極楽駐屯地 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)

この日は旧グッゲンハイム邸で行われたイベント「極楽駐屯地」に行って来ました。

極楽駐屯地でのBIOMANのDJ

朝から接近中の台風の影響で強い雨が続き、様子を見て雨の上がったタイミングで出発。微妙に遅れて、旧グに着いたころにはムーズムズが既に演奏中でした。

ムーズムズを見たのは約2年ぶりでしたが、音源を形にしないまま、レパートリーも大きく変えることなく、京都という地でひたすら磨き上げ、それでいて熟成ではなくフレッシュさを維持しているようで、観る度に音のクオリティが上がっているような感触もあり、最早京都に留まっていることに違和感を覚えるほどの完成度になっていました。ギターは音の隅々まで完璧に制御されてるし、ドラムスはボキャブラリー豊かに聴き手の身体を揺さぶってくれるし、鍵盤はミニマルに刻んでクールさを高めてくれているし、ほんと聴き応えがあります。相変わらずボーカルの声質はちょっと苦手なんですが。

この日のお客さんは女性がかなり多め。特に前方スペースに座ってるのは全員女性という感じでしたが、意外にアウェイ感も無く、落ち着いた雰囲気の方が多く、柔らかい空気が漂っていました。主宰の谷本くんの人柄によるものでしょうか。

音響はお馴染み西川文章の、演奏者と楽器の鮮度を感じるような瑞々しく力強い音。若干声が届かない感じはありましたが、各バンドを支える安定感、安心感は文章氏ならでは。

VIDEOTAPEMUSICは、イントロの鳥の鳴き声や波の音だけでとろけてしまいそうなトロピカルムードを放っていましたが、映像と共に演奏が始まると、その魅惑的な世界にうっとりとしてしまい、溜息が出そうなほど。前回観た時はVHSデッキにカセットテープを曲ごとに入れ替えるようなオペレーションでしたが、この日はサンプラーにアサインしたものを操作しているようでした。VHSをガチャガチャしてる方が視覚的には好みでしたが、いつもはどちらがメインなんでしょう。まだ2回しか観てないので分かりません。

エネルギッシュゴルフは関西初ライブということで、僕ももちろん初見でした。

インストを主体にしながら時に歌ともつかない短いフレーズやシャウトが挿入されるところはSAKEROCK的ですが、突如難解な変拍子がユニゾンで飛び出すところはHOSOMEっぽくもあり、曲が頻繁にブレイクしたりカウントではなく呼吸で音を合わせるところはZAZEN BOYSも彷彿とさせる。でもペンタトニックないなたいメロディが出るところなどはneco眠るの感じも持っていたりも。実際のところ、それらに共通する“ユーモア”は、それこそたっぷりと(東京流の捻りを効かせて)含まれているんですが、彼らは楽曲の長さが驚くほど短く、始まったと思ったらあっという間に終わってしまいます。四つ打ちでなかなかいい感じのフレーズが出てきて、これなら10分ぐらい繰り返してくれても充分踊れるな、と思っていても、突如忙しく音が上下してスパッと終了してしまいます。技術は卓越しているのに、そこに聴き手の感心が届く前に、曲の終止感も薄いまま次の曲へと進むその潔さを観ているうちに、これは曲の持つ魅力を、自己陶酔的な冗長な演奏やダンスミュージックのような機能性に飲み込ませないためではないか、と思いました。本当にそうかは別として、こういったインスト主体のバンドで、一見過去のもののパッチワークに思えるようなサウンドの中で、まだこれだけ面白いことが出来るんだな、という新鮮さがありました。

トリは、ホライズン山下宅配便。“厚着のモンプチ”に始まり、音源化されていない曲や新曲も披露しながらも、“甲子園”、“期待”、“レーズンパン”、“ロートホルン”と人気曲たっぷりで、まるで海外のベテランバンドの来日公演を観るような「あの曲やってくれた」的な興奮に包まれていました。

何より、バンドの音が凄まじくグルーヴィ。特に倉林哲也のドラムスの音のデカさと、ライブ用にアレンジされた手数の多さは強烈で、飄々としながらも一筋縄ではいかないリズムを刻む河合一尊のベースと、カッティングをしてもチョーキングをしても超一流な伴瀬朝彦の極上のギターと絡むことで、たまらない快楽を生み出します。昨今、すっかり消費され尽くして均一化と形骸化が甚だしい「ロック」ですが、僕が知ってる本物のロックの音ってこれだよ、と叫びたくなるほどでした。

そして、まるで言葉がゆらゆらと泳ぐような黒岡まさひろのMCは、相変わらず聴き手の予想を無効化し、期待の斜め上を突き進みます。あまりの藪から棒ぶりに驚きながら笑っていると、突如お客さんも強制的に(文字通り)引っ張り込んでしまう、遊園地のヒーローショーもかくやというハプニングの名手は、この日も“期待”で前回同様扉を開け、その時に開け具合がまずかったのか閉まらなくなってしまい、管理人を動揺させます(既に夜の10時を回っていることもあり、周囲の民家にホライズンの爆音が轟いてしまうのは大変危険だと思います)。それを見て黒岡氏は、「開けた扉は誰かが閉めてくれる。我々の役目は扉を開けることだ。我々は皆さんの心の扉を開けに来た」といったようなことを言い始め、それがまた会場の活性に拍車をかけ、後を引くようにダブルアンコールも起こってしまう盛り上がりを見せました。

終演後は天気も心配だったので逃げるように帰ってしまいましたが、今年観たイベントの中では、抜群に楽しかったです。正直、今年に入ってから、期待して観に行ったライブだったけどいざ観てみるとどこか醒めた気分で観てしまっている、ということが重なり、自分は音楽に飽いてきてるのかな、とすら思いましたが、この日は、幕間のBIOMANによるエキゾなDJも含めて、全身で入り込んで、心底楽しむことができました。やっぱり、楽しいイベントは、楽しいんだなあ。

期待
期待 ホライズン山下宅配便

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