父になりました。

以下、ついったへの書き込みのまとめに加筆修正したもの。

13日朝。出産予定日を3日過ぎた嫁が、前日に「帝王切開」の可能性を示唆され、休日だった僕とともに産婦人科へ。おなかの張りのチェック、エコー、その後改めてお腹の張りを調べ、最後に触診をしたところ破水。即入院へ。一旦家に荷物を取りに戻り、感染予防の点滴を受けながら張りの状態を見てもらっている嫁としばらく話をして、昼食をとるために一旦帰宅し、しばらく自宅待機。

16時の段階で「今日は産まれない感じ」という嫁からの連絡を聴き、気持ちが少し落ち着いた直後、「いだいっ」という悲痛なメールが届き、あわてて出かける準備にかかる。

「テニスボールで押す」ということだけうろ覚えだったのでボールを探すも見つからず、そうこうしてるうちに嫁から「来て」と泣きそうな声で電話。とりあえず、ツボ押し用のイボイボのボールを二個持ち、間違えてキノコ型の座椅子を持っていきそうになり、靴を履いたついでに靴べらを持ってきてしまい、何故かマイ箸を鞄に入れ、ケータイを忘れて飛び出す。

病院に着くと、ベッドの隅に丸くなって苦しそうにしてる嫁。看護師さんにマッサージの仕方を教わり、腰を押してあげて痛みを和らげてあげる。この時点で、かなり陣痛がきつそう。

18時頃に夕飯が運ばれてくるが、嫁はあまりの痛みに全く食欲が出ず、デザートのパイナップルを二切れ食べたのみ。仕方なく、彼女の背中をさすりながら、片手でお弁当を食べる。割り箸を割った瞬間、マイ箸を持ってきていたことを思い出す。

天ぷら、焼き魚、タケノコのお吸い物等々、病人向けではないため、普通にデリシャスなお弁当でした。産後楽しみやねーなどと嫁に声をかけて気を紛らわす(主に自分の)。

途中、やや収まったりしながらも不定期に続きながら、気がつけば夜の9時。ここで看護士さんがやってきて赤ちゃんの状態をエコーで見ると、それまで順調に下がっていたと思われていたのが、結構どうにもならない状態になっているとのこと。それにつれて、嫁の陣痛の痛みが尋常でなくなり、悲鳴に近い「痛い」という声。

一旦分娩室で先生に観てもらうことになり、僕は外のソファでしばらく待機。暗いし寒い。基本ダンナは部外者だと実感。

しばらくして呼び出されると、赤ちゃんの状態に着いて説明を受ける。その間も嫁は陣痛の大波が来るたびに悲鳴を上げ続ける。

要するに、赤ちゃんのおでこが骨盤にはまっていて、なおかつ前後が逆向きになっているんだそうだ(うろ覚え、というか理解できなかった)。よく分からないが、「このままだと子宮が破裂する危険性もあるので、陣痛を止めて帝王切開にした方が良い」という説明を、骨盤の模型を使いながら詳しく説明してくれた。

でも、そんな意味分かんないことを詳しく教えられるよりも、横でこっちが泣きそうな悲鳴を上げている嫁を早く助けてあげたいので、説明途中に食い気味に「陣痛止めろ」と。もちろん丁寧な口調で。

急ピッチで帝王切開の準備が始まる22時半。張りを押さえる点滴を打つが、もう赤ちゃんの骨盤へのはまり方が異常なせいで、軽い張りでもベッドをガクガク揺らすほどに苦しむ嫁。

立ち会いすると言ったら、またしばらく待たされた後、給食用のエプロンみたいな白衣と、緑色のヘアキャップと緑色のマスクを渡される。ドラマとかで見るのと同じあの色。でもこれ、なんで緑なんやろか。

手術台と壁一枚隔てたところで待機。痛い痛いと言い続ける嫁の声が、手術用の麻酔が効いてくるにつれて、だんだん普段の落ち着いた口調に。やっぱり、普段聞き慣れないトーンで「痛い」とか言われるのは、結構ショッキングなんだな。

やがて呼び出され、嫁の手を握りながら手術の無事を祈る。落ち着いた嫁の表情を観てちょっとほっとする。おなかバックリ切られてるけど。

最初先生から「1時間半ぐらい」と聴いていたが、僕が嫁のそばに来た時点で、看護師の方が赤ちゃんを受け取る紙を持って待機していたので「あれ、すぐ終わんのかな」と思っていたら、案の定、あっという間に血まみれで悶える赤ちゃんが丁寧にすくいあげられ、看護師さんの手に。

僕はその看護師に連れられ、嫁より先に赤ちゃんをじっくりと見る。最初、赤黒かった赤ん坊。やたら泣きまくってるので「よお泣いてますね」と看護師さんに言うと、「泣くことで肺の動きが活発になって、全身に血がまわるんです」との応え。たしかに、見る間に赤黒かった身体がピンク色に。

羊水を抜くために、口と鼻に管を入れて吸引されるたびに怒ったかのように泣きまくる赤ちゃん。でもあれは、大人でも泣きそう。

父としての最初の仕事・「へその緒を切る」。意外に弾力があって切りにくい。

体重計に乗せると、「3260グラム」。十分大きいが、事前に「3900」と聞いていたので、なんか軽いような気になる。

そのまま赤ちゃんの記念写真を撮ってもらった。何せ、家にケータイを忘れてきているので、この日の記録はこれのみ。手術直前に「ビデオカメラとかで撮ってもいいです」とか言われたが、そんなもん用意してる余裕無かった。

あと手術中に流すBGMに、自分で持ってきたCDをかけてくれる、と聞いていたが、もうテンパリ過ぎて、すっかり忘れていて、結局昔の宇多田ヒカルがかかってた。懐かしかった。

手をしっかり洗った後で、赤ちゃんをだっこさせてもらった。何とも言えない重さ加減と柔らかさ。そして熱い。少し揺すると泣き止む、という、まだ非常にシンプルな状態。

赤ちゃんはショーケースのようなプラスチックの個室へ、嫁は元の病室へ戻り、管や機械だらけで身動きも取れない嫁にねぎらいの言葉、お休みのキスをして帰宅。明日、朝早くからまた病院行きます。ので、もう寝ます。

帰り道、高田渡の「系図」を延々リピートしてました。僕の場合、産まれてからはずいぶん落ち着いてます。産まれる前にうろたえすぎたからでしょうか。シャワーを浴びようと上着を脱いだら、変な汗でびっしょりでした。

2009年6月13日23時52分。帝王切開。女の子。名前は「楽(らく)」

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