キツネの嫁入りpresents 第3回スキマアワー「学校で教わらなかった音楽」 at 元・立誠小学校 (Kyoto)

この日は元・立誠小学校で行われた第3回スキマアワーに行って来ました。

前回から約1年半振りで、今回もキツネの嫁入りはレコ発ということに。会場入りして早速新譜を購入しました。

この日の最初の出演者は、職員室でのかりきりん。「きりん」という戦後の児童詩集に載っていた、当時の子供が書いた詩に曲を付けて演奏する、というそのコンセプトだけで引き込まれるものがありましたが、その期待を軽く上回る素晴らしいパフォーマンスでした。

当時の子供たちによる、ほぼ手つかずの野性味溢れる言葉はストレートでイノセントでストレンジ。プリミティブな日本語の力強さと芳醇なエモーションが、変幻自在な編曲で命を吹き込まれ、溌剌と歌い踊ります。

どの曲も詩からインスピレーションを受けたアイデアや遊び心で溢れており、アレンジが絶妙な上に、演奏も詩/メロディをさらに色彩鮮やかに広げる表現力が備わっているので、ただ楽しいだけではない、創造的で新しい音楽としての個性と存在感がありました。

場所を移して、講堂での志人×スガダイロー。トリオ編成でのジャズピアノの演奏と、ポエトリーリーディングや民謡のメロディが入り交じったような朗々としたラップが絡み合い、互いに丁寧に手綱を引き合いながら、時に言葉はマシンガンのごとく放射され、バンドは曲が進むに連れて一定のモードから音をはみ出させ、フリーキーにフレーズを爆発させます。スガダイローのピアノはオルケスタ・リブレで観た時よりも、小編成な分、メンバー間の掛け合いに力点を置いているようで、ハイスキルな三人が顔を紅潮させながら汗を飛び散らせて破壊力あるフレーズを叩き出す様は圧巻で、あくまでも常温で言葉を繰り出す志人とのつかず離れずのポリリズムは、それをストレートに増幅するわけではなく、より多層的で複雑なサウンドに再構築しているかのようでした。

一瞬一瞬が聴き逃せない緊張感に包まれながら、演奏の始めと締めくくりには、ノイズ中村による、演奏とは全然違う意味でのハイテンションな司会で笑いをかっさらいながら、最後にはバンド演奏をバックにラップも披露し、ただ者じゃなさ全開で終了。

続いては職員室で吉田省念×植田良太×鈴木ちひろ。省念氏もMCで言ってましたが、この編成はもう完全に三日月スープ。とは言え、僕がちひろ氏を観たのは4年前のレコ発のみ、その前後は妊娠・出産で殆ど参加していなかったので、実はあまり馴染みのない編成でした。

西院フェスの時は新曲を前半に固めていましたが、この日は三日月スープ時代のレパートリーを前半に、そしてアップテンポの曲は控えて緩やかな演奏に終始していました。ちょうど日が陰り始め、うすオレンジ色の陽が差し込む職員室で聴くにはぴったりのムードで、なんだかぐっと胸に迫るものがありました。1曲、良太氏がリードボーカルを取っていましたが、これまたいい声。

あと、これは去年も同じようなことを書いたんですが、真横でカメラを構えてシャッターを切っている人がいて、相変わらず耳障りでした。

続いて講堂でキツネの嫁入り。“俯瞰せよ、月曜日”以外は新曲で固めたセットリストはいつもの攻めのスタイルでもあり販促でもあり、という感じでしょうか。前作からのブランクは短いですが、大半は昨年末には既にレパートリーに入っていたので既に耳馴染みのある感じでした。

彼らの演奏を講堂で観たのは初めてでしたが、この手のバンドサウンドは広くがらんどうな空間だと音がとっ散らかってしまうのか、もう少しタイトな音で聴きたいな、という感じ。あと、志人×スガダイローの時から、右スピーカーに時折ノイズが乗っていたのが気になりました。

すっかり日も暮れて、暗くなった職員室で片山尚志の弾き語りがスタート。片山ブレイカーズよりソロの弾き語りの方がいいな、と以前観た時から思ってましたが、この日は職員室のナチュラルなリバーブが彼の声を特によく引き立てていて、部屋の中でとても気持ち良く響いていました。

そしてトリは向井秀徳。この日はラストに志人×スガダイローとのセッションが控えていたので、中央に向井氏のセット、上手にドラムセット、下手にグランドピアノが配置されていましたが、向井氏は上手から登場し、自分のセットを通り過ぎてピアノの前に着席。ジャズっぽいフレーズや自分の曲、チャルメラのメロディなどを断片的に弾いて、サティの曲を弾こうとするも「ここか。違った。ここか。……駄目だ」と途中で諦め、演奏を開始。

1曲目からテレキャスターで聴き慣れたリフをかき鳴らし、Number Girlの“SENTIMENTAL GIRL’S VIOLENT JOKE”で始められてしまったので、こちらは吸い込まれるように気持ちを持って行かれてしまいました。その後も“鉄風、鋭くなって”、“Frustration in my blood”と久々に耳にする曲に鳥肌。

“SI・GE・KI”の前に「手拍子をお願いします。ただ私はポリリズムで演奏します」と言って途中で止めたり繰り返したりしてお客さんの手拍子のリズムを狂わせてバラバラになるのを楽しむようにして演奏。続く“Frustration in my blood”でコール&レスポンスをした後MCに入ると、「発声練習します」と言ってチャルメラのメロディに適当な歌詞を付けて歌い、お客さんにも歌わせて「ありがとうございます。潤いました」と言っていましたが、以前観た時よりもくつろいだ感じでお客さんと戯れている雰囲気がしてとてもいい感じ。講堂ステージ最初からの懸念であった右スピーカーの問題は向井氏の演奏中にも起こり、遂には完全にノイズのみとなり、PAを切った状態での演奏になってしまっていましたが、前段のお客さんとの絡みもあってか、お客さんからの自発的な手拍子で最後は大盛り上がり。ハプニングは特別な時間を生み出すことがありますが、これで前の二バンドでのトラブルもご破算と言ったところでしょうか。

アンコールで登場した向井氏はまたグランドピアノに向かい、サティの曲を試してみるもやっぱり上手く弾けず。後にスガダイロー・トリオが合流。向井氏が、サティを弾きたかったけど弾けなかったので弾いてくれ、とスガ氏に言うもやんわり断られるというくだりを経て、この日最後のセッション。途中から志人も合流し、この日のプログラムは終了。

それでも拍手は鳴り止まず、指で×をしながら登場した向井氏は、「もう時間も時間ですし……」と言いながらも最後に一曲だけ、と“守ってあげたい”を歌い、これで 第3回スキマアワーは本当に終了。

この日のイベントは志人×スガダイローを呼びたい、それならグランドピアノのある立誠小で……という思いからスタートしたということですが、イベントありきではない良さなのか、タイムテーブルに沢山のアクトを詰め込んだようなスケジュールではなく、ゆったりした進行でそれぞれ長めの持ち時間でじっくり観れる構成はとても観応えがあり、それに応えるようにどの出演者も申し分ない素晴らしいパフォーマンスを披露してくれていました。

いつも長丁場のイベントに行くと、「今日は中でもこの人が飛び抜けて最高だったな」というのがあるんですが、この日ばかりは甲乙付け難く、どのアクトもそれぞれ“最高”の演奏でしたね。

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