歯応えがありつついちいち面白い本「論理トレーニング101題」

あーやっと読み終わった。去年の末に購入して、多分年明けには読み始めてたと思うんですが、途中他の本を読んだりして中断しつつ、今日ようやく最終ページまで辿り着きました。

文章に対する論理的な力を身につけるために、様々な文献から引用された例文を問題とし、それをナビゲーションに従って読み解き、答えていくという方式で、タイトルどおり101問あります。これがもう、実に手強い。

もともと、自分に論理の力が備わっていない意識があり、それを鍛えようという思いから買った本なんですが、思っていた以上に論理的なものの考え方が出来ていなかったんだなと自覚させられる程、自分で導き出す答えが呆気にとられるぐらい間違っているんです。それも、「ああこれは間違いないわ」と思った答えほど的外れ、という具合に。じゃあ文章を何度も読み返しながらああでもないこうでもないと時間をかけたら(このおかげで読み終わるまでに半年ぐらいか買ってしまったんですが)正しい答えに辿り着くかと言えばやはりそういうわけにもいかない。

鍛えるつもりが、自分の非論理性を自覚して終わってしまったような気がするので、もう一度読み直さないと……と思っているところです。でもそれはそれで苦しいばかりでもなく、結構楽しいこともあったりするんですが、その理由は問題として引用されている各例文が、論理力云々を別にしても「結構面白い」から。

一問目からして「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない」という興味をそそる内容。文章の問題点を論理的に読み解く前に、「えっ」と内容に気を取られてしまい、答えるどころでなくなってしまいます。

「“アマチュア”という言葉はイタリア語では“アマトーレ”と言うが、発音上ば“種馬(のような男性)が好き”という意味に取られるので一般的には使われない」
「バスの運転手はシートベルトをしていない」
「世界中の中国料理は広東料理の支配下」
「介護機器展などに出てくるトイレ付のベッドを、寝たきりの人は使いこなせない」
「日本の自販機に使われているメタクリレート樹脂の透明カバーは、外国だとハンマーで簡単にぶち壊されるので使われない」
「割烹着が見られなくなったのは日本の台所にダイニングキッチンが普及したから」

こんなパンチラインが出てくる例文続出で、「問題はいいとして原典あたっていいですか」という気分になります。さらにそこへ拍車をかけるのが、著者自体も本題から逸れて文章の内容に踏み込んで「それはおかしいんじゃないか」とか言い始めるところ。テーマにしろタイトルにしろ表紙デザインにしろ、どう考えても固い本だとしか思えない本書、実は著者の文体も表面的にお固く見せつつ、そこかしこにくすぐりが散りばめられており、ってことはこの例文も狙ってるでしょ、いや狙ってる絶対、と勘繰らずにはいられません。

そして著者の講義の締め括りとなる一文も「最後に来てそれかいな」という感じでとても良い。

「論理トレーニングの成果は、親、兄弟、友人、恋人、そしてとりわけ配偶者に対して無分別に発揮してはいけない(1)初心者がうかつに論理的分析力を発揮して批判すると、(2)少なくとも現在の日本社会においては、人間関係を損ねるおそれがある。刃を研ぎ澄まし、懐中に忍ばせておく。そして、ここぞというときに抜くのである。どういうときが「ここぞ」なのか。残念ながら、本書はそこまでめんどうを見ることはできない。読者諸氏のご自愛を願ってやまない」

この人を食った感じがやはり計算尽くなのだろうと思わせるのが、「演繹」についての講義のくだり。正直、僕がこの「演繹」という漢字が読めなかったんですが、演繹の講義はこの漢字にルビを振らないままさっさと始まってしまいます。頭の中で発音できないまま読み進めていくと、二つ目の問題で、

「いつもワープロを使っていると漢字が書けなくなる。ワープロ派は「演繹」なんてまず書けない。君もワープロばかり使ってるって?じゃあ、どうだ、「えんえき」って書けるか。書けないだろう」

という例文が登場し、疑問が解ける。あー、えんえきって読むのか。と。これ、狙ってますよね。この本は2002年の初版で、この例文に関しては原典がなく、著者による作文のようですから、読者層がワープロ、パソコンに慣れ親しんでいることを見越して、意地悪をしているようにしか思えません。

このように、問題はあくまでもビターですが、難解一辺倒ではなく、茶目っ気や皮肉もたっぷり。また、通勤電車でも読めるようにと読み進めるだけでも理解しやすく構成されているところなど、通勤中が最大の読書時間である自分には有り難かったりして、ホスピタリティもとても高いのです。

というわけで、いくつか積ん読を消化したらまた返ってこようと思います。

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