「カメラを止めるな!」は小劇場“の醍醐味”を映像化して大成功を収めた映画でした


今更ながら、ちょっとまとめておきたかったので。

僕は8/6に、TOHOシネマズなんばに「カメラを止めるな!」を観に行きました。
出だしで長回しがある超低予算映画、という以外にできるだけ予備知識を持たずに観ましたが、結論としては「小劇場演劇の面白さを映画化した作品」だということに至りました。それは、原案が小劇場演劇であるということだけではなく、その作り方、ひいては楽しまれ方にもそういう特徴が垣間見えるということです。

映画の幕が上がり、早速長回しのシーンから始まりますが、観ているうちにそこに映画を見ている感覚ではなく、小劇場の舞台を鑑賞している感覚が浮かんできます。それは、登場人物全てが初めて見る無名の俳優のため、初見の劇団を観に来たときの感覚が蘇ったこと、それでいながら各俳優の演技が非常に切れ味が良く、リハーサルや本番を重ねて完成されたような質感に見えたこと(セリフがアフレコでなかったのも演劇的な印象を強めていたかもしれません)、そして「そういえば舞台だったら、役者にとっては毎回2時間ぐらいワンカット長回ししてるようなもんだよな」とふと思ったことなどが理由に挙げられます。

ワンカットのシーンが終わり、劇中劇としての映画のシーンが終わると、低予算ぽい粗い画質から、鮮明な高解像度の画質に変わり、いわゆる「本編」が始まります。ここからは全く映画的に話が進められますが、それが徐々に前半の劇中劇の伏線回収に向かっていくことで、後半への期待が盛り上がっていきます。

そして後半、劇中劇の舞台裏を撮影していくシーンで、怒涛の勢いで前半ワンカットの映画がなぜああなったのかを見せていきます。役者全員が躁状態で時間に追われながら爆走し、畳み掛けるように笑わせていきながら、爽快なエンディングまで駆け抜けます。この部分も小劇場演劇の雰囲気があります。例えばドリフの「全員集合」でも吉本新喜劇でも、舞台演劇であることを思い出していただければ、後半、畳み掛けるような笑いの仕掛けで怒涛の展開を見せるパターンがあるのを記憶している人もいるかと思いますが、笑わせるタイプの小劇場演劇は、後半に向かって笑える要素の感覚を狭めていき、最後は前半の伏線を回収しながら次々と笑わせ、間断なく劇場を沸かせるという手法が少なくありません。

この映画を見て連想したのは三谷幸喜監督第1作「ラジオの時間」でしたが、こちらも舞台の映画化であり、後になって「カメラを止めるな!」の監督がテレビ出演時に、影響を受けた作品の一つとしてこの映画を挙げていたのには、我が意を得たりと思ったものです。

より重要と思える共通点として、多くの人が事前のネタバレを避けて鑑賞した、という点があります。これは、小劇場演劇の多くが、そもそも事前情報がないまま観るものだという点と共通します。つまり、実際に始まってみるまで、ものによってはどんな内容なのか全くわからないことすらあるのです。僕も過去に、フライヤーを観て面白そうだと思って観に行った舞台が、フライヤーの内容とはすっかり違う脚本になっていたという経験すらあります。これは、公演が決まった際にはまだ脚本ができていないことから起こり得ることですが、それほど小劇場演劇は事前に知り得る情報がなく、また短期間の公演が終わればそのほとんどが再演されることもなければソフト化されることも稀なため(本作の原案「GHOST IN THE BOX!!」はこれを機にDVD化されるみたいですね)に、全く新鮮な気持ちで楽しむことができるのです。

上記のような理由で、小劇場演劇の例として具体的な例をあげるのが難しいですが、僕がこの映画を見て思い出したのは、ラーメンズの「同音異義の交錯」でした。

この、一つの言葉の意味が見方によって違う形で捉えられるというのは、他の舞台でも見られますし、こういったオムニバスで進行するコントの舞台でも、複数のコントが最後に収束して一つの大きな流れを作って盛り上げる手法は珍しくなく、そういう意味でも、「カメラを止めるな!」の構造が、映画館を生の劇場のように捉えた楽しませ方を意識しているものだと考えられます。

これが、映画評論家目線から見た時に、革命的に見えたり、逆に昔からある手法だと冷淡に捉えられたりする理由なのではないかと思います。

あと、役者さんたちがマメに舞台挨拶に行かれているのも演劇的ですね。小劇場演劇だと、終演後の役者さんの素のトークがとても楽しみなんですよね(それを嫌がって軽い挨拶だけしてそそくさと袖に引っ込んじゃう人も多いですが)。

というわけで、この映画をきっかけに小劇場へ足を運ぶ人が増えると良いなと思います。この映画が楽しめる人なら、きっと楽しめると思います。

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