雑誌「IN/SECTS」トークライブ:クロスカルチャーの時代 at Common Cafe (Osaka)

この日はCommon Cafeで行なわれた、雑誌「IN/SECTS」03号発刊記念イベント「雑誌「IN/SECTS」トークライブ:クロスカルチャーの時代」に行って来ました。

スピーカーは、前号発売時に僕のイベントにもご出演いただいた松村さん。

前半一時間は「IN/SECTS」のこれまでの経緯を振り返りつつ、最新号のテーマである「クロスカルチャー」について同誌がどう捉えているのか、というお話。後半一時間は質疑応答。

特に後半の質疑応答でのお話が大変興味深く、同誌の理解を深めると共に、個人的にもいろいろと考えさせられました。

僕は「行間を読む」ことが(文章に限らす)極端に下手なので(フランク・ザッパが好きなのも、彼の音楽は“分かりにくいこと”が“分かりやすい”から、ですし)、同誌が「クロスカルチャー」についてどのように捉え、考えているのか、誌面を読んでいるだけでは理解し切れていませんでした。

松村さんと僕はほぼ同世代なので、氏が感じる、自分より若い世代の持つ「ジャンル/カテゴリー越境力の凄さ」は僕もここ数年強く感じていて、氏がミュージシャンを通して実感していったプロセスを、僕も(タイミングや形は違えど)通過していました。

僕(特にここ最近の僕)はそんな若い世代の人たちを見て、過度にフラット化し過ぎているのではないか、という懸念を強めていましたが、同じ現象を松村さんは「“ニュートピア”への架け橋」と見ていたわけです。「無知であること」などが要因に含まれていることも当然承知の上で。

そのことを知るに至り、ようやく本誌の言う「クロスカルチャー」の意味が腑に落ちた気がしました。

この日特に強く印象に残ったのが、ローカルには「地理的なローカル」と「心のローカル」の二つの意味がある(つまり「ローカル・カルチャー・マガジン」の“ローカル”とは“関西ローカル”という意味ではない)、というお話。

最初、「心」の意味するところが分からなかった僕は、それが何を指すのか質問をさせていただいたんですが、松村さんの話では、それは“個人”が持つ“世代”としての共通項(学校で話題にしていたテレビ番組など)や、これまで触れてきた情報(雑誌など)をどう取捨選択してきたのか、ということによって形成されるアイデンティティ、それらの共通項の多い人たちが、無意識のうちに“面白い”と感じるものが共通してくることで生まれてくるものが「心のローカル」であるということ。

それは、読み始めた当初から「IN/SECTS」に対して僕が感じていたことそのものでもありました。

最初に僕の理解が及ばなかった理由の一つとして、僕はそれを“ネガティブなこと”と捉えていた側面があったからかも知れません。勿論良い面があることも分かっているつもりでしたが、松村さんの生の言葉(「IN/SECTS」創刊準備号が新宿のタワーレコードで「坂本龍一」ではなく「生駒」の表紙を表にして陳列されていたというエピソードなども含め)で聞いて、ようやく「IN/SECTS」という雑誌が何たるものか、を理解できたように思います。

それは、メディアについて問われる「主観か客観か」ということではない、「専門誌」というスタンスでもない、ましてや“キュレーション”でもない、個人的なアイデンティティの中に潜む“共通項”をふるいにかけて紙面に定着させることだったわけです。

このことが、これまでの記事がなぜ同誌に掲載されているのか、なぜ創刊一号から「紙のおとうた通信出張版」が連載されているのか(イベントの際に、「IN/SECTS」を「ナタリーのニュースで知った」と言いましたが、後になって考えたら、おとうたさん経由で知ったことを思い出しました。だから当初“音楽雑誌だ”と思い込んでたんですね)、色々自分の中で繋がっていきました。

なので、その後の別の方の質問に対する氏の応えの中にあった「IN/SECTSのような雑誌がもっと増えればいいと思う」という言葉も、雑誌メディアの隆盛云々だけではなく、「心のローカル」は本来個々人の中に他人とは別個のものとして存在しているので、それをメディア化したものが「IN/SECTS」だけではあまりにもバランスを欠いているだろう、他にも「ローカル・カルチャー・マガジン」はいくつも生まれてくるべきだろう、という風にも理解でき、今にして思えば、それは僕が始めに「心のローカル」をネガティブに捉えてしまっていた大きな要因でもあるわけです。

知識や情報として知っていても、肉声によって語られる言葉によってより身に染みて感じることも多く、この日の後半で話されていた「イベントをやってもほとんどお金にはならない。イベントを通して生まれる“人のつながり”が一番大事」との言葉は、重く受け止めざるを得ませんでした。

個人的に色々悩んでいる時期に、非常に刺激的なお話をお聞きできてよかったです。改めてo号から読み返してみたいと思います。

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