wat mayhem「パンク侍、斬られて候」 at サンケイホールブリーゼ (Osaka)

この日はサンケイホールブリーゼに、「パンク侍、斬られて候」を観に行きました。

3年前の中之島演劇祭での舞台の再演ですが、初演を観ていないので、どれほど違いがあるのかはよく分かりませんでしたが、率直な感想を言えば、「原作に忠実な、荒唐無稽で山内さんらしい怪作」といったところでしょうか。

舞台演出が見事で、原作の出鱈目なSF的現象を、紐のれんのようなスクリーンを活用して映像と生の演技を融合させたり、野外/屋内の切り替えを一枚の幕だけで転換無しに行ったりと、「仕掛けの妙」によって壮大なスケールの物語を巧みに表現していまいた。

一方で、山内氏のやや斜に構えた、真正面から真剣に芝居をすることを避けたような演技、まるで「2cheat」な転球氏との掛け合い、そして、書き割りを排除し、ハシゴも立てかけたままのむき出しのステージを大衆に晒し出し、青空をを「青空」と書いてしまう強烈なエンディング……と、山内氏らしい「演劇らしい演劇への拒否反応」のような演技・演出のダイナミズムが、原作の持つアナーキーさを、精神的な意味でも「舞台化」することに成功していて、読了後の、心地よい「満足感」「不快感」「疲労感」を肉体的にも感じることの出来る、素晴らしいステージでした。

原作の持つ、現実としてあり得ない馬鹿馬鹿しいストーリー展開、時代劇でありながら現代用語が多用される会話は、見せ方によっては非常にチープで、ただの「型破りのための無茶苦茶なもの」になりかねないと思うんですが、原作はそこを「現代社会とは、こういった矛盾や阿呆なことで成り立っているではないか」という「芯」を見せることで、信じられないような説得力を持っているんですが、舞台でも、その「芯」の部分を大切にしていたように感じました。殿様が黒人でも、転球氏が壊れていても、「芯」があってこその「何でもあり」。そのバランス感覚も、やはり山内氏が原作をしっかりと自分のものに出来ている証拠でしょう。

「山内版・パンク侍」は、圧巻の舞台でした。
カーテンコールで山内氏一人が黙して座ったまま頭を下げるだけ、というのも、彼らしくて良かったですね。

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