現代音楽コンサート「鉄道と音楽の夕べ」 at アートエリアB1 (Osaka)

この日は、鉄道芸術祭vol.4「音のステーション」の関連イベント・現代音楽コンサート「鉄道と音楽の夕べ」に行って来ました。

鉄道と音楽の夕べ・会場

アートエリアB1は駅からの電車の音や構内アナウンス、改札の音などが聞こえてくるようなところで、こんなノイズの多いところで大丈夫かな……と少し心配しつつ開演待ち。

この日のプログラムは、

鉄道(アルカン 山根明季子編曲、弦楽四重奏版)
鉄道のエチュード(シェフェール)
ディファレント・トレインズ(ライヒ)

の3曲。

演目や場所柄もあってか、いつものクラシックのコンサートと比べれば年齢はかなり若め、女性多めという客層。

弦楽四重奏は生音ではなくそれぞれマイクを取り付けてPAからの音を鑑賞。外と完全に分断された部屋ではない会場なので、やはり、少しざわざわとした音の中で生音は難しいのでしょう。

アルカンの超絶技巧ピアノ曲が、弦楽器によってより鉄道らしいディテールを増幅していて、まるで列車が唸り、軋みを上げ、汽笛を鳴らし、線路の上を疾走するかのようでした。めまぐるしく高速に奏でられるフレーズは滑車の猛然とした回転を彷彿とし、時折発する歪んだボウイングはブレーキ音を生々しく想起させます。力強く、時に荒々しいサウンドは、生音ではなくPAだからこそ、より本物の迫力を表現できていたのかもしれません。

上演前と中盤”鉄道のエチュード”は有馬純寿と江南泰佐の二人による、音楽と鉄道に関するトーク。興味深い話もありましたが、進行が終始ぎこちなく、客席の大人しさも話の流れとあまり馴染んでおらず、なんとなく冗長気味でした。”鉄道のエチュード”は有馬氏によるリマスタリングを施したものをPAで再生したものでしたが、そんな流れもあってか、今ひとつ新鮮さが感じられませんでした。

最後の”ディファレント・トレインズ”は、録音された弦楽四重奏の音とインタビュー音声、そして楽章構成と音声のテキストによる映像に弦楽四重奏の生演奏が乗るという形式。同曲を録音されたものだけで聴いていると、どこまでが録音された弦楽四重奏で、どこからが後から演奏された弦楽四重奏なのか判然としませんでしたが、実際に演奏しているのを見ると生演奏の部分はかなり断片的で、しかも頻繁に拍子が切り替わるので、集中力、記憶力、瞬発力など、あらゆる能力が問われるハードな演目だというのが伝わってきて手に汗握ります。実際、乗り遅れそうになったり脱線しそうになる瞬間も何度かあり、必死でついていっているという雰囲気も無いではなかったですが、最後まで曲の世界観をしっかりと保ったまま演奏し切ってくれました。

それにしてもすごい作品だなぁ、と改めて。ドライでシンプルな言葉と演奏の中に、深い哀しみや恐怖、怒りが渦巻いていて、第3楽章の最後、美しい声の少女が出てくるところで景色が色付くような錯覚が起き、まるで2時間近い戦争映画でも観ていたかのような軽い疲労感すら覚え、当時の彼ら登場人物の状況に思いを巡らせていると、胸の奥から込み上げてくるものがありました。

演奏も音響も、決して理想的なものとは言えなかったとは思いますが、それでもこの作品をクラシックのコンサートホ―ルでない場所、企画で取り上げ、演奏したことは大変価値のあることだったのではないでしょうか。

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