大友良英ダブル・オーケストラ at KBSホール (Kyoto)

この日はKBSホール大友良英ダブル・オーケストラを観に行きました。

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一般公募で編成された総勢140人のビッグバンドを、オーケストラのメンバーでもある大友、一楽儀光、ぴかちゅう、江崎將史、七尾旅人、渕上純子、さや、植野隆司が、二人ずつ左右に別れてタクトを振り、最低限のルールの元で即興演奏を繰り広げる……という壮大な企画。

“その瞬間”、“その場”でしか鳴ることのないアンサンブルの響きを生み出すための“ハプニング”を呼び寄せるにはバッチリのこの編成。コンダクターも、お客さんとのコール&レスポンスを演奏の中に混ぜ込んだり、管楽器、打楽器などを色で振り分けた指示用のプレートを宙に放り投げたり、その場で新しいルールを生み出すことが得意な、日頃から一筋縄では行かない音を奏でる演奏家ばかり。端々で個性を発揮し、それがまた新たな音を生み出していきます。

驚いたのは、途中休憩後の初っ端に、客席の素人二人をコンダクターにしたこと。観ているこちらもハラハラものでしたが、ルールも把握していないのに、臆すること無く大暴れする二人のパンキッシュなタクトは、オーケストラの揺るぎない強度も含め、決まり事の中では生まれない新たな側面が表出することになりました。

演奏者は通常の楽器の他に、自作のギターから自転車のサドル(底のパイプ部分の穴を吹いてました)のような非楽器まで、さまざまな音が入り交じってました。その音の集まりは、時にステージが波打つように、時に優しく風が吹き抜けるように、時に巨大な怪鳥が音速で飛び込んでくるように、場内を思うさまに行き交っていました。

何より、ボーカルやエレキギター意外はほぼPAを使わず、ホールの鳴りだけで奏でられていたので、どれだけの爆音で演奏されてもほとんどストレスがなく、その圧倒的な物量で生み出された抵抗不能な説得力にただただ快楽を覚えるのみ。

いわゆるクラシックのオーケストラのように、整然と無駄が無く美しく奏でられるものとは正反対の、ささくれ立ち、寄り道をし、計算や整合性を飛び越えたところから鳴り響く音には、かつて無い多幸感がありました。

近い体験としてはDRUMANDARAがありますが、あちらはもう少し閉じた空間で、もっと容赦ない破壊的なダンスビートを肉体的に楽しむスタイルなので、こちらは座席があることも含めて、もっとゆったりとしていて、言わばシミュレーション・ゲームを楽しむような感覚に近いかも知れません。

テニスコーツの二人がそれぞれタクトを振ったセット、残りの6人が3人ずつでタクトを振ったセットなど色々ありましたが、白眉は大友独りによるセット。140人を使っての“作曲”は、繊細さと攻撃性が美しく絡み合った、正に大友ワールドなセッションとなっていました。

左右二つの指揮台の間にMR-2が一台置かれ、演奏をエアーで録音していたようですが、もしホール鳴りの感じ、微音から轟音まで幅広いレンジでの演奏までがしっかり拾えていたら、かなり壮絶な音が記録されているのではないかと思うんですが……さて、リリースの予定はあるんでしょうか。カメラも数台入っていたようですが、色々期待してしまいますね。

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