高級オーディオは“シェアする”時代、に、なってほしい

「広い国で「小さな家」に住む」

オーディオ業界では、スピーカーの小型化が顕著らしい。一昔前の豪奢なオーディオルームというものが流行らなくなってきたことに端を発するそうで、背丈を超えるような重量級の巨大スピーカーを自宅に置くのは日本人でなくとも現実的ではなくなってきているらしいです。

オーディオはよりコンパクトに、そして専用の部屋をあつらえるのではなくて、生活空間と一体化した形でのリスニングスタイルが増えてきているとのこと。「それ普通じゃん」と思うのは我々庶民のリスニングスタイルは昔からずっとそうだからなんですが、ことオーディオマニアにおいては、部屋の壁を貼り替えるだの床をめくるだの電気配線を変えるだの専用の電柱建てるだのと、音楽を聴くためにリフォームして、防音してないとひと目盛りもボリューム上げられないようなアンプとスピーカーを設置するのが仕事だったわけです。そうでなければ、ゼロが7つも付くような値段のスピーカーや仏壇みたいに巨大なモノラルアンプなんて存在する意味がないわけです。

しかしそれがいよいよ居場所を失いかけているのかも知れません。上記記事は、そんな話を聞いたところだったのでさもありなんと思ったわけです。359度回転する家をオーディオマニアが購入するかは別としても、やはりオーディオも巨大化の道を後退させなければ、名実共に時代錯誤な存在になってしまうことでしょう。

随分前から、それこそ「若者の○○離れ」が雨後の筍のように何にでも付けられるようになる遥か以前から、オーディオは若者離れが著しいジャンルでした。離れ過ぎて、その存在を知らない人が殆どであるというぐらいの救いようのない状況なわけですが、僕がピュアオーディオ視聴会(10月に久々にやるのでよかったら遊びに来てください。詳細決まったら当ブログやTwitter等でご案内します。レコードブーム後初の開催なので、時勢に即した形でバージョンアップした内容のものをやりたいなと思ってます)やHOPKEN試聴会で若い方々に向けて高級オーディオで音楽を聴いてもらうイベントをやりながらつくづく感じたのは、「ここまで高級で立派なシステムを、個人が所有するということはその時点で間違ってるんじゃないか」ということ。昔は社会人になってコツコツ貯金して、まずはアンプを買い、それから次にスピーカーを、それから……と気の長い散財をされる方が沢山いたそうですが、趣味の多様化、そして当時のように「年功序列で給料が上がる、老後は年金で暮らせる」という時代が完全に終わってしまった今、これは、誰かが趣味で買って自室で聴くものではなくなってしまったと言って良いのではないでしょうか。

つまり、「シェアする」という考え方を、オーディオも身につけなければいけないと思うんです。家も、車も、シェアルームだカーシェアだと言っているのは、やはり購入費、維持費が個人の収入と釣り合わなくなってきたからでしょうし、ならばオーディオだってその道を歩むという手もあるでしょう。

そうなると、オーディオシステムの持ち主は個人ではなく、企業や団体となるわけです(そういう意味でも、「むくの木ホール」のように、個人の資産を地域に還元するような仕組みというのは、本当に素晴らしいと思うんですよ)。

ピュアオーディオ視聴会の初期に、よく「カラオケボックスのひと部屋がオーディオルームになっていて、レコードをいい音で聴き放題だったら絶対行きたい」なんて話をよくしていましたが、今カラオケボックスは勉強部屋代わりに使う学生や、オタ会をやるためのパーティルームに使っているぐらいなので、一室ぐらいオーディオルームに貸してくれるんじゃないだろうか、と、何となく機が熟してきたような気がしています。やっぱり防音設備がないとオーディオは難しいから、後はホテルという手もあると思うんですね。大体の部屋は昼前後は誰も居ないわけですし、受付で1時間いくらの利用料を払って音楽を楽しんでもらえばいいじゃないの、と。

問題は機材のメンテナンス、特にレコードの場合は針が繊細過ぎるので、ここがネックになってしまうかも知れないんですが、ヘッドシェルは持参、というところで線引きすれば大丈夫かも。もしかしてレーザー・ターンテーブルだったら……。

というわけで、ホテルのオーナーさん、カラオケボックスの運営の方、「オーディオ試聴ルーム」やってみませんか。

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