「姫が愛したダニ小僧〜Princess and Danny Boy〜」

今日はシアタードラマシティで、 「姫が愛したダニ小僧〜Princess and Danny Boy〜」を観てきました。

ごく普通のカップルが、ひょんなことから幻想の世界に迷い込んでしまう……という、「ダブリンの鐘つきカビ人間」を思わせるようなあらすじですが、「ダブリン」が、爆笑の後、胸を締め付けられるような悲しみに涙するのと違い、徹頭徹尾、馬鹿で阿呆で笑いが止まらない、という、いたって明るいお話。しかも馬鹿さ加減は「ダブリン」の非ではなく、もう、言わば「滅茶苦茶」。
後藤ひろひと作品でお馴染みの「ウマ」(黄色くて二本足で円柱形の変な動物)は出突っ張りだし、伝説の剣豪は「橋本ゆうじ君」という名の食器用洗剤メーカーに勤める営業マンだし、川下大洋演じる「芋宮殿MITSURU」は23歳だしガラスの仮面読んでるし……とにかく、終始、笑わせるためだけのセリフがいちいちインサートされ、挙げ句、ストーリーは現実と虚構がないまぜになって捩れまくり、ステージにお客さんを上げて置き去りにしたりしているうちに話はどんどん進行していき、最後には「ああ、めっちゃわろたぁ」、という満足感だけが残る、後腐れのない、純粋に幸せな気持ちで帰路につける舞台でした。

大王の脚本が素晴らしいのは、「寓話的な教訓やメッセージを押し付けない」ところだと思いますが、この作品でも、物語の冒頭からラストまで、自殺しようとしている一介のサラリーマン・飯田(ラサール石井)と大王演じる「男A」の掛け合いがありますが、男Aは飯田の自殺を焚き付けはしても最後まで止めようとしません。最後は、自殺を諦めた飯田に呆れて旅立ってしまうほどですが、飯田が生きることを選んだのは、その男Aが語った「ダニ小僧とすみれ姫の物語」に大笑いして、死ぬのがなんだか馬鹿馬鹿しくなったからです。「充分説教臭いじゃないか」と思うかも知れませんが、舞台を観ていた観客全員が、彼に共感したはずです。
「そら、こんな話聞いたら、馬鹿馬鹿しくなるわなぁ」
男Aは、事実を話したまでで、この男を笑わそうなどとは全く考えていませんでした。「人の話を勝手に笑っておいて、それで死ぬの止めただなんて、ふざけるんじゃないよ」ってなもんです。

観た人に「何か」を植え付けるのではなくて、観た人の中に潜む「何か」を、ちょっとくすぐってくれる。大王の脚本の魅力に、改めて気づかされた舞台でした。

素晴らしい。超面白い。最高です。
そして、佐藤康恵ちゃん可愛い。

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