「アーカイブ」に興味は無いけど「コレクション」はしたい

「読書通帳広がる 図書館で履歴印字、下関から北上中」

図書館での貸し出し履歴が銀行の通帳のような冊子に記録されていくというもの。これは、普通に考えて絶対楽しいですよね。

例えば自宅の書棚でも、誰もが「ちょっと誰かに見せたい」という露出欲を持っているのではないかと思います。「いやいや恥ずかしいから絶対嫌だよ」と言ってるそこの貴方、顔がニヤけてませんか。

CD棚、レコード棚でもそうですが、これらは「コレクション」であって、端的に言って「コレクション」はその所有者のアイデンティティの一部、人によってはすべてだとも言える程のエネルギーを有しています。「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」でベテランオーボエ奏者(独身)がチェリストを自宅に迎えた際に、自分の愛聴するロックのレコードを我が子のように自慢する姿は、多くの音楽マニア、レコードコレクターが(ややいけ好かないこの御局様的なクラシックの楽団員に)共感を覚えるシーンだったのではないでしょうか。

図書館にもそういった側面がある、ということを可視化した見事なサービスだと思いますが、実はこれは図書館に限った話でもなく、活用範囲はまだまだ沢山あると思うんですね。

「可視化した」ということは、要するに「形のないものに形を与えた」わけですから、今や「モノよりコト」と叫ばれている世の中、無形のものほど人を引きつけているのですから、そこには潜在的に「可視化されることを待っている」存在が沢山あるわけです。

それは例えば「美術館巡り」が趣味の方のために、来場記録が印字される「美術通帳」でもいいかも知れません。多分、皆さんチケットの半券やチラシなんかを残してると思うんですが、それとは別に「○月○日に□□に行った」という情報のみが列記されてると、それだけ眺めてても思い出にニヤニヤしてしまうことは想像に難くありません。コンサートでも同じことが言えるでしょう。

いずれも問題は各施設に端末を導入(記事によると85万円〜)しなければいけないという点ですが、今のように図書館一館ずつ導入してしまうと高くつくということもあるかも知れませんし、普及してくれば価格も熟れてくることを考えれば全く無理な話でもないでしょう。eチケットの方がよっぽど「もういいんじゃないか」と肩を叩いてあげたいくらいです。

いや、もしかするとこれ、こんな通帳じゃなくて「記録手帳」みたいなものが普及して、各施設の受付の方が「手書きで書いてくれる」という文化が広がったら、その方が面白いですよね。書いてくれるそれぞれの人の筆致や内容に個性も出てきて、「ありがとうございました」とかメッセージも書いてくれる人や、ゴッホ展観に行ったら日付の横にひまわり描いてくれたとか。うわー、楽しい。

他にも、子連れの家族なら遊園地、海水浴場、博物館などなど、子供と遊びに行った施設の情報が記録される「親子通帳」なんてあったら、これ一生の宝物になるんじゃないですか。っていうか今書きながらめちゃめちゃ欲しくなった。いや、現場で撮った写真とかそういうのはいっぱいあるんですよ。でも「○月○日に□□に行った」と紙に印字されたものがあるっていうところに、家族で共有できて将来まで大事に持っておこうという気持ちを育む力がある気がするんですよね。

結局Foursquare(今同様のサービスについては違う名前のアプリに置き換わってたと思いますが、もう使ってないので忘れました)が駄目だったのは、「バーチャルでバッジ集めても全然面白くない」からだと思うんですね。コレクション欲は、基本的に「役に立つもの」を集めても仕方がないので、そうなるとフィジカルな感触がなければ、そもそも集める意味もなくなってしまうわけです。

この「コレクションすること」と「アーカイブすること」との間には大きな隔たりがあって、後者については一時期年齢の比較的高い人たちとそれらをビジネス化したい人たちの間で結構熱かったと思うんですが、今は「個人情報」の問題とのせめぎ合いを続けていて、「改めて締める」か「諦めてユルユルにする」か、どっちに転ぶかによって大きく進む道が変わってくるでしょうね。

前者も「個人情報」として扱われる類いのものですが、後者の「知っておきたい」という欲望に加えて「知ってほしい」が含まれていることが心理的な警戒心を弱めているきらいがあります。そして「コレクション=役に立たないもの」という持ち主の考えが更に拍車をかけている気がします。それぐらい、コレクション熱は誰もが持ち合わせている欲求なのではないでしょうか。

Snapchatが「保存できるようになる」という点についても、twitterやFacebookにおける「アーカイブ」ではなく「コレクション」だとしたら、それは実態に即した機能強化なんじゃないかと思います。

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