかり写っていたそうで、後で聞いたので嬉しく思いましたが、当日それに気がついていたら僕は顔から火が出るような思いだったはずです(笑)。
    娘が2歳のこの時期に、地元の京都で、我が家の生活習慣に無理のない早い時間帯の、音遊びの公演があったこと、娘の暴走を皆さんが温かく見守ってくださったことに、深く感謝しております。

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