KIKI BAND at Vi-code (Osaka)

この日は中津Vi-codeKIKI BANDを観に行ってきました。

開場から30分ほど過ぎた頃に会場入りすると、テーブルと椅子が大ざっぱに並べられた客席は、高めの年齢層の人たちでそこそこ埋まっていました。

オープニング・アクトはDjamra。以前観た時に「1年か2年に一度観られればいいかな」と書いていたら正に2年ぶりで、その間にトランペット奏者トが加入してギタリストが脱退していました。しかし2年前に思った通りというか、編成は変われどサウンドは彼らへの期待通りのハイテンションで複雑怪奇な演奏。ギターからトランペットに変わった分、若干ジャズ寄りになった気がしないでもないですが。ともあれ1時間のセットはしっかり聴き応えもあり楽しかったです。

短いセットチェンジを挟んでKIKI BANDの登場。「祝・ザッパナーレ出演」(ザッパナーレはドイツで開催されているザッパのコピーバンドなどが出演するフェス。ボビー・マーティンなどザッパバンド出身のメンバーも出演しているようですが、ザッパと明確に接点がなくても良いようで、昨年はMAGMAが出演していたようです)というツアーの叩き文句に釣られて観に来ただけのようなものなので当然この日が初見だったんですが、1曲目の立ち上がりからザッパ版“Whippin’ Post”を彷彿とさせる前のめりなロックチューンで、猛然と弾きまくる火を噴くようなソロの応酬に息を飲みます。

ギター/ベース/サックスとソロを回すところなどは実にジャズ/フュージョン的なんですが、アグレッシブな曲調も直球ど真ん中で早弾きしまくるソロもロックそのもの。特に鬼怒無月の弾くメタリックで流麗なソロのなんとかっこ良いことか。長尺ながらも間を取ったりリズムを外したりトリッキーな技で誤摩化さず、とにかく高速で弾いて弾いて弾きまくっているのにフレーズが尽きないという恐ろしさ。ここまで痛快なギターソロは、これまで聴いたことがないかも知れません。

さらに早川岳晴もアクセル踏みっぱなしのようなソロを炸裂させ、梅津和時も60過ぎとは思えない高速ブロウで手加減無しのストレートパンチ。ひねりも小細工も一切振り払うようなスピード感は、20代前後の多感な時期にHR/HMばかり聴いて育った身としては堪えられないものがあります。

今やロック/ジャズというジャンルとしての括りはほぼ融解して境界線が曖昧になってはいますが、ロックからのジャズまたはジャズからのロックへのアプローチはファンキーになりがちな中、このバンドにはそういった黒さはほとんどなく、主に縦ノリで疾走する痛快さがあります。

全員主役のこのバンドでよりロック的なカラーが出ていたのはドラムスのジョー・トランプ。聞けばジェイル大橋こと大橋隆志のバンドに参加しているなどロック・バンドのバックグラウンドもある様子。それを言えばメンバー全員ロック畑と接点があるんですが、ラウド・ロックのドラマーかというような、大岩がゴンゴン言いながら転がってくるようなパワフルでダイナミックな音(そしてスティックをガッチリ握ってボカスカ叩く様)はこのバンドの方向性をリードしているように思いました。

ハードなファストチューンもロック魂漲るギターリフ曲もありつつ、ただストレートパンチを繰り出すだけのバンドなわけでは勿論なく、変拍子もあればアバンギャルドなアプローチも4ビートも自由自在。この辺りは、メンバー全員が作曲できるという強みを活かし、それぞれのカラーで曲調に変化が出てくるのも面白いところ。

何でも弾ける/叩ける熟練者がロックを奏でるとどれだけ凄まじい演奏が出来るのかを証明したような、正にマイルス・デヴィスの名作「A Tribute to Jack Johnson」の宣伝文句“お望みなら世界最高のロックバンドを作ってやろうか”を地で行くような楽団とでも言いましょうか。それが借り物でやってるような「ロック紛い」ではなく、単なるロック少年上がりでは到達できないようなK点越えしっぱなしの振り切ったパフォーマンスでオリジナルなサウンドを構築してしまっているところに猛烈な破壊力があります。

梅津氏のとぼけたMCとオーバーオールを着たルックスに肩の力が抜けますが、逆にそれがなければハードコア過ぎるかもしれない、というほどのハイテンションな曲が次々と繰り出されるステージ。冒頭の曲を除いて全て新曲ということでしたが、そんな攻撃的なスタンスにも好感が持てます。

アンコールでは、“早春”という、福島をイメージした雄大なバラードを演奏して締めくくり。彼らの懐の深さを見せるような美しい曲でした。

終演後は「ここから撮影フリーです」ということで撮影会に。いやーほんといいバンドですねえ。

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