想い出波止場LIVE(Spanish Sur realismo version) at Namba BEARS (Osaka)

この日はNamba BEARSに、想い出波止場4DAYS四日目「想い出波止場LIVE(Spanish Sur realismo version)」を観に行きました。

この日のドラムスは砂十島NANI。前日のようなドラムトリガーも無く、山本精一も前日使っていたサンプラーは無し。

ライブは静かなアルペジオでスタート。「第三ROCK」のイントロ部分のようなゆったりした演奏が続き、山本氏のカウントに合わせて転調するとそのまま「GO」へ。

さらに歌ものサイケが続き、今日はこの路線なのかと思いきや、即興らしきアブストラクトなインストから、一転して印象的なリフがかき鳴らされ、ハードコアナンバー「In」へ。一定のリズムを繰り返しながらテンションを上げていき、後半ではギターでドラムセットをガンガン殴りつける山本氏。昨日の調子だとこのまま終わるんじゃないかというような爆発ぶりで、曲終わりでケン・スギサキが登場するも、暴れて痛めつけ過ぎたギターが鳴らなくなってしまい一時中断。ケン氏、しばらくステージで放置プレイ。

ケン氏のMCや、ギターが鳴らず「ギター壊れた。今日はもう終わりです」との一言に空気の緩んだフロアに向かって「必要以上に和むなコラ」と毒づいたり、「やりたないけどやるわ。よかったな、ほんまやったら終わりやで」と、この日はS度強めのMCも好調。

ケン氏を加えてのヘビィで歪な歌ものに続き、「太っ腹」では津山氏が難波オリンピックでもちらっと吹いていたアンティークなラッパで伴奏。

アップテンポなスリーコードのナンバーでひとしきり盛り上がってケン氏が意気揚々と退場すると、山本氏が水を指すように「はい終わり。こういう世界終わり」と冷たく一言。

津山氏がストラトに持ち替えての「Marine Show」から「第三ROCK」へ続き、本編ラストの「OUT ROCKERS ON Your Angel Hair」へ。途中からハンドマイクに移った山本氏が歌いながらメンバーに向かってマイクを勢いよく振り下ろすと、それに合わせてバンドがテンポとキーを一瞬で切り替え、マイクに向かって叫びながら繰り返しリズムチェンジ。その度に高揚感が増し、最後はもうトランス状態で大興奮。

アンコールでは、山本氏のいないステージで「山本君は帰りました」と津山氏。ギターに河端一を迎えて「ホワイト・アワー」を開始。本当に帰ったのかと思っていると、途中で山本氏登場。後半ではNANI氏のドラム・ソロに合わせて、初日に吹きまくっていた笛を吹く場面も。ラストはノイズ状態の音の洪水になって終了。この辺り、「いたち野郎」を彷彿とさせられましたが、これに限らず、僕にとっての想い出波止場には、ザッパ継承者というイメージがあったりします。

2度目のアンコールで、山本氏は譜面を選びながら、一枚を残して残りを後ろに勢いよく投げ捨て、NANI氏苦笑。彼がこの日一番楽しそうでした。

「珍しい曲やります」と言って(イントロを弾き、「知ってる?……知らんのか。止めじゃ」と違う曲を歌い始め、「これ知ってる?ひがみブルース。知らん?」反応のない客席から津山氏の方を向き「ひがみブルースも知らんやないか」津山氏苦笑、というくだりを経て)「アーメン」をプレイ。意外かつ生で聴いてみたかった曲なのでこれは嬉しかったです。

3度目のアンコールでは、登場時に自分にだけ声援のなかったと気分を害した山本氏が「もっかいやり直しや」と一人楽屋に戻り、再度登場すると会場からは拍手喝采。機嫌を取り戻すのかと思いきや、譜面台を蹴り飛ばし「俺が一番偉いんや」と大人げなさ大爆発。

そして始まったのが「エーデルワイス」。延々と「わん、わん、わん、わん」を繰り返し、何となく演奏が止まったタイミングで津山氏が西氏に指示を出すとキーボードで犬の鳴き声を一音だけ鳴らしてまた再開……を何度か繰り返し、そのうち山本氏が「“猿の臭いがする”言われへんやないか……止まんなや、“猿の臭いがする”言われへんやんけっ」と度々止まるバンドに文句を言い出し、そこからは「セックスの仲間集まれー」「次、真弓やぞ」などと即興で口からでまかせを挟み込んだりしながら次第に演奏に熱が入り、何となく盛り上がりを見せた後、ややぐだっとしながらエンディングへ。

この日のライブは2時間強。最後に「想い出波止場は当分……っていうか、もうやんないかも。今日がラストです」という山本氏のMCで、四日間にわたる前代未聞のイベントは終了しました。

前半二日で悪ふざけはやり尽くしたのか、後半二日のライブは演奏に集中し、シャングリラの時以上に圧倒的なバンド力をたっぷりと堪能できました。一日目のシリアスハードコアバージョンと二日目の旧曲中心のセットのバランスも実に見事。

そして、既に伝説と化している一日目の茶番ぶり、二日目のいかさまぶりは、演奏以外の想い出波止場が持つ重要なパート。

つまり、四日間を俯瞰で見ると、ちょうど「想い出波止場」という塊が成分ごとに四つに切り分けられたような状態になっていたのではないでしょうか。

いかがわしくも馬鹿馬鹿しく、確信犯でありながら行き当たりばったり。完成されているようで隙だらけ。そして、ズレまくっているようで、全くブレていない。

猥雑な存在としての「音楽」の魅力を拡大解釈し、地下室で暴走させたこの四日間は、ベアーズでなければ、想い出波止場でなければあり得ない、唯一無二の至福の「大音楽」でした。今年のベスト・ライブ。

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