テレマン・アンサンブル at 高槻現代劇場レセプションルーム (Osaka)

この日は高槻現代劇場・レセプションルームテレマン・アンサンブルを観に行きました。

フォルテピアノの調律を覗き込む娘

テレマンの現代劇場でのサロン形式のティータイムコンサートに来たのは、2014年の公演以来2回目。今回は9歳の娘も連れていきました(が、終始退屈しまくりでした……)。

この日のプログラムは以下。すべてモーツァルト。

アイネ・クライネ・ナハトムジーク Kv525(散逸したメヌエットを代替曲で再構成した5楽章形式)
ヴァイオリン・ソナタ(ヴァイオリン伴奏のクラヴィア・ソナタ)第40番 変ロ長調Kv454

〜ティータイム〜

フランスの歌曲「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」による12の変奏曲
ピアノソナタ第11番イ長調Kv331 第3楽章「トルコ行進曲」
ディヴェルティメント Kv138
ピアノ協奏曲第11番ヘ長調Kv413

〜アンコール〜

ディヴェルティメント Kv136 第1楽章

演奏会は「フォルテピアノとクラシカル楽器で聴くモーツァルト」と題されており、会場にはフォルテピアノが開演前、幕間には綿密な調律を施されていました。実物のフォルテピアノは初めて見た気がしますが、白鍵と黒鍵が逆になっていたり、チェンバロっぽい細く奥行きのあるフォルムだったり、ペダルが足元ではなく鍵盤の底(つまり膝の上)にあったりと、なかなか魅力のあるディテールでした。音色は、ピアノよりも淡白で、音量も控えめな印象でした。他の弦楽器も「クラシカル楽器」と言っているのでピリオドということではないんでしょうが、あまりカーブの強くないボディ、ヴィブラートを控えた、こちらも淡白な演奏で、アンサンブルの響きは実に素朴な味わいがしました。現代的な豪奢な演奏に慣れすぎているのもあって最初は地味に感じますが、マスタリングをしていない素材のままの録音を聴くような、生々しい快さがありました。

この日の目玉と言えるのは、5楽章形式によるアイネ・クライネ。本来5楽章だったものが、第2楽章のメヌエットが失われた状態で長年演奏されてきていますが、テレマンのボス・延原武春が、ヨーロッパの友人(恐らくクラシックの研究をされている方)から「恐らくこれじゃないか」ということで紹介された楽譜を元に、この日は作曲当時の構成に戻して演奏されました。

感想としては、やはり4楽章で耳慣れすぎていて、しかもあまり当たり障りのないメヌエットだし、そもそもメヌエットは3(4)楽章にもあるし、ということで、特に印象的なものというよりは、冗長さが増したというのが正直なところでした。

その後のヴァイオリン・ソナタは、フォルテピアノとヴァイオリンによる、掛け合いのような演奏。まるで歌うようにスラスラと作曲したようなモーツァルトの天才性と無邪気さが現れるような、楽しげなムードがありました。これは楽器のチョイスとサロンコンサートの距離感が生み出す情感ではないかと思います。現代の楽器で弾いてしまうと、スケールが大きすぎて、とても立派な曲として圧倒的な存在感を放っていたと思うんですが、当時のモーツァルトは、こんな感じでホームパーティなどで披露していたのかな、と想像させるような雰囲気を醸し出していました。

後半、フォルテピアノのソロで2曲。「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」はいわゆる「きらきら星」ですが、この変奏曲も、次々と変奏を重ねる素朴な面白さが際立っていて、現在のポピュラー音楽での遊び心と通じるものを感じました。「トルコ行進曲」はテンポの揺れがチェンバロ的な演奏で、今のピアノほど強弱でのアクセントをつけない分、まだチェンバロの弾き方が残っているのかな、と思いました。

ディヴェルティメント Kv138は、延原氏が「ディヴェルティメントって言ったら皆さんご存知136でしょ。でもあればっかりやっててもしゃあないんですわ」と軽く笑いを誘っていましたが、確かにクラシックのコンサートは、集客を意識するあまり、定番曲に演奏が偏ってしまいがちではあるので、こういったことで聞き手の知見を広げていくことも大事ですよね。とは言え、本編終了後に136の第1楽章だけ演奏してくれたりしたので、やはりサービス精神も大事だなあ、と思ったりして。

本編最後のピアノ協奏曲第11番は、やはりピアノ協奏曲としては楽器編成的に物足りなさを感じてしまいました。これはピアノ協奏曲への個人的な思い込みというか欲求によるものだとは思いますが……。

とは言え、全体的には、延原氏の軽妙かつうんちく満載のMC、アンサンブルから醸し出される、なんとも言えない色気が堪能できた、とても充実した2時間でした。テレマンの演奏は、本当に魅力的です。

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