いずみシンフォニエッタ大阪 第33回定期演奏会 at いずみホール (Osaka)

この日はいずみホールに、いずみシンフォニエッタ大阪の第33回定期演奏会を観に行きました。

いずみホールのパイプオルガン

この日僕が座った座席は、前方4列目で左右位置はほぼ中央。ステージを若干見上げるような高さで、後方のヴィブラフォンは手元が殆ど見えなかったのは残念でした。

この日の演目は以下。

ピアノ・フェイズ(短縮版)(ライヒ)
ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲(ライヒ)
セロ弾きのゴーシュ(川島素晴)
ラメント(ソッリマ)
動物の謝肉祭(サン=サーンス)

開場時間から少し過ぎた頃にプレ・コンサートとして、音楽監督の西村朗による前説に導かれて“ピアノ・フェイズ”を約10分に短縮して演奏。まだ座席が埋まり切らず、扉が開いていたりお客さんが続々と入ってきたりと、ホ―ル内の空気が安定していなかったので若干聴きづらい部分はありましたが、ステージ上の研ぎすまされた緊迫感はひしひしと伝わってきました。

2人のピアニストが同じフレーズの繰り返しをユニゾンで弾き、途中からひとりがわずかに速く弾くことで、ズレた2つの演奏がモアレのようなフレーズの変化を生み出すという曲で、アフリカ音楽のようなポリリズムを感じさせたり、ハネたりつんのめったりとめまぐるしくリズムがモーフィングしていく様子は面白く、シンプルな構造でありながら考え尽くされていることが伝わってきます。

そしてそれを聴き手に伝える奏者の強靭な演奏力は、理解を超えるほどのものでした。ユニゾンで弾いている時はひとりが演奏しているかのように寸分違わず同期し、ズレはじめたら今度はMIDIデータ上で操作したかのように極めて精密にズレていき、やがて再びピッタリと同期するところまで戻って行く……メトロノームも指揮も無く、ピアニスト二人のみで演奏されているということに、ただただ驚くばかり。「高度に発達した演奏は、魔法と見分けがつかない」とでも言いたくなります。しかし、世の中にはこの曲を独りで演奏する人もいるそうですから、上には上がいるものです……。

その後、西村氏と指揮者・飯森範親二人によるこの日の演目の解説を挟んで(“ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲”は、反復が多いために譜面を追いながら見失いそうになる、一度演奏するとその日はもう無理というぐらい大変、などの期待を高めるような話など。アメリカ人は小さい頃から、学校で何か失敗すると「もうしません」と黒板に何十回と書かせるなど、教育の中に反復が浸透していることが、ミニマル・ミュージック誕生の土壌となったのでは、という話はちょっと面白かったです)、本編へ。

“ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲”は、4台のヴィブラフォン、2台のピアノ、3組のストリング・カルテットで演奏される曲で。この曲に限らず、ライヒの音楽は、音源のみで聴いている分には、テクノやエレクトロニカのようなマシーン・ミュージックの高揚感を覚えるものとして、どこか自動演奏を聴いているような陶酔をしてしまっていましたが、眼前で演奏されているのを見ると、フレーズの変化に合わせて指揮者の身体が大きく動き、ストリングス群の弓の動きを見ているだけで曲の構成が伝わってくることに新鮮な驚きがあり、奏者は譜面と指揮者に目を走らせながら全身を引き締めて完璧に音を制御しているのを見ながら、同曲が非常に視覚的かつフィジカルで生命力溢れるものだということを強く感じました。

セットチェンジのための20分休憩の後、川島素晴作曲による“セロ弾きのゴーシュ”へ。宮沢賢治の同名小説を元に、現代的アレンジを加えたストーリーとオリジナル楽曲によって構成された、演劇と演奏を掛け合わせたような演目。チェリスト・丸山泰雄演じるゴーシュは、本番前日に渡された新曲の譜面を、本番に間に合わせるために徹夜で練習。そこへ様々な動物が訊ねてくる、というあらすじ。話も子どもっぽいと言えば子どもっぽいし、プレーヤー自身が演技をすることにも不安があり、いたたまれない感じだったらどうしようかと心配していましたが、丸山氏含め何方もなかなかの役者ぶりで、物語の柔らかさも、演奏とダイナミックでスリリングオリジナル楽曲のハードさが強いアクセントになり、聴き応えも十分。最後、原作で演奏される“印度の虎狩り”にあたる曲として、ジョヴァンニ・ソッリマ“ラメント”を披露。ソッリマについても楽曲についても全く知りませんでしたが、唸り声をあげながらの重々しいボウイングから、弦を激しく叩き、擦る獰猛なプレイまで、終止猛獣が目をギラギラさせながら獲物と格闘しているようにも聴こえ、“印度の虎狩り”にピッタリな壮絶な演奏でした。

最後の“動物の謝肉祭”は、ここまでの演奏でほぼお腹いっぱいの状態だったのもあり、面白みに欠ける印象に。僕ももう少し、本編内で取り上げられる元ネタについて知っていたり、大編成での演奏に聴き馴染んでいればもうちょっと違った感想もあったかも知れませんが、この日の段階では、ライヒと丸山氏のソッリマのインパクトの前に霞んでしまいました。

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