菊地成孔、丈青、秋田ゴールドマン、本田珠也 at Mister Kelly’s

この日はMister Kelly’sに菊地成孔、丈青、秋田ゴールドマン、本田珠也によるセッションライブを観に行きました。

菊地成孔、丈青、秋田ゴールドマン、本田珠也Premium Sessions

会場は初めて入ったハコでしたが、ブルーノートを小さくカジュアルにした感じでなかなかの居心地の良さ。ステージのプロジェクターでゴダールの「勝手にしやがれ」がかけられていました。チャージが高いのと禁煙も分煙も無いのでステージ切り替えの間にフロアが紫煙塗れになるのが玉に瑕、といったところでしょうか。

会場内の年齢層は場所柄やチャージの設定もあってか結構高めで、見るからにジャズ好きと分かるような服装の紳士も数名見受けられるような、ジャズクラブ然とした雰囲気。会場入りして案内されたテーブルは四人掛けに独り客が集められるような形となっていて、その席は全員僕より歳下でした。福岡から来たというSOIL & “PIMP” SESSIONSファンの女性に話しかけられたのが呼び水となり、幕間に親交を深めつつ、開演を待ちました。

1stステージはモンクの“Straight, No Chaser”で始まり、スタンダードや季節柄のクリスマスソング(“Santa Claus Is Coming to Town”。でしたが、最後に曲名をいわれるまで分からないぐらいのアレンジでした。そういえばサックスソロの最後の方で“Jingle Bells”がちらっと出てきてたような)などをモードにアレンジしての、MCも控え目のビターなセット。

関西には自身のパーマネントなバンド以外では滅多に来ない菊地氏の、イレギュラーで、しかも客演に近い形での演奏はかなりレアですが、そんな前置きを抜きにしても丁々発止で前のめりにインタープレイを繰り広げるバンドのテンションは凄まじく、サックスもピアノもドラムスも終始激しいソロを弾き続けてるような演奏を繰り広げ、まるで互いに自分の音をフルスイングでぶつけ合うような迫力。互いにどんどん加熱し、ベースがキープするリズムからどんどん軌道を外していきながらも、最後にはビシッと戻ってくる完璧さも惚れ惚れしてしまいます。

自己主張が真正面からぶつかり合うようなハードなセッションを聴きながら、氏のパーマネントなバンドは、良くも悪くも「菊地成孔のためのバンド」なんだな、ということを強く感じました。

2ndステージは1stと打って変わって幕開けから菊地氏のMCで始まり、そのままバンド演奏をバックにラップを披露。もしかして関西でラップするのは初めてでしょうか。 その後もソロをリレーするオーソドックスなハード・バップスタイルで演奏する曲あり、けものの青羊をゲストに迎えてのバラード(“My Foolish Heart”)あり、本編ラストにはクインテット・ライブ・ダブダブ・セクステットでも披露していた“pinocchio”、さらにアンコールではチャーリー・パーカーの曲(“Mohawk”)をカバーしたんですが、菊地氏はパーカーのソロを高速スキャットで最後まで歌い切るという離れ業を聴かせる……とバラエティに富んだ盛り沢山の内容でした。 1stと2ndで選曲は違うだろうとは思っていましたが、まさかここまで大幅に差があるとは思いませんでした。

温まったバンドの演奏は1stよりも熱い上にお客さんも1st以上に活性が高く、最後は大喝采の中終幕となりました。1stも2ndも約90分の演奏でしたが、時計を見ても信じられないくらいあっという間でした。楽しい時間があっという間に過ぎるのをウラシマ効果と言う、というお話を、例の話しっぷりで面白可笑しく説明していましたが、なんか違う気がする……。

ともあれ、ラップはツアーする気配の全くないJAZZDOMMUNISTERSの代替としても楽しめました(途中で噛んでましたが)し、まさかのゲスト参加、しかも音源で聴くだけでは余り伝わって来なかった青羊氏の艶やかで表現力豊かな歌声は1曲だけ聴くのが却って贅沢過ぎる素晴らしさでしたし、ラストの見事なスキャット含め、アコースティック・ジャズ・コンボで出来ることをこれでもかと詰め込んだような、濃密でスリリングな一夜でした。時計は23時を指し、写真とサイン責めに合う菊地氏を背中に感じつつ、駆け足で駅に向かいました。

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