CRJ-west presents 風穴 vol.13 at UrBANGUILD(Kyoto)

この日はUrBANGUILDで行われたイベント「CRJ-west presents 風穴 vol.13」に行って来ました。

最初のアクトは寺内将明。朗らかな表情でのびのびと歌いながらも叙情を感じさせる声が魅力的で、何気ない日常を歌っても味わいがあるし、いわゆるフォークソングを思わせるオーソドックスな言葉を並べてもノスタルジックに響かないフレッシュさも持っていて好印象でした。

続いてのユーカリ心中は、女性三人によるロックバンド。曲も歌声も結構良い感じのポップなギターロックという感じなんですが、演奏技術が追いついていなくて、ドラムスは転調やフィルインの度にテンポがヨレるし、ベースは音の選び方が若干調子外れで今ひとつ締まらない。ただ、「結構良い感じのポップなギターロック」が、言わばありふれてる感じもするので、技術を向上させて補うよりも、「かわいいこんなの子たちがいなたい演奏をするポップなギターロック」とした方が面白いような気もしますが。

続いての夢見てるは、それこそありふれた感じのするギターロックバンド。けだるい感じのボーカルスタイルも力強い演奏も好感は持てますが、当たり障りが無くて物足りない感じでした。

最後の表現(Hyogen)は、このメンツの中では完全にカラーが違っていましたが、キャリア的にも技術的にも音楽的にも、他のメンツとは頭ひとつふたつは余裕で飛び抜けた素晴らしい演奏でした(比べるのもどうかとは思いますが、こうやってひとつのイベントで括って並べられてしまうと、普通比較してしまうのでは)。

アコーディオン、ヴァイオリン、クラシックギター、コントラバスという編成で奏でられる音楽は、どこかの国のトラディショナルのようでもありつつ、単純に異国の土着の音楽を引用した“異国のフォークを演奏するバンド”というようなものとは違っていました。

メンバーのアンテナに引っかかった様々な音楽が複雑に編み上げられたような、ある種まだらな色彩が感じられる曲たちは、楽器の組み合わせから起こる“宿命的な郷土感”からは逆に一定の距離を取り、その距離の間であらゆる音を探り、彼らのフィルタを通した時に残った音を、じっくりと絶妙なバランスで積み上げていったという印象です。

楽器、声、全てが芳醇な響きを漂わせ、それらが互いに繊細なやり取りをしながらひとつの楽曲が奏でられる様は、アップテンポの曲もゆったりした曲も終始高いテンションを保っており、聴き手を強く引き込む集中力とエネルギーに、僕も思わず前のめりになって音に耳を傾けていました。

それにしてもこの「表現」というバンド名。彼らが楽器を使って行っているそれを指す言葉として、これほど何度も脳裏をよぎる言葉も無いでしょう。それは単なる音楽であることに留まらない、音を通して脳内に新たな“何か”を生み出すような、とてもリアルで刺激的なひとつの体験のように思えました。

せっかくだったら、もっと彼らにふさわしいバンドとの対バンで観てみたかったなぁ、と少し思いました。

Hyogen
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