雑誌『広告』リニューアル創刊号が、定価1円で販売し、密かな話題になっています。
フリーペーパーが町中に溢れている今の時代、雑誌1冊がタダで配られることは大したインパクトを持ちません。しかしそこに「1円」と値付けし、書店に並べ、客が手に取り、会計を行う手続きが発生することで、批評性が発生します。書店に行く労力、書店の棚のスペース代、書店員の給料、書店の電気代、レシートの紙代、家賃……と、本を作るためにかかる費用以上に、そこに関わるあらゆる要素に発生する費用について想像が広がっていきます。
僕も書店で買いましたが、どうしても1円だけ払って店を出る勇気がなく(正確にい言うと、書店員さんに「1円です」と言われて1円を出す。というやりとりに恐怖を覚えたから)、別の本をもう1冊足して会計を済ませました。
さてこの雑誌。新書よりも少し大きいサイズの平綴じで、背が接着面剥き出しで、ページを開きすぎるとバラバラになりそうな怖さがあります(実際は結構頑丈です)。断ちの部分が荒く、表紙も背表紙も本文ページもペラペラの紙で、雑誌だから当然とは言え、680ページもあるので違和感があります。
中を開くと、右ページが本文、左ページがそれに対応する写真やビジュアル、注釈、もしくは白紙という構成で、680ページと言っても、読むべきページは半分以下。しかし、文字が大きいとはいえページいっぱいにびっしりと敷き詰められたテキストは読み応えがあります。しかし広告が一切なく、全体のデザインも均一なので、やはり雑誌的な抑揚を感じないため、雑誌を読んでいる感覚は薄いです。その代わり、雑誌がそもそも苦手な僕にとっては、久しぶりに最後まで読み通した雑誌ということになりました。
残念ながら本誌は(一人一冊という制限を加えてはいましたが)早々に完売し、価格設定を考えても増刷されることはないであろうということを踏まえて(アマゾンで高騰してますが、流石に数千円払ってまで買うものではないと思います)、以下、目次に沿って、内容を振り返ってみます。
いいものをつくる、とは何か?
小野編集長の所信表明。リニューアルした「広告」で、ものづくりについて思索を重ねていくという宣言。20年以上、広告に関わる仕事をしていますが、雑誌「広告」を読んだのは今回が初めて(広告批評が読んでました)なので、何がこれまでとどう変わったのか、正直全くわかりません。
#0 価値
ここから最後のページまで、全てを一貫するテーマ「価値」。各章の冒頭は、全て小野編集長の前説が入ります。刷り銀の上に白文字という、大変読みづらい仕様にしてあり、実際、読み飛ばして支障のない内容でもありますが、冒頭の宣言に倣うように、各章のテーマについての本人の思索が書かれており、これらだけで独立したコンテンツになっているとも言えます。
1 価値と人類
― 文化人類学者 松村圭一郎 × 『広告』編集長 小野直紀
物の価値について、経済合理性を疑問視するという視点から、文化、社会、歴史などから発生する価値について考察する対談。「AさんがBさんに1,000円でものを売った時、Aさんはそのものを1,000円より低い価値しかないので売れば儲かると考え、Bさんは1,000円より価値が高く、買えば得すると思ったから買う」という、価値観のズレがものの売り買いに存在しているという指摘は興味深く、思考停止せず、違和感と疑いを持つことで新たな価値を生み出すことができる、という点は禅の思想にも通じるものがあると感じました。
2 価値のものさし
価値を測るものさしを、「スペック」、「社会」、「体感」、「情感」の4つに分類することで、価値として考えられている事柄が物理的・実存的か、概念的・観念的かで分けられ、また自分の外側にあるか内側にあるかによっても分けられることができるとし、その上で「スペック」「社会」は時代によって価値が変化するのに比べ、「体感」「情感」は普遍性を持っていることを明らかにして、変化の激しい時代だからこそ、むしろ後者を追求することが重要ではないかという指摘。ぼんやり感じていたことも、丁寧に整理されることで大事な指標が浮かび上がってきます。
#1 価格
3 江戸時代の価値と経済
Q&A方式で、江戸時代の経済社会について解説されています。「銀座」、「くだらない」、「二八蕎麦」の語源といったようなうんちくネタが大変楽しいです。
4 花森安治の「紅いバッグの話」
― お金ともの、そしてその価値
「暮らしの手帖」に掲載された、初代編集長のコラムと現代短歌を並べて、ものの価値を問い直す記事。「紅いバッグの話」とはその初代編集長のコラムのことですが、当時の掲載ページをそのままスキャンしたページ構成が、まるで架空のコラムを載せているかのように見えて、内容共々非常に面白い。ハッとさせられる言葉の数々は、現編集長による後半記事に引き継がれ、それでも最後には、切れ味よく軽妙なオチがついていて、実に心憎い。
5 どんぐり100個600円
随分前にアマゾンで生きたてんとう虫が袋詰めで(園芸用に)売られていることが話題になりましたが、こちらはより目的の無化されたメルカリの取り引きの分析。どんぐりをはじめとして、普通ならお金を払って買いそうにないものに市場が生まれ、金銭による取り引きが行われているという興味深いレポートです。レヴィ=ストロースは、元来人間はモノ自体に価値があるから交換するのではなく、交換することによってモノに価値が生まれるという分析をしていましたが、そういう根源的な人間の欲求を、メルカリは復興させたのかもしれません(ただ早くも「メルカリ疲れ」なる言葉が現れ、ブックオフが復調しているという噂も……)。
6 チープをモチーフにするハイブランド
― 価値付けのゲームはどこへ向かうのか
バレンシアガのバッグがイケアのバッグそっくりだ、という話題を入り口に、ハイファッション界に起こる現在の潮流を分析しています。が、イケアのバッグの話題なら、リメイクの筋での話の方が興味がわくかな、という感じでした。デザインが退廃へ向かったり原点回帰したりするのは、当たり前のことでは。
7 値付けの裏側
― 私たちは何を買っているのか
ペットボトル飲料の値段の内訳、世界最高級ワインの値付けの根拠、骨董品の評価基準、映画の収益構造、ダイナミック・プライシングの波……と、それぞれ金額という数値の弾き出される仕組みを解説しながら、「値付け」について考えを深める試みです。ペットボトル一本にリサイクル委託料が含まれているなんて、知りませんでした。
8 無料2.0
― 図解で読み解く新たな「無料」のしくみ
最近、わかりづらい図解って多いな、という気がするのは、じっくり読み解く余裕がなくなっているせいかもしれません。それはともかく、本記事は、図解を左ページに据えて、無料の仕組みを解説していますが、図解がパッと見でピンと来ない上に、内容もそれほど新鮮な切り口でもありませんでした。細い線や円・矩形だけで書かれた図解は、デザインとしては美しいですが、伝える力は弱いということを痛感。ただ、泥水を濾過できるストロー型浄水器「ライフストロー」の話(普及の手段として「カーボン・オフセット」を利用するという点)には驚きました。
#2 新しさ
9 「新しさ」のジレンマ
― 新しくない新商品はなぜ生まれるのか
前半は家電製品について、なぜ定期的に、ほとんど無意味な新製品が生み出されるのか、その原因を量販店に絞った対談。しかし家電に限らず、同じように「出すために開発された新製品」は世の中に無尽蔵にあり、そのあたりの仕組みを包括して議論して欲しかったです。後半は「家庭用洗剤」、「紳士服」、「自動車」についての新製品の開発裏話といった内容で、いわゆる広告・マーケティング誌然としていて、本誌全体からするとつまらない記事でした。
10 「新しい」はもう古い?
― 広告クリエイティブの“ねじれ”に時代を見る
こちらは前記事同様、広告・マーケティング誌然としていながらも、「新しい」という言葉の変遷という軸で「どうすれば新しいと思える広告は生み出せるか」を論じていて、広告業に携わる身としては食いつかざるをえない内容になっていました。それこそクライアントからは「新しいということを伝えて欲しい」という要望が大体上がってきたりするのですが、その伝え方に我々は日々悩んでいるわけですから。
11 「新作」はもういらない?
― 音楽の場合
僕は4〜5年前から、新しい音楽への興味がすっかり薄れてしまい、今は古い音楽しかほぼ聴いていませんが、それでも新しい音楽には役割がある、と思っています。本稿ではいきものがかり・水野良樹がインタビューに答える形で、今現在を表現する時代性が音楽にも必要である、というような話をしていますが、僕もまさにその意味で新しい音楽が機能していると思っていて、要するにライブに通う人、生で音楽に触れる人にとって、「新曲」の持つ力は非常に大きく、それが音源化されること、市場に流通することなど、それらを体験として同時代を共有することにこそ、今音楽が新たに生み出される理由があるはずです。
12 「新作」はもういらない?
― 映像の場合
こちらの記事では、映像における旧作の役割について論じられています。主にNetflixについての話に終始していますが、要するに旧作・新作の区別はNetflix上ではほぼ意味をなさなくなっているということですが、それは僕が利用しているAmazon Prime Videoも同様で、「新着動画」の多くは数年・数十年前の旧作で、発表から1年前後の作品と並列に追加・削除されながら日々コンテンツの入れ替えが行われています。アカデミー賞でNetflix作品が受賞したことは大きな話題となりました。しかしある映画評論家が、その受賞作品は単なる特異点ではないのか、今後Netflixが同様の作品をコンスタントに発表し続ける保証がどこにあるのか、といったようなことを話されていました。それと比べると、いろいろと物足りない記事でした。
13 いかに新しいものを生み出すか
― マンガにおける「新しさ」の意味
別冊マーガレット編集長へのインタビューで構成されていますが、やや噛み合っていない印象がありました。インタビュアーへの返答を読んでいると、漫画編集者のスタンスが良い意味でそれほど大きく変わっておらず、今も昔も、一歩先の表現を捕まえて世に送り出す能力に優れていることが感じられます。日本においては漫画の表現力は様々な娯楽の中でも突出しており、ある意味でハリウッド映画を超えていると思っていますが、それに対して評価が追いついていないのが実情で、噛み合っていないと感じるのは、その理解度の違いに対してなのかもしれません。
14 「最新」があたりまえの世界へ
― アップデート前提のものづくり
初めてiPod touchが日本に上陸した時、とてもワクワクしながらも、使い勝手に色々と難があり、に歯がゆい思いをした記憶があります。衝撃だったのは、それがOSのアップデートを重ねるにつれ、徐々に改善してゆき、驚くほど便利で快適な端末になっていったことでした。「一銭も払ってないのに、まるで新製品に買い換えたみたいだ」と当時大きな興奮に包まれました。本記事は、そんな10年ほど前の記憶をなぞらえただけのものに見て取れたので、もう少し今日的な「最新の」切り口で語って欲しかったです。
15 アップデートする建築とプログラマー的建築家
後半の記事で編集長が、興味の範囲によって情報に反応できるか田舎が起こる、というようなことを語っていましたが、この記事は僕の興味の範囲外だからか、僕にはピンと来ませんでした。
#3 無用
16 世界最高峰の無用
二つの巨大な石をただ積み重ねただけ、という非常に面白い現代アートを取り上げた記事。現代の最新テクノロジーをベースにしていながら、アウトプットは極限までプリミティブに見せるという強烈さ。僕も、生で見られるものなら見たかった……。
17 役に立たないと、いま決めてはいけない
本章の「無用」というテーマ自体が非常に面白いんですが、その中でも非常に興味深いテーマと言える、「役に立つか立たないか」という問題。ただ、面白く突き詰められそうなテーマの割に、ポストイットの誕生秘話といった有名な話にスペースを割いてしまい、深く突っ込むに至っていないところが物足りなく思いました(今なられいわ新撰組の話とか絡めれば、と思いましたが、記事は選挙前に書かれたかもしれませんね)。
18 Improbabilità(ありそうにない)
― ジュゼッペ・コラルッソの役に立たないものたち
ありそうでありえないさまざまな道具をモチーフにしたアート作品群を楽しめるグラビアページ(多分グラビア印刷だと思います)。
19 便利の先には「死」が待っている
人類が便利さを追い求めてきた果てに、肉体への負荷を過剰なまでに削減してしまったことが引き起こすネガティヴな症状(記憶力の問題は共感する人も多いでしょう)についての考察。一時期は幼児への読み聞かせもスマホアプリ化される事態になっていましたが、今は玩具店では手でつかみ、手触りや物理的な反動を感じながら遊ぶ「脳トレ」的なアイテムが増えており、その流行がプログラミング学習が学校のカリキュラムに取り込まれることを契機といていることとむしろ逆説的なバックラッシュが起きているようで興味深いですね。
20 無用なものへのまなざし
― 打ち捨てられたゴミに息づく生命の痕跡
異様なオーラを放つ、放置ゴミ写真の数々。人が誰かに向けて見せようとしていないものをファインダーが捉えると、そこからは偶然性と「意図しない意図」が滲み出てきて、なんとも言えない魅力を放つものだということを再認識させられます。
21 誤配という戦略
― 必要とされないものを、いかにつくり続けるか
東浩紀インタビュー。ゲンロン運営を通して目指してきたことを、広告クリエイティブと非常に近いロジックで語っています。客が求めるものをそのまま提供するのではなく、客が気づいていない本当に必要なものを提供する、というのはインサイト的発送ですし、「商品」であることにしっかり向かい合う姿勢、形のないものに「ものづくり」の本質を見る視線の鋭さに、ただただ心を打たれました。
#4 コスト
22 価値を最大化する予算設定
予算管理が難解になった歴史的背景と、不確実性の高い現代においていかに失敗から学んで成功を導き出すか、二つのコラムをつないだ記事。どちらも今の日本企業における代表的な姿勢を批判的に捉えています。
23 高予算の駄作はなぜ生まれるのか
― 日本の映画業界が向かう先
キノフィルムズ社長へのインタビュー。ここ数年自分の時間が取れず、年に数度、シネコンでメジャーな大作映画くらいしか見に行けてない身としては、耳の痛い話でもあり……作家性主義は、本当に大切だと思います。
24 ザク化する日本のものづくり
― ガンダムに学ぶ、コスト度外視の優位性
「いまの日本のものづくりは、どこかザク化してしまっていないだろうか」という、天声人語か何かのような、嫌な読後感のあるコラムでした。簡単なことを、余計な例え話で語る意味が、ちょっとよくわかりませんでした。
25 見積もりの透明化
― ブラックボックスをひらくとき、ものづくりはどう変わるのか
BIMと呼ばれる建築設計システムを主軸に、職人のスキルに依存してきた日本の建築フローが、今後システマティックにならざるを得ない状況で、いかに転換していくべきかというお話(実はザハ・ハディドによる新国立競技場案が国内でのBIM導入の機運を高めていたのに、ザハ案が潰されて、既存の技術で間に合うものになってしまったことで、建築界全体が大きなチャンスを逃してしまった、という衝撃的なエピソードも)。黎明期のDTPを彷彿とさせる複雑さを感じますが、DTPと同じく、やがて建築もデジタルデータの正確性と再現性に収斂していくのでしょうか。
26 つくり手が変える対価のあり方
― 慣習を超えて価値を生み出すために
「受注側もちゃんと交渉しなさい」という、何百回と繰り返されてきた耳の痛い話の10年代版。組織にいると、個人の価値だけで話がまとまるわけではないので、なかなか難しいところで……。
27 本当の請求書
見積書の後半に、発注側の対応の良し悪しや受注側のやり甲斐、今後の肥やしになるか、などの様々な指標で金額が上下しつつ最終金額に落とし込まれるという、「本音丸出しの見積書」が実に面白い。見積もり作成の時、金額を打ち込みながら、確かにこんなことをずっと考えているのです。これは本書の白眉ではないでしょうか。
#5 評価
28 権威の崩壊、民意のリスク
― 批評家 佐々木敦氏インタビュー
移動、分離、解体など、今日的な権威の移り変わりについて、HEADZという、権威から縁遠いレーベルのオーナーが論じています。「小さな価値観」「小さな経済」に真摯に取り組む氏の姿勢には、本当に頭が下がる思いです。
29 権威と民意のアワードマップ
本、音楽、映画のアワードが持つ権威についての考察。思えば僕は映画を観る際にはアワードは指標としますが、本・音楽に関してそれはありません。本は評判で買いませんし、音楽は売れているものをあえて避けるほど。映画と比べ、本、音楽は主観に依るところが大きいと考えているからか、映画は一回目の鑑賞が非常に重要であるため、内容の保証を求めてしまうからか、はっきりはしませんが、なにやらその辺りに理由がある気がします。
30 権威によるアワードは必要か
― グッドデザイン賞の存在意義
グッドデザイン賞の審査委員長と審査委員に、編集長がタイトル通りの疑問を投げかけるインタビュー。本誌中でも最も攻めた記事と言えるかもしれません。そして、審査員側の回答には、「グッドデザイン賞の存在意義って……」と、やはり釈然としないものが残ります。
31 民意の正体
― ネット時代の評価軸と攻略法
「べき乗人気構造の時代のヒットの作り方」といった、ちょっと下世話な内容。いかに一人勝ちするか、という肉食系の思想は、本誌内ではやや浮いてる気がします。
32 時代を超えて再評価されるもの
― なぜ’70〜’80年代邦楽の世界的リバイバルは起きたのか
日本のいわゆるシティ・ポップが海外から注目されていることに関する、DJ、バイヤーによる分析。世界中のポップスが世界中のディガーによって満遍なく掘り起こされている中で、今偶然日本のターンが回ってきた、というだけのことだと思うんですが。
33 現代の千利休
― 価値観を更新するものづくり
鼎談形式で、現代に千利休のような価値観の転換を起こすには、という導入から、でも価値観が分散化している→社会的価値に注目する企業・プロダクトは増え、大きなつながりも生まれかけている→その先で「無用」の存在価値が大きくなるのでは→経済成長を前提としない社会へ、という全体の流れのようですが、利休の引用がこじつけめいていたり、話が脱線しかけてるのに無理につなげたりと、ああでもないこうでもないと思考錯誤している会議をそのまま納めたような内容で、これが「現代の千利休」というタイトルだから余計になにが言いたいのかわからくなっていました。「資本主義社会は終わりかけてるから、これからは「無用」が熱くなる」と言いたいだけだけど、そう単純化したくないから、あれこれ理屈をこねてみたら、なんだかまとまらなくなった、という感じ。語られていることは興味深いのに、もったいないなあ、と(この記事が本誌の締めくくりでもあるのという意味でも)思いました。
以上、編集後記はなく、シンプルな奥付と簡潔な次号予告(特集内容が「著作」であること、発売日など詳細は未定であること)だけで本誌は終了。潔い編集です。こういうことが許されるのは、母体が博報堂だから、としか言いようがありません。
最初に「雑誌的な抑揚を感じない」と書きましたが、やはりその分、情報のレベルが統一されていて、特殊な構成でありながら、どこに何が書かれているのか一度把握すればスムーズに読み進められるので、とても読みやすく感じました。
読了後、改めて本誌の特集テーマである「価値」とは何か。本誌が1円であることの意義は何か。当然、結論を導き出せるはずもないからこそ、このような大きなテーマを設定し、ウェブサイトの展開を含む様々な実践を行ってきたのでしょうが、広告やマーケティングに携わっていない人間でも、現代社会で生活をする人間なら、何がしかのヒントが見つかるのではないかと思える、非常に読み応えのある一冊でした。
さて次号からどうするのか。形態はどうなるのか。ページ数は。値段は。気になるところですが、恐らく買わないと思います。今回、サイト上でのアクション含め面白かったので思わず飛びついて買いましたが、興味深い記事がある一方で、過去の広告誌を踏まえたような記事、何十年も同じところをぐるぐる回っているような記事も散見し、正直うんざりしたところもあります。雑誌なので、そんなところを飛ばして読めば良いのでしょうが、そういう読み方をするうちに特集目当てで買ったりし、そのうち雑誌を読まなくなった人間なので、だったら始めから買うのをやめます。これは、金銭的な負担より、読む時間の負担の問題の方が大きいです。遅読なうえに1日の中で読書ができる時間が非常に限られているので、読みたい本を読み、仕事と関係のない本から、仕事のヒントを得ようと思います。