ピエール=ロラン・エマール at 京都コンサートホ―ル (Kyoto)

この日は京都コンサートホ―ルで行われた、ピエール=ロラン・エマールによる「平均律クラヴィーア曲集第1巻」全曲演奏を観に行きました。

ピエール=ロラン・エマール at 京都コンサートホ―ル

大ホ―ルでの公演でしたが、お客さんの入りは5割程度という感じ。ただ、年齢層は幅広く、高めではありながらも、老若男女集まっていました。やはり、現代音楽から入っている人が多いからでしょうか。

この日の座席は2階下手、ピアノを鍵盤側から真っすぐ見下ろす位置からの鑑賞でした。演奏中は背中に隠れて手元は殆ど見えず、表情も全く分かりませんでしたが、その分、曲ごとに譜面をめくる姿はよく見えました。音響的にも特に支障はありませんでした。

第1番前奏曲での、うっとりするほどロマンチックなタッチで陶酔させる出だしから、曲調とともに時に軽やかに、時に激しく、しかし厳しさや重々しさを感じさせない滑らかな演奏を繰り広げていました。5番、10番のドラマティックさで起伏を付けながら、第12番を終えると一旦休憩へ。

恐らく演奏会で立て続けに演奏するために作られてはいないであろうこの曲集を、淡々と譜面をめくりながら自身の解釈のもと次々と弾き続けるための集中力と緊張感は想像もつきませんが、それを感じさせないクールネスが背中から漂っていました。ミスタッチもいくつかありましたが、それも演奏がエネルギッシュに走っている時だったり深く陶酔するようなところだったりと、感情の強さに押し流されて指が滑っているようで、必然的とは言わないまでも、違和感や破綻を覚えるものではありませんでした。

13番からの後半は、終わりに向けて更に集中力を高めていくような演奏でしたが、一方でアレンジにあまりフレッシュさが感じられなくなってきて、かなり聴き疲れてきた中で20番のフーガあたりはもう少しフレッシュな解釈を聴かせてもらいたかったという気も。しかし最後の24番ではたっぷりと溜めを効かせた重厚な演奏で、演奏終了後の数十秒の沈黙とともに、第1巻全曲をしっかりと締め括ってくれました。

前半も後半もほぼ丁度1時間。バロック時代のピアノ曲にこれほどロマンティックでドラマティックな音が込められていたのかという、ポテンシャルを引き出すエマールの創造力と、バッハの作品が持つ無限の潜在能力への畏怖の念を感じた2時間でした。

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