テレマン・アンサンブル at 高槻現代劇場レセプションルーム (Osaka)

この日は高槻現代劇場・レセプションルームにテレマン・アンサンブルを観に行きました。

テレマン・アンサンブル at 高槻現代劇場

この日のプログラムは以下。全てJ.S.バッハでした。

2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調
ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ニ長調

〜ティータイム〜

イタリア協奏曲 ヘ長調
ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調

〜アンコール〜

G線上のアリア
アヴェ・マリア(グノー)

会場は、いわゆるコンサートホ―ルではなく、フラットで横長のスクエアな部屋。そこに100席ほどの椅子が並べられ、舞台との境目もなく、舞台側には二段チェンバロとその周囲にいくつか譜面台が立てられているだけでした。チェンバロは、開演10分前ぐらいまで、かなり時間をかけて調律していました。

この日の客層は、ご年配の方を中心に、20〜30代の女性がまばらに見かける、という感じ。僕のすぐ後ろの席の60〜70代と思しき男性のシャツに「IGGY POP」と書いていたのが気になりましたが、お孫さんにでも貰ったのでしょうか。

舞台側に演奏者が現れると、指揮者/音楽監督の延原武春もそれに混じるように登場し、コンサートホ―ルのようにもったいつけて現れる感じでもなく、指揮台も無いので楽団の前をわりと自由に動きながら指揮していました。そもそも指揮棒もないし(指揮棒の無かった時代の音楽だからでしょうか)、四六時中手を動かしているわけではなく、要所要所で動きながら、合間には少し引いてじっと見ていたりと、ちょっとジャズのビッグバンドでの指揮を彷彿とさせましたが、バロック期のタクトってこんな感じなんでしょうか。

出だしの“2つのヴァイオリンのための協奏曲”の単調の響きにグッと心を引きつけられ、そのままどっぷりとバッハの世界へ。コンサートホールの作り込まれた音響ではなく、素朴な部屋鳴りと、大きな窓から外の景色と光が差し込む中で近距離で正面から観る演奏は、音楽との距離がとても近いような、アットホームな雰囲気が漂っていて、バッハの音に直に触れているような感覚がありました。

こういう小さな部屋を使ったサロン形式での演奏会はドイツなどでは頻繁に行われているんだそうですが、曲の合間に音楽の背景などをユーモアを交えて関西弁で軽妙に話す延原氏の調子の良さも、リラックスした空気を作り出していました。

前半2つ目の曲”ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのためのソナタ”演奏前に、チェンバロ奏者の高田泰治に「ちょっと弾いてみて」と「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」の1番を無茶振りで弾かせる延原氏。その後も急にマイクを向けて喋らせたり予定に無かったことを言って戸惑わせたりと、若い楽団員たちをいじって楽しそうな延原氏でした。

ティータイムではお客さんにお茶が振る舞われていましたが、この間もチェンバロは再び調律されていて、空気のほぐれたお客さんたちはティーカップ片手にその様子を取り囲むように眺め、写真に撮ったり調律紙の方に質問したりと、何とも和んだ雰囲気。調律紙の方は、普段お客さんに囲まれたり話しかけられたりすることがあまりないからか、少し緊張されていたみたいですが。

後半はチェンバロ独奏の“イタリア協奏曲”、第1楽章後半にチェンバロの長いカデンツァが登場する“ブランデンブルク協奏曲 第5番”と、さらにチェンバロが活躍するプログラム。録音したものを、お世辞にも良いとは言えない環境で聴いているチェンバロの音とはかけ離れた、柔らかくて美しい弦の響きは、その独特のリズム感と共に気持ち良く身体を揺らしてくれました。

“ブランデンブルク”も、普段聴き慣れている音源だと、煌びやかで天上の音楽のような響きを感じていましたが、この日の演奏は、落ち着いたテンポと過度な装飾を感じないシンプルな音で、曲本来の姿を間近で観ているような魅力に溢れていました。

アンコールではまず“G線上のアリア”、そして延原氏もオーボエを手にし、楽団全員の演奏でグノーによる“アヴェ・マリア”を披露して、穏やかに幸福感が満たされるようなメロディに浸りながら、この日の演目は終了。

バッハも「マタイ受難曲」のような立派な宗教音楽などになると、今の僕には難し過ぎてついていけない感じがありますが、この日の演目に挙がったような明快で美しいメロディを持った曲たちの魅力には、ほんと心動かされます。それに加えて、バロック音楽がよりダイレクトに感じられるような会場と演出。いやぁ、ほんと良かったなぁ。また観に来たいです。

延原武春 テレマン室内オーケストラ ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲「ムガール大帝」「四季」
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