3.11から3年後の今と、試聴会のこと

黙祷

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あの日から3年が経ちました。まだ「記憶に新しい」と誰もが言える程度の時間の経過ですが、周囲のムードは放射能よりも先に「半減期」が来ているように感じます。

実は3月の試聴会は、当初「3.11後の日本と音楽」というテーマで行う予定でした。

関西圏だけのものかどうかは分かりませんが、原発問題に対しての意識のトーンダウンが激しく思え、つい1、2年前は顕在していたムードがすっかり「潜在」してしまったように感じます。2ヶ月ほど前、品川駅に降りた時に目に入った無数のデジタルサイネージの絢爛さからして、さほど大差はないのではないかという気がします。

僕自身、できる範囲でできることをやろう、とはしていますが、その範囲があまり広がらず、むしろ狭まっているように思います。

普段、電気の使用はできる限り抑え、まだ小さい娘がいることもあり、日々口にするものは、説明、原材料、産地の記載などを確認して、(自分の周りの方々に比べれば)厳しく選んでいるつもりですが、ふと気が緩んで安易な選択をしていることがあります。

正直言って、疲れてしまったわけですが、その疲れの理由は、「自分だけ必死になってる」ような気がするからです。右を見ても左を見ても、電気は使い放題、誰も産地や原材料を意識せずに買い物をしている……。

でもそれは、単に可視化されてないだけなんじゃないのか。みんなやってるけど、目に見えて行動が分かるものじゃないだけなんじゃないか。

そう思うきっかけになったのは、2012年3月11日の旧グッゲンハイム邸でのイベントについての感想をブログに書いたことでした。もっと言えば、そこに付いたコメント、そのことを後に杉本くんと話していた時に彼から聞いた言葉でした。

「普段、ライブ会場とかで、原発の話とか滅多にしないし、なんとなくしづらい雰囲気もある」

でも一方で、官邸前抗議やサウンドデモ、いくつかの反原発のイベントなど、多くは「音楽」が下支えしてくれていたものだという実感があります。大友良英氏は「音楽家は無力、それどころか無力であるべき」というようなことを言っていましたが、それはおっしゃる通り。ただ、音楽と共に育ってきた人、音楽に力を貰ってきた人、いつも頭の中で音楽が鳴り響いている人。そんな人たちの存在がデモや抗議を大きくしていき、社会現象にし、原発問題を風化させずに踏ん張るための大きな力として働いているような気がします。もし日本において、音楽が今のような存在ではなかったら、もっとゾッとするような状況になってしまっていたんじゃないだろうか……と思います。

あれから3年、何も解決していない、むしろ悪化すらしている現状を改めて、中でも「音楽」が関わった様々なトピックを通して一度振り返ってみるのは有意義じゃないだろうか、という思いから、冒頭の「3.11後の日本と音楽」という試聴会を考えていました。ただ、関西では「潜在化」が著しく、お呼びするゲストが思いつかない(あまり具体的に反原発などの活動している人ではなく、あくまでも表立ってその手の発言・行動を積極的にしていない人にしたい、と僕たちで決めたコンセプトが足枷になっていたんだろうと思いますが)ため、一旦棚上げすることにしました(この企画はいつかやりたいと思っていますが、誰かにやってほしいなとも思っています)。

その後、全然別ものの企画として3月23日の試聴会は決まりました。今回の企画は、前述のいきさつとは全く関連のない内容です。

今、その試聴会の準備で、過去のシャムキャッツのインタビューを改めて読み返しているんですが、彼らのインタビューでは震災後、繰り返し原発問題に触れられていて、「GUM」時のインタビューでは夏目さんが「(音楽に)原発関連のことを入れたい派」とまで言っていました

ただ、当時はあまり直接的に入れることを避け、“ビキニ”のように曲名に辛うじてその名残が見える程度に留めているようですが、それが事故から3年後のシングルに収録された“象さん”で、かなりストレートに言葉にしているというのは興味深いです。

そして読み返す中で、「東京も被災地だった」ことがまざまざと蘇ってきました。

シャムキャッツが切れ目無く、今も原発問題に触れざるを得ないように、柳原陽一郎が3.11への想いを歌い続けるように、東京では今も眼前に厳然として立ちはだかっていることを、ここ数日で垣間見たような気がします。

先ほど、今回の試聴会は、3.11企画のいきさつとは全く関連のない内容だと書きました。しかし、3月23日は、やはり少し触れさせてもらいたいと思っています。

以下、当初3月に開催予定だった「3.11後の日本と音楽」のための資料として整理していた、この3年間の年表を載せておきます。

2011年
3月11日 震災発生
3月12日 テニスコーツ@旧グッゲンハイム邸
4月1日 ピーター・バラカン、ラジオでRCサクセション「ラヴ・ミー・テンダー」のオンエアを局から止められていたことを告白
4月7日 斉藤和義「ずっとウソだった」公開/削除
4月13日 脱原発デモ@渋谷・原宿
4月18日 ECD「反原発REMIX」公開
4月19日 トリオ ザ キャップス&wiz24「かえせ!地球を 2011」公開
4月20日 七尾旅人「圏内の歌」初演
4月27日 関電包囲行動開始
5月5日 RANKIN TAXI「原発がっかり音頭」初演
5月11日 RANKIN TAXI & DUB AINU BAND「誰にも見えない、匂いもない 2011」公開
6月12日 「東北ライブハウス大作戦」始動
7月6日 二階堂和美「にじみ」リリース
7月13日 naomi & goro & 菊地成孔「calendula」リリース
7月31日 サウンドデモ「ナツダツゲンパツ」開催
8月15日 「世界同時多発フェスティバルFUKUSHIMA」開催
8月15日 「FREEDOMMUNE 0」開催中止
8月22日 FRYING DUTCHMAN「humanERROR」リリース
9月 「TAIYO33OSAKA」発足、首都圏反原発連合結成
9月2日 野田内閣発足
9月18日 「AIR JAM2011」開催
10月12日 ROVO×System 7「Phoenix Rising」リリース
12月21日 ソウル・フラワー・ユニオン「キセキの渚」リリース

2012年
2月8日 抗議アクション開始、「TwitNoNukes大阪」発足
3月10、11日 「IKITSUGI / SHOS / HOP KEN 合同企画」開催
3月19日 関西電力本社前抗議開始
4月4日 CLUB NOON摘発
5月30日 (仮)ALBATRUS「Albatrus」リリース
6月1日 橋下徹大阪市長、大飯原発再稼働を容認
7月1日 坂本龍一「ODAKIAS」公開
7月3日 MAGICAL CHAIN CLUB BAND「アリガトウ サヨナラ 原子力発電所」公開
7月5日 大飯発電所再稼働
7月7日、8日 「NO NUKES 2012」開催
7月29日 国会議事堂包囲
8月11日 「FREEDOMMUNE 0」開催
9月15、16日 「AIR JAM 2012」東北で開催
10月24日 cero「My Lost City」リリース
12月16日 衆議院選挙・東京都知事選挙
12月20日 「THE SOLAR BUDOKAN」開催

2013年
2月 レイシストをしばき隊結成
4月1日 あまちゃん放送開始
7月4日 三宅洋平「選挙フェス」開始
7月14日 NO MORE FUCKIN’ NUKES 2013開催
7月21日 参議院選挙
8月17日 柳原陽一郎「ほんとうの話」リリース
9月7日 2020年「東京オリンピック・パラリンピック」開催決定
11月27日 「Pound For Pound Vol.3(」(仮)ALBATRUS「DEMO」収録)リリース
11月30日 「SAVE THE CLUB NOON」公開

2014年
1月20日 ピーター・バラカン、都知事選を前にラジオで原発に触れるなと局に言われたと発言
2月9日 東京都知事選挙

https://www.youtube.com/watch?v=YO75IR4SZik

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