Goodbye ZOOBOMBS Festival at NANO (Kyoto)

この日はNANOで行われたズボンズのフェアウェルツアー京都公演「Goodbye ZOOBOMBS Festival」に行ってきました。

台風接近で天気が不安定な中、開演より20分ほど遅れて会場へ到着。

DAVID BOYSがセッティング中だったので、最初のバンドは見逃してしまった様子。ギター、キーボード、ドラムスによるなかなかいい感じのギターポップ、という演奏でしたが、まだお客さんも少なく、温まり切らないうちに終了。

手際の良いセットチェンジが行われ、間もなく演奏を始めたメシアと人人は、ギター/ボーカルとドラムスのデュオ。猛然とギターをかきむしりながら熱唱する姿はエネルギッシュで、しかも単なる力任せではない曲の良さがさらに魅力を引き立てていました。

最後の曲では、エキサイトした勢いで暴れたらギターのケーブルが抜けて音が出なくなったまま終わり、店長の「これじゃ締まらんからもう一曲やろう」との粋な計らいでもう一曲演奏。「この後のバンドは観なくていい」「音も出ないようなバンドなのでCD買わなくていい」とテンション上がりっぱなしで超ご機嫌なMCをかまし、途中ギターの弦が切れながらも、フロアの熱量を一気に上げてくれるような痛快なパフォーマンスで楽しませてくれました。

続いてのmy letterは、ギター/ボーカル、リードギター、ベース、ドラムスという編成のバンド。常温で刻む女性のリズム隊と、クリーントーンで重ねるツインギターのバランスがクールでクレバー。様々なバンドの影響を垣間見せつつ聴き手を引き込むクオリティもしっかり備わっていて、この日に観たバンドの中でも特に印象に残りました。

長丁場でこの後もまだまだ続くので、ここからはフロアの端の、少し高くなったところに腰掛けて鑑賞することに。ステージも近いのでよく見えます。次のnurmuttは、こちらもリズム隊が女性で、男性二人がギター/ボーカルという編成。フロント二人のがどちらも演奏力・歌唱力共に大変素晴らしく、垢抜けた楽曲の完成度もあって、かなり聴きごたえのあるバンドでした。ただ、リズム隊にもう少しパンチが欲しいと思わないでもなかったですが。

次の幕間では、西島衛がフロアで一曲弾き語り。ズボンズへのメッセージを語ったMCも含め、必然の一曲、という感じで密度の濃いパフォーマンスを披露していました。

続いてのシゼンカイノオキテは、ギター/ボーカルがラウドでハードコアなカッティングで攻めるのに対して、女性リズム隊があまり疾走しない軽やかさで楽しげに演奏しているというコントラストがなかなか面白く、カッコ可愛いというような感じ。ハードコア方向に音を先鋭化していくと画一的になってしまうところを、計算か天然か、絶妙な緩和で個性づけているという印象でした。

ここまでは、どのバンドも女性がリズム楽器を担当しているバンドが続いていましたが、サモナイタチは男性三人編成で、音も世界観もとても男性的。ここまで観てきたバンドの中では、メンバー全員の演奏が最もタイトで呼吸もぴったり、という理想的なトリオ・ロックバンドな音でしたが、その分他のアクトと比べると個性的な面白味に欠けていたように思えました。

雰囲気は一転して、女性ドラマーを擁するand Young…は、90年代の香りがするレイドバックしたテンポとグルーヴが心地良く、BPMが低い分、音の一つ一つに力が乗っていて、ユルさとストロングさが音楽的に共存/共鳴していました。このバンド、多分過去に一度観たことがあると思うんですが、全く記憶に残っていませんでした。

トリ前は、片山尚志による弾き語り。and Young…がMCで「ズボンズ前に盛り上げるのは片山君に任せます」と言っていましたが、当の片山氏は、ノリのいい曲はズボンズに任せる、と終始メロウな演奏に徹していました。

そして、20時半頃。いよいよズボンズの登場。これまで観てきたズボンズの思いを胸に秘めたお客さんたちの前で、まずドン・マツオは静かに、そして笑顔でズボンズの終了宣言を行い、演奏のイントロダクションとしました。

いつものようにドン氏の指示で、バンドは初っ端からフル・スロットルでスタート。フロアも冒頭から叩き付けてくる強烈なファンクビートに対応して大きく揺れます。

1分1秒を惜しむように、息つく暇もなく、感傷に浸る間もなく(最前列で数分後には涙を吹いている女性もいましたが)、ズボンズ・グルーヴが約1時間半に渡るセットの中に限界ギリギリまでびっしりと詰め込まれ、うねりながら、揺れながら、そして爆発しながら一気に走り抜け、本編はあっという間に終了。スポンテニアスなスタイルで音を積み上げるような演奏よりも楽曲主体で繋いでいくような感じだったので、ヒストリカルなパフォーマンスを意識していたのかも知れません。その分、ドロドロとマグマが煮えたぎるようなコッテリとした音ではなく、どことなくカラッとした印象がありました。

アンコール前に、ドン氏はかなり長い時間を使って、お客さんに語りかけました。それは、ムーストップ(ドン氏は「リョウちゃん」と呼んでいました)とピットが、音楽の道を離れ、別の仕事を生活基盤とする事への明確な「No」という意思表示で(ドン氏は終始笑顔で、聞いている二人も笑ってはいましたが、彼が「この二人は最悪の選択をしたと思っている」と、はっきり、ズボンズを観に来ているお客さんの前で言っていることに、単なるバンドからのメンバー脱退劇に留まらない、何か戦慄するようなものを感じずにはいられませんでした)、それは彼がズボンズなき後も音楽を続けることの強いステートメントでもありました。

アンコールではNANO店長もサックスを持ってステージに現れ、大熱狂の渦の中、京都最後のステージに幕を下ろしました。

14時スタートで22時終了という長丁場だったんですが、小さなハコにも関わらず、会場内の雰囲気、転換中のBGM共に、長さ、息苦しさを感じさせない居心地の良さがありました。何より、出演バンドのパフォーマンスが素晴らしく、殆ど初見のバンドばかりだったにもかかわらず、最後までものすごい濃度で楽しむことができました。

ズボンズは今年20周年だったということですが、僕が最初に観たのは今から10年前。それまでの間、何度か彼らの最高のライブを体験してきましたが、この日ほどお客さんが沢山入っていたことはありませんでした。あまりに過小評価されてきた彼らが、もし正当な評価を受けていれば……というたられば話は不毛ですが、それにしても、彼らが絶え間ない努力と尋常ならざる鍛錬で築き上げたズボンズという不世出のサウンドが、その独自性と抜きん出た魅力を十分に評価されないままこの世を去ってしまうのはあまりに残念です。世の音楽ビジネスはソフトからライブに移行している、などとよく言われますが、その裏で、これほどライブ・オリエンテッドな(悪く言えば、音源では魅力が発揮しきれなかった)バンドを失い続けているのかと思うと寒気すらします。

ドン氏がアンコール前のMCで、行きたいと思っていたライブに、高いチケット代やその日の体調を理由に行かなくて、それを後で後悔するというライブフリークにはありがちな話を例えに、自分が大事だと思うことを、逃さないようにしなくちゃいけない。何もしないでいれば逃げていく。だから努力しなくちゃいけない。それは何もしない方が、生活していくだけのことを考えればとても楽なことだろうけど、失った時にはもう取り戻せなくなるかもしれない、と語っていました。身につまされる思いがしながら、彼が、もう二度と取り戻せないという覚悟の上でズボンズ終了の決心をしたのだということが改めて伝わってきました。

ズボンズがどれだけ希有なバンドかは、ドン氏が最も理解していたのだと思います。だからこそ彼はメンバーの脱退に憤り、絶望したのでしょうが、一方で、僕はズボンズというバンドを維持してきた体制が、今の世の中で稼働し続けるには限界に達していたのだろうという気がしました。それほど過剰な負荷があってこそ実現できた、ある種異常な音楽だったからこそ凄まじい魅力がほとばしっていたのでしょうが、普通であれば数年で焼き切れてしまうような熱量で燃え続けていたものを、20年も続けて来れたことの方が奇跡だったのかも知れません。

先に、「どことなくカラッとした印象」と書きましたが、この日のパフォーマンスは何か憑き物が落ちたような、もしくは魔法が解けてしまったかのような雰囲気が漂っていて、過去のライブにあった得体の知れなさや狂気が薄まり、ズボンズが終わりを迎えようとしていることを改めて感じざるを得ませんでした。

ズボンズに、同時代に生き、その現場を共有できたことへの心からの感謝を。そしてお別れを捧げます。

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