SUPERTERZ at nu things(Osaka)

この日はnu thingsSUPERTERZを観に行きました。

nu thingsは現在の阿波座に移ってからは初めて(以前の場所には結局一度しか行けませんでした

今度のnu thingsはコンクリート打ちっぱなしのシンプルなスペースで、epokをひと周り小さくしたような雰囲気。

SUPERTERZは、電子音を奏でるRavi Vaidと、ギター&ドラムスのMarcel Vaidのスイス人二人によるユニットで、電子機器とつながったドラムセットを操るSimon Berz、アンプリファイされた自作楽器を駆使するメンバー唯一の日本人・Koho Mori Newtonの二人をゲストに迎えての編成彼らのレギュラー・セットのようで、この日もその四人。

機材は、Raviのラップトップやミキサー、エフェクターなどが並ぶブロック、Marcelのラップトップ、ギター、エフェクター、ドラムスなどが並ぶブロック、Simonのドラムセットと電子機器類が並ぶブロック、Kohoの自作楽器が乗ったテーブルの四つのセットが輪になって向かい合うようなセッティングで、お客さんはその周囲で自由に鑑賞するというスタイルでした。

フロアの四方には、モニター・スピーカーやメーカーもサイズも違う様々なスピーカーを不規則に積み上げたサウンドシステムが設置されており、マルチチャンネルのようにも聴こえるけれど、スピーカー同士の距離がそれほど遠くないこと、機材からの距離が近いので生音が混じって聴こえることもあり、耳に入ってくる情報は更に複雑に。

メンバーはそれぞれ自身のパートに集中するように、即興で抽象的なフレーズを奏でます。クールに、丁寧に音を重ねて曲を構築していく様子は、70年代中期のKing Crimsonのインプロビゼーションを彷彿とさせるものがありました。どことなく憂いを帯び、混沌の中から秩序の断片が静かに浮かび上がってくるような。

主にRaviの奏でるシーケンサーからのリズムなどが、音の強さもあって曲を牽引している感じがしましたが、むしろ彼が引いた時に現れる、Kohoが鉄板をこする音や、Simonがマイクを仕込んだドラムスティックで軽く触れるように叩く音などが静かに混ざり合うような瞬間に心惹かれました。

四人それぞれの波の満ち引きが、ドローンのような瞑想的なサウンドではなく覚醒するような刺激を含んだ音像を生み出しながら徐々に波を強めていき、しかし過度に爆発的な音圧で支配しないクレバーなピークを迎え、約1時間の演奏から途中休憩へ。

休憩中もドラムセットから離れず何かスタッフらと話しながら音を調整するSimonに付き合うようにMarcelがギターを鳴らしていると、グラデーションのように演奏に滑り込みます。

Raviは四人のセットの周囲をぐるぐる走り、途中、nu thingsに置いてあるグランドピアノの前に来ると一音だけ鳴らしてまた走る、というユーモラスなパフォーマンスも見せ、Simonはドラムスティックで壁や床を叩いたりと、よりフリーフォームな演奏に。

最後はRaviが絶叫しながらフェーダーを切り、それに合わせてメンバーがブレイクするハードなクライマックスを迎えて終了。

それぞれが自由に音を出し、中心に来るリズムを定めてもいないのに、適度な緊張感と飽きの来ない音の展開を終始キープしていて、この日の約90分のセットでは物足りないくらい。周囲を歩き回りながら聴いていましたが、スピーカーとの距離と奏者との距離から様々に音が変化し、その瞬間どの位置にいるかによって大きく違ってくるという音のバリエーションの豊かさも聴き疲れしない理由でしょう。少なくてもあと1時間ぐらいは観たかったですね(まあこの日はお客さんが少な過ぎたので無理な相談かも知れませんが……)。

INSOMNIA
INSOMNIA SUPERTERZ

‘UNIT RECORDS 2010-08-15
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