赤犬 at ユニバース (Osaka)

この日はユニバースで行われた赤犬のワンマンライブ・新春 全日本赤犬歌謡祭に行って来ました。

全日本赤犬歌謡祭

赤犬を観るのは、十三ファンダンゴでの赤犬生誕祭以来なので約5年振り。その間に、和歌頭アキラが脱退し、しばらくの沈黙が続きました。後に新ボーカルとしてタカ・タカアキが加入、それまでの赤犬から大きく方向転換した、という風の噂を聞きつつなかなか観る機会が無いままだったので、一体どんなことになっているのか、多少の緊張を伴いつつ会場へ。

チケットを購入して階段を下り、受け付け越しにフロアの方へ目をやると、バンドステージ前に花道が出来ていて、そこにカラオケセットを置いてカラオケが行われている様子。しかもそこで“My Way”を歌っているのは、なんと“大王”後藤ひろひと。「谷六から来ました」と自己紹介していましたが、どうやら開演前に普通にお客さん参加のカラオケ大会が行われていたらしく、彼は本当にお客さんとして来ていたようです。その他、メンバーによる隠し芸大会(ヒデオ氏による偽香港スター・“ダニエル・ライ”のショルダーキーボードを使っての歌唱、ロビンによるタップシューズを履いて黒田節を舞う“タップ黒田節”)などもありましたが、僕が入ったのは開演20分前だったので、他にも色々出し物があったのかも知れません。カラオケの間、客席から見える天吊りのモニタにはちゃんと(というか普通に、というか)カラオケ用の映像が映ってました。

カラオケ大会が終わると、ダンスフロア下の客席に座っていたお客さんが次々とフロアに上がってステージをバックに記念撮影(大王もお客さんと一緒に沢山写真撮られてました。サービス精神旺盛だなぁ)しながら開演待ち。

メンバーがステージに上がると、演奏メンバーは全員赤のジャケット、コーラスの三人(ナイト・サパーズという名前が付いていました)は青のジャケット、そしてフロントマンのタカ・タカアキがラメの入ったジャケットで登場……と、過去の好き放題なコスチュームではないフォーマルなスタイル。

演奏は、そのグルーヴ感も音色もまぎれも無い赤犬らしいサウンドでしたが、曲はどれも昭和歌謡を再現したかのような懐メロテイストでした。歌詞も、「神戸」や「北浜」といった関西近郊の地名がちりばめられたご当地ソング風のものばかり。

タカアキ氏の歌は上ずり気味で決して褒められたものではなかったですが、それすらも込みで昔の歌謡ショーをリバイバルしているのではないかと思わせる徹底振りで、MCでは“タカ・タカアキ”というキャラクターを演じることに徹し、過去のロビン&ヒデオがコスプレしてコントをすると、アキラ氏が現実に引き戻す、というパターンではなく、全編に渡って“架空の歌謡ショー”から一歩も外に出ません。

たまに「新曲がラジオでオンエアされた」「久し振りに音源をリリースした」など本当のことを言いますが、他は「この曲は金星では教科書に載っている」など、荒唐無稽な嘘ばかり。「第六八回 全日本赤犬歌謡祭」というのもその典型ですが、こんな調子でふざけたことばかり言いながら古い歌謡曲をモチーフにした曲ばかり演奏しているので、ライブを観に来ているのか赤犬によるお芝居を観に来ているのか判然としなくなります。

中盤ではロビン&ヒデオのコーナーもありましたが、ここでもカクテルを飲みながら中曽根総理から来た祝電を読むなど、ほら話以外は口にしません(このカクテルの名前が“エージェント・オレンジ”で、ロビン氏が「エージェント・オレンジってベトナムで撒かれた枯れ葉剤の名前ですけど」と言った時のヒデオ氏の「そういうジャーマン・スラッシュの話は……」と返したのがツボでした)。

乳飲み子をおんぶした花売りの女性がチンピラに絡まれているところにタカアキ氏が現れ、チンピラ共をものの見事に蹴散らして「これがオイラの世直しだ」と見栄を切る小芝居のいなたさも、その後花笠を持って踊るナイト・サパーズもいかにもと言った感じで、笑うやら感心するやら。

チークタイムもあり、そこではナイト・サパーズの三人がステージに降りてお客さんと踊る一幕も。

アンコールではステージ後方からタカアキ氏が神輿に乗って登場し、サイン入りのカラーボールを投げていました。最後の曲、この日初売りされた復活赤犬最初の音源でもある“酔わせてよKOBE”の演奏中には、おヒネリが投げ込まれていましたが、仕込まれていたんでしょうか、それともお客さんが自主的に投げていたんでしょうか。

どのネタもお客さんから「待ってました」とばかりに歓声が上がっていたので、再始動後の彼らを観て来た人たちにはお馴染みの余興なのかも知れませんが、ユニバースのキャバレー空間にあまりにもピッタリとハマり過ぎていて、このハコのパーマネント・バンドにしか思えないほど。バンドの昭和感とユニバースの宿命的な時代性が寸分違わずマッチしていました。

活動休止前から赤犬には歌謡曲やアイドルソングの要素は沢山ありましたが、まさかここまでその部分を膨らませ、隙のないエンターテインメントとして構築してしまうとは思わず、元々評価も高かったバンドの演奏力の高さと、溢れんばかりのサービス精神が見事にひとつの表現に結実している様には、ただただ圧倒されるしかありませんでした。

しかも、インディペンデントなバンドに散見する“チープさ”を逃げ道にすることも無く、あらゆる点で“本物”のクオリティを追求(神輿が登場した際にヒデオ氏が着ていた「日本オリムピアレコード」の法被も本気度が伝わるクオリティでした)し、安っぽくみせないことで、さらにその徹底振りの可笑しさが際立っているのも見逃せないところ。ここまで真剣に、徹底的に、ちゃんと“ふざける”ことの出来るバンド、なかなか無いのでは。

ステージは1時間半で終了。帰りには、勿論新譜を購入して帰路につきました。

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