「指動かすより声出す方が疲れませんか」とスマートスピーカー市場の盛り上がりに思う

LINE、Google、Amazon、と、日本でもスマートスピーカー市場が日本でも形になり始め、音声検索も盛り上がってくるのでは……という風潮になってきておりますが、多くの日本人と同じく、僕は懐疑的です。

「「音声検索なんて恥ずかしい」と思う人の盲点」という記事で「iPhoneが発表された時だって、日本では流行らないと散々言われてたのに結果は大ヒットだった」ことを例に挙げていますが、音声検索という「前例のないもの」と違い、携帯市場には「i-mode」という「前例」があったわけで、条件が違うように思います。

加えて言えば、当時の「iPhoneは日本で普及しない」は実は本国でも同じ反応があり、iPhoneを耳に当てて電話をする、という、今では当たり前のシチュエーションを捉えた映像が、iPhoneを小馬鹿にしたジョーク映像として出回っていたぐらいですので、現在の「音声検索は普及しない」とは質が違うのではないでしょうか。

そして、記事内に記されている他の「市場調査とは真逆の結果になった」ヒット商品・サービスについても、一つ一つ振り返ってみると、その条件の違いが見えてきます。

まずFacebookですが、「実名やプロフィール写真の文化」はミクシィが先行していて、「実名招待制」で始まり、爆発的に普及しました。インスタの自撮り、ユーチューバー人気は、「リア充」と「非リア充」の間にある「壁」を明確にしました(一時期流行語のようになった「バカッター」にしても、「リア充」の人たちだけの世界の出来事です)。「携帯電話でメールやインターネットを使う」ようになったのは、「音声」よりも「メール」が楽・便利だと気付き、インターネットと接続することで携帯電話によってクローズドな自分の世界に浸ることができることに心地よさを覚えたからです。

もうひとつ気になるのは、先ほど「前例のないもの」と書きましたが、それは真っ赤な嘘で、音声検索はとっくにスマホユーザーの手元に「OK Google」「Siri」という形で届いています。つまり、普及しないもなにも、「とっくに普及している」のが現実です。問題は、にもかかわらず「普及するかどうか」が論じられている点です。なぜか。それは言うまでもなく「誰も使ってない」からでしょう。すでに使えるものを全く使っていないのに、スピーカーとして外部に設置すると使うようになるでしょうか。なる場合もあるでしょう。でも、僕だったら「スピーカーとして外部に設置する」ということを少し反芻して、ゆっくり深呼吸をした後、スマホの画面に表示された購入ページを閉じてしまうと思います。

以上のことに加え、個人的には「音声検索なんて恥ずかしい」と思うし、その恥ずかしさを乗り越えたところにある利便性が、音楽再生や天気予報やアラーム程度のことであれば、「間に合ってます」としか思えないので、僕は懐疑的です。

ただ、「懐疑的」は「否定的」ではないので、普及の可能性はあるんだろうなと思っているのも事実です。それは、上記記事でも「自分のスマホを持っていない息子たちは、すぐに音楽再生や天気予報、アラームの機能を使いこなすようになりました」と書かれている通り、僕のようなロートルではなく、デジタルネイティブの若者たち、そして、前述した「リア充」たち、LINEやインスタの普及を引っ張ったビビットな人たちに響けば、一気に普及するのかもしれません。

とは言え、スマホアプリではなく具体的なデバイスを購入することが条件となるので、これらの層の人たちが購入のステップに進めるかは、米国のように「クリスマス」、日本だと加えて「お正月」にかかっているでしょう。

問題だと思うは、今のところ各社「スマートスピーカーをいかに売るか」という「プロダクト・ファースト」での発想が目立つところです。10代、20代を取り込むには「モノありき」からどこまで歩を進められるかが重要なのではないかと思います。特に、「日本は出遅れてる」という煽りは、「出遅れててなにが悪いの」という反発を誘うだけではないでしょうか。

さて、僕が求める理想のゴールはと言えば、ざっくり言えば「スマートウォッチと同じ道を辿る」です。つまり、スマートスピーカーは売れなかったけどスピーカーが改めて見直されて、コンパクトなオーディオスピーカー市場が活性化する、という未来なんですが、まあ、それこそ難しいかもしれませんね。

……と書いていたところで、客観的なデータが出ていたので見てみます。MMD研究所による調査データによると、スマートフォンの音声入力機能を使ったことがあるのは6割強。しかも「普段から」「時々」を合わせた利用者の割合は50代以上が最も多いという結果。最も多い60代で5割弱、最も少ない30代は3割弱という数も想像よりもかなり多かったです。

興味深いのは利用シーンで、一番多いのが「テレビを見ている時」ですが、それと競っているのが「自転車で運転している時」「歩いている時」。どちらも「ながらスマホ」が禁止されているシチュエーションです。音声入力の用途のトップが「地図/ルート検索」で、次いで天気予報、ニュースとなっているので、外出時に目的地までのルートを調べる、という使い方が最も多いようです。

さらに、スマートスピーカーの認知度を見ると、なんと7割弱が知らないという結果。こちらは逆に、もっと知られていたと思っていたので驚きました。そしてスマートスピーカーへの興味度は、こちらは想像に近く、10代が最も高い約4割。スマホの音声入力に反して、60代が最も低い数値になっています。単純化してしまえば、スマホの音声入力に満足している人は、スマートスピーカーには魅力を感じず、スマホの音声入力にそれほど関心のない人はスマホスピーカーに期待感がある、と捉えられるでしょうか。認知度アップは早めに手を打つべき課題でしょうが、スマホの音声入力とスマートスピーカーとの間にあるニーズのギャップについては熟考の価値があるのではないでしょうか。

数年後、スマートスピーカーが普及している/していない未来に向けて。
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